【幕間】繭の中の眠り姫

軋む扉を開けた向こう側は純白の布が張り巡らされていた。

幾重にも重なる白はまるで蛹の様。

布を避け辿り着いた病室の中央にはベッドが一つ置かれていた。

その上に少女が一人横たわっている。

緩くウェーブのかかった長い髪が白いシーツの上に散る。

少女はどこもかしこも白かった。髪の毛も、睫毛も、細い四肢も全て。

唯一少女が身に纏う黒いドレスだけが、白い部屋に落ちる影の様に鋭い輪郭を保っていた。


「お姫様今日も寝てるね」

「だって眠り姫だもの」

「それもそうか」

「眠り姫が起きちゃったら、全部終わっちゃうよ」


幼さの残る声色で少年達の会話が空白に響く。

会話を一言二言繰り返した後少年達は小さな足音と共に去って行った。

少女の胸元には少年達の置いて行った深い靑色の薔薇が夜露を纏い咲いていた。


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