第22話 そうして、淳一郎が向かうその先には──

 鈴音わたしは、どうにも様子がおかしい淳一郎を放っておけなくて、下校する彼のあとを付けていた。


 ちょっと後ろめたさもあるけれど……でも万が一にでも、淳一郎が後遺症で倒れてもまずいし……


 うん、そう……これは淳一郎の体調を気遣ってのことであって、それ以上でも以下でもないんだから!


 だから淳一郎が、友達と合流したならわたしはすぐに退散すればいいだけの話で……


 自分にそう言い聞かせながら淳一郎を尾行していると、なぜか、淳一郎は電車に乗り、隣町で降りる。


 ……中学校の友達と会うために、どうしてわざわざ隣町に? 隣町に進学した友達と会うってことなの?


 しかし淳一郎は、隣町の商業地区からも遠ざかっていく。いつの間にか清閑な住宅街を歩くようになって……大きなマンションにさしかかると、手を振りながら小走りになる。


 そうして、淳一郎が向かうその先には──


「──え?」


 わたしは、尾行していることも忘れて、しばらくはその場に立ちすくむしかなかったけれど……


 淳一郎が彼女の手を取って、マンションの中に消えようとしたから。


 わたしは思わず声を上げていた。


「ちょ、ちょっと! これって一体どういうこと!?」

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