第24話 あれやこれやとイケナイことをしていたのではないか……!?
走る鈴音の肩を掴んで声を掛ける。
「ちょっと待てって! いったい急にどうしたんだよ!?」
走る鈴音を半ば強引に止めて振り向かせると、鈴音は思いっきり泣いていた……!
「な、なんで泣いてるんだ!?」
しかし鈴音は、顔を背けるばかりで答えない。
駅前まで来ていたので、周囲にはけっこうな往来もある。これじゃあ、高校生カップルが痴話喧嘩しているようにしか見えないだろう……いや実際に痴話喧嘩なのか……?
とにもかくにも、オレは恥ずかしさを感じて鈴音の手を引っ張った。
「と、とりあえず公園に入ろう……!」
そしてオレたちは公園へと入る。
石畳の公園はそこそこの広さがあり、子供達の遊び場というよりは、街のちょっとしたアートスポットという感じだった。だからそこまで騒がしいわけでもなく、オレたちは公園の隅っこで人目を避けることが出来た。
「鈴音、どうしたんだ? いきなり走り出すわ、泣き出すわで……」
すると鈴音は、オレから顔を背けながらも言ってくる。
「別に、なんでもない……放っておいて……」
「急に逃げ出されたら、放っておけるわけないだろ?」
「いいから放っておいてよ……!」
押し問答になりそうだったので、ひとまずオレから話を切り出すことにした。
「なぁ……もしかして、マンション前で会った女の子を気にしているのか?」
「………………」
鈴音は視線を逸らしたまま何も言ってこないが、むしろ無言の圧力を感じる。
当然、鈴音には説明しなければならないわけだが……
しかしだからといって「鈴音のクローンを作りました」などとは口が裂けても言えない。
そもそもの超能力を信じてもらえない問題もあるが、そこは、クローン生成を実演すれば信じざるを得なくなるだろう。
だから、真の問題はその後だ。
クローン生成などというトンデモ能力で、オレがしでかしたこと──つまり、鈴音のクローンを作ってしまったこと自体が大問題なのだ!
開き直って「ごめんなさい。ほんの出来心だったんです」と言ったとする。っていうか、まだクローン生成がどれほどの重大事かもよく分かっていないときに作ってしまったわけだから、出来心だったのは事実なわけで……
仮に出来心を鈴音が信じてくれたとして、では、生成したクロスズで、いったいオレが何をしていたのか?
その疑念はずっと残る。
これまた事実を話すならば、オレは一切何もしていないわけで……
しかし鈴音が、それをも信じてくれるとはさすがに思えない。
ってかもはや、超能力を信じさせるよりも難しい!
つまり……平たくいうと……
鈴音のクローンをオレが作り、しかもそのコは絶対服従の遺伝子を組み込まれ、そしてこれまで、あれやこれやとイケナイことをしていたのではないか……?
高校生にあるまじき不純異性交遊的な何かを……!?
これまで断じてそんなことしていないのに、その疑念だけはずっと持たれてしまうのだよ鈴音には! 超能力をバラしてしまったならば!!
……………………いやまぁ……
今日このあと、そのあれやこれやとイケナイことをしでかそうとしていた身としては、卵が先か鶏が先かの話で、すでに弁明の余地がないのかもしれないが……
だがしかし!
法律法令的には、まったくもってオレは潔白なのである! 今の時点では!!
マンションで、まだふたりっっっきりにもなっていないというのに!!
なぜ責められるというのか!?
……………………などと……
泣き顔の鈴音をほったらかしでそんなことを考えていたら、鈴音がぽつりと言ってきた。
「……それで? ……あの女の子は、誰なの?」
「………………え?」
鈴音の問いかけにどこか違和感を覚えるも、しかしオレは明確な答えを言えなかった。
超能力やクローンの説明を抜きにして、それでいて、鈴音と瓜二つである美少女の説明なんて、いったい誰が出来るというのか……!?
「いや実は……あの子は鈴音と生き別れた双子の妹デス」などと言えと!? オレの罪を鈴音の両親に押しつけてしまえと!?
まぁ……すぐバレるわな。
オレが答えあぐねていると、鈴音はさらに言ってきた。
「……病院で、知り合ったの?」
「………………ん?」
鈴音の問いかけに、オレはさらなる違和感を覚えるも、その理由が分からない。
だからオレは、とりあえず話を合わせることにした。
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