岡山事変 〜最強の戦士〜

阿修羅刹

第1話 岡山大学の死

 俺の名前は桃太郎! 誰もが認める世界一大学、岡山大学の一回生だ!


 だが、入学から一ヶ月経った今でも、友達があまりいない…


 いまいち冴えない俺だが、こんな俺にも夢がある!


 それはここ岡山大学の法学部で法学を学び、岡山最高裁の裁判長になることだ!


 岡山大学は偏差値100越えの超名門!入学=勝ち確の誰もが認めるエリート大学!

 法曹界で結果を残すやつは全員岡山大学卒! 裁判長になるのも現実的なのだ。


 そうして今日も俺は授業を受けに行くのだが……


「おーい桃太郎!一緒に行こうぜ!」


「おう!」


 こいつの名前は犬助。高校からの友達で、工学部生。とてもいい奴なんだが、インキャな

 のだ。こいつの将来を思うと少し心配だな……


 まあでも、今に始まったことじゃないし大丈夫だろう。


 それにしても、今日の朝は寒いな……早く教室に入って暖まりたいものだ……


「そういえば、お前雉子に告ったってマジ?」


「マジ。」


「どうだった!?」


「ダメだったぜ…自信あったんだが」


「うわぁ……」


 ああクソ!嫌なこと思い出させやがって!


 そうだ、俺には好きな人がいる。そいつは雉子。


 雉子はめっちゃ可愛い。スタイルもいいし、性格も良い。まさに完璧美少女。橋本環奈の20倍かわいいことが岡山大学の研究で明らかになった。しかも、岡山大学の医学部生!入っただけで7代先まで遊んで暮らせるほどの富と名誉が手に入るらしい。


 そんな彼女も、俺なら必ず手に入ると思ってたのに…


 ………


 二日前


「お願いします!付き合って!」


「ごめんなさい……」


「なんで!?理由を教えてよ!」


「私彼氏いるんです……本当にすいません……」


「嘘つかないでくれよ!!君みたいな完璧な女の子に彼氏が居るわけないじゃないか!!」


「俺と結婚しろ!!!!!!!!!!!」


「イヤー!しつこい!」


 全力で婚約を懇願する俺に、強烈なビンタが炸裂する。


「ぐああああ!」


 雉子が世界最大の武道団体、『アブソリュート岡山』の団員であることを忘れていた。超音速のビンタが炸裂し、衝撃で服が吹き飛ぶ。


「キャー!裸!」


「うっ…」


 まずい、このままではフラれてしまう!そう思って俺は渾身の一言を言う。


「俺の子を産めッ!!!」


 俺は全裸のまま雉子に迫る。


「キャー!変態!」


 雉子の正拳突きが腹筋を直撃する!


「ギャー!」


 ………


「…てな感じでフラれちまった。自慢の腹筋がシックスパックからトゥエルブパックになっちまったよ」


「プフゥww」


 犬助は笑っている。この野郎。


「笑うんじゃねえよ!俺にとっては死活問題なんだぞ!」


「悪い悪い」


「もういい。一人で行く」


「待ってくれよ〜」


 こうして俺たちは教室に入る。


 すると、一人の男がこちらに向かってきた。


「よお、偽物」


「あ?なんのことだ?」


 いきなり失礼な男だな。初対面なのに。


「シラを切るな、偽物」


「意味わかんねえよ!」


 なんだこいつ、いきなり俺のことを偽物呼ばわりだと?


「桃太郎は俺だ、山梨県の俺だ!」


 はあ? 何言ってんだこいつ。頭おかしいのか?


「おいおい、何を言ってるんだ?俺は岡山出身の桃太郎。日本中の誰もが認める日本一のイケメン。それが俺だ」


「ふざけんな!お前はうんこ臭え岡山県民だろうが!本物の桃太郎は山梨県民の俺だ!」

「そもそも、桃太郎発祥の地は山梨なんだよ!!!」


 なにを言ってんだこいつは? 桃太郎発祥の地は岡山だぞ? そんな当たり前のこともわからないのか?


「とにかく、俺は偽物が嫌いだ。これ以上桃太郎を自称するなら、消えてもらう!」


 男は懐から拳銃を取り出し、俺に向けて発砲した!


「うおっ!?危ねェ!!」


 間一髪避けたが、銃弾が壁にめり込んでいる。なんて威力だ……


「俺はまず岡山大学でテロを起こす!覚悟しとけ!」


「くそっ!逃すか!」


 俺は奴を追いかけようとするが……


「お前らどけどけ!邪魔すんな!」 


「きゃああああ!!」


「なんだ!?」


 突然、廊下にいた生徒が悲鳴を上げる。


「うわああああ!!!」


「ゃまなっしい゛い゛い゛!!!」


 ババババババ!


 狂ったように叫びながら、50口径マシンガンを連射する男がいる! あいつはここの教授だ! 奴の頭をよく見ると、頭に桃がめり込んでいる。山梨産の桃だ!


「やばい!逃げろ!」


「うわああ!」


「きゃああ!」


 ドガガガガッ! 銃声とともに、壁がどんどん破壊されていく。


「オラァ!死ねぇぇ!!」


「くそが死ね!」


 俺は思い切り教授の後頭部を蹴り飛ばす。教授は眼球が飛び出して死んだ。


「ふう、これでひと段落か!?」


「いや!自称桃太郎が残ってる!」


「そうだな!あいつを捕まえれば……」 


 その時だった。


「そこまでです。お二人とも。」


 凛とした声で、俺たちに呼びかけたのは……


「雉子……?」


 そこにいたのは、紛れもない、俺の好きな人。だが、様子がおかしい。いつもと違う! いつもよりかわいいなぁ!


「私があいつの相手をする!」


 こいつぁ心強い! 雉子は最強の格闘家だぜ!


 雉子は時計台の上で高笑いする自称桃太郎を…


 どぐお!


「ぐっ!?」


 思い切り蹴り倒す! そしてそのまま時計台から落下していく自称桃太郎を追いかける。


「ふっ、岡山の女はどいつもこいつも下品だ!」


「いいえ、私は上品よ!」


「ほざけぇ!」


 山梨のクソガキは自身の周りに大量の果物を漂わせる。


「どうだ!こいつ一つ一つが対戦車ミサイル並みの威力の爆弾になるんだ!」 


「へーすごいですねー」


 雉子が余裕の表情を浮かべている。確かに凄い能力だ。


「じゃあこれならどうかしら?」


 そう言うと、雉子の身体に光がまとう。そして……


「温羅じゃ 温羅じゃ 温羅じゃ!」


 あれは、うらじゃ踊り!?


 うらじゃ踊りは、岡山に古来から伝わる伝説の舞! 不思議な力が宿るという。


「燃やせ 叩け 熱いうちに!」


「飲めや 踊れや 夜更けまで !」 


 雉子はどんどんスピードを増し、ついには超音速で舞う。


 そして…


「うらじゃあああああああああああ」


 雉子は高速で自称桃太郎に突撃する!


「なにィ!?」


「とりゃああああ」


 自称桃太郎は吹っ飛ばされて、地面に激突する!


「ぐあっ!!」


「桃太郎さん、あなたの負けよ。おとなしくお縄につきなさい」


「ふん、誰が偽物に屈するか!」


 そういうと、やつは自分の頭に桃を突き刺す!


「みなごろっしいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」


「きゃああああああ!!!!!」


 雉子は高速攻撃になすすべもなく倒れる。


「岡山の女は扇情的なっしいいいいいいいい!!!!!」


「俺の子を産むなっしいいいいいいいいいい!!!!!!!!」


「いやあああああああああああ!!!!!」


「やめろ!」


 俺は雉子を庇う。


「俺が相手だ!」


「にせものころすなっしいいいいいいいいいいいい!!!!!」


「ほざけ!!!!!」


 俺と山梨野郎は激しい空中戦を繰り広げる。そのスピードは音速を軽く超えた。


「うおおおお!!」


「どりゃああああ!!」 


「桃太郎!お前の時代は終わった!」


「うるせええええ!!」


 だが!山梨桃太郎の力は強大だ!


「しねしねしねしねしねしねし」


 どぐぉおん!


「ぐぁ!」


 俺は殴り負け、地に落ちる。


「うおおおおおおお!!」


 だが俺は、再び立ち上がり、あるところへ向かう!


「にげるなっしかおわないなっし!」


「その代わり雉子は俺の嫁なっしいいいい!!!!!」


「きゃあああああああ!!!」


「ん?かえってきたなっしか…」


「……!?」


 俺は山梨野郎の前に再び現れる。

「こいつが何かわかるかああああああああああ!?!?!?!?!?」


「そっそれは!」


「山梨大学の図書館!?!?!」


「しいいいいいいいいねええええええええええ!!!!!!!!!!」


 俺は山梨大学の図書館を思い切り叩きつける。


「ぎいいいいいいいやあああああああ」


 山梨大学図書館は周りの山に深々と突き刺さった。


「ぐ…あ」


「まだ息があるか! だがもう長くないな!?」


「貴様ら…道連れだ!」


「なに!?」


 山梨桃太郎は岡山大学津島キャンパスの中心部に向かう。まさか、自爆する気か!?


「学びを失う悲しみを…………貴様らも思い知れええええええええええ!!!!!!」


 ばーん。


「お、岡山大学ううううううううううう!!!!!」


 岡山大学津島キャンパスは壊滅した。中には職員や学生の無惨な死体が散乱していた。


「ひ、ひどい」


 雉子が顔を青くする。


「こんなことって…」


 犬助が絶望する。


「そんな、俺の夢があああああああ!!!!」


 俺の夢は、儚く潰えた。俺の人生は、どうなってしまうのだろう。


 俺はカフカの言葉を思い出した。


「生きることは、たえずわき道にそれていくことだ。本当はどこに向かうはずだったのか、振り返ってみることさえ許されない。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る