わたしはチャムケア! -光の少女戦士伝説的なやつ希望-
虎竜王NV
序章:のこちゃん
01 のこちゃんの日曜日
チャムケアの朝は早い。
『チャムケア』とは、悪と戦う正義のヒーローをコンセプトに、どこにでもいそうな中学二年生くらいの少女を主人公に
フリフリでヒラヒラな
登場人物たちの成長を
放送開始時間の午前8時30分は、通学や
特に予定のないお休みの日、
まだ、ゆっくり寝ていても良い。
そんな
この春、そんなチャムケアシリーズの主人公たちと同じ、中学校二年生になった のこちゃん も毎週日曜日の早朝をものともしない
フルネームは
まぁ、運動が
のこちゃんは、身長155㎝くらいの体格も細からず太からずである。
その
色々と
そもそも、本人がこれで良いと言っているのだから、放っておいてくれとのこちゃんは思う。
現在の所、これまで名前でいじめられた事は無いし、友だちともうまくやれている。
ただ、残念ながらと言うか自然な流れでと言うか、中学校二年生ともなれば友だちを
しかし、のこちゃんには、不安も
要するに、その
そんな訳で、日曜日の朝、午前8時にセットした目覚まし時計の力を借りて布団から抜け出したのこちゃんは、今日も
のこちゃんの部屋は、
家具は、小さな
5月の連休を目前に
家自体がかなり
一応、エアコンは付けてもらったのだが、暖房を入れると
仕方なく、自分の体温で
肩へかかるくらいの短めなその黒い髪が
季節的に来週か再来週くらいにはもっと気温も上がるだろうと思いつつ鼻の辺りまでスッポリ毛布にくるまりながら、のこちゃんの目は、テレビ画面にしっかりと
例え毛布でぬくぬくしていようとも、チャムケア
そのテレビの中では、チャムケアシリーズを放送する直前のニュースワイド番組が、休日の
多くの車両を巻き込んだ交通事故をはじめ、
「最近、多いよねぇ……」
誰に言うでもなく、のこちゃんは、寝起きのかすれた声でポツリとつぶやいた。
現実を生きていると、
その内容は、人それぞれであり
のこちゃんの場合、両親が
小学校へ上がる
だから、チャムケアシリーズの様なアニメ作品に
時にフィクションやファンタジーといった
その事を、他でもないチャムケアが教えてくれたのだ。
だから、のこちゃんは、チャムケアが好きなのである。
――――――――――――――――
チャムケアを見終わった後は、『チャムケアシリーズ』以上に長い歴史を
実は、チャムケアに出会う前、
特におすすめされた『
日曜日の午後は、
その前に、家のお手伝いをしたり、朝食をとるべくキッチンへと
「おはよう、おばあちゃん」
「おはよう、のこちゃん」
キッチンでは、
雨戸が開けられたアルミサッシの窓からは、春のもんよりとした
チャムケア
キッチンと
平日だと学校にいるこの時間帯はテレビをつけてもよく見えないのだろうなと、ぼんやりのこちゃんは思う。
視線をキッチンへ戻すと、自分が引き取られてきた頃より
祖母はやせ形で、背の高さも今ののこちゃんとさほど変わらない。
のこちゃんが初めてこの家に来た時から、少し
「手伝うよ」
「ありがとう、じゃあ、お皿を出してくれる?」
「うん」
どこにでもありそうな家庭の、何でもない、朝の風景である。
母の実家である
幼いのこちゃんが家族に
特にのこちゃんが きょう姉さん と呼んで
もちろん、
幸か不幸か、ヒーロー作品
まさしく運命だったに違いないと、お皿を
ちなみに、のこちゃんの部屋にある液晶テレビと録画機は、きょう姉さんのお下がりである。
それまで何を視聴するにしてもきょう姉さんの部屋で一緒にだったのだが、チャムケアと"運命の出会い"をした際に自分専用の物が欲しいと相談したところ、
あの時は、本当に
おかげで、のこちゃんが初めて第1話からリアルタイム
「……これが天国か」
何度でも
もちろん、大切な録画データのバックアップは
キッチンと居間には、まだ祖父ときょう姉さんの姿は無い。
祖父はお休みの日だと寝坊しがちであるのだが、きょう姉さんの場合、現在も自室のテレビの前にいると
のこちゃんにとってのチャムケアが、きょう姉さんにとっての特撮ヒーローなのだ。
とは言え、じきに祖父ときょう姉さんもキッチンに来るだろう。
食事を済ませたら、のこちゃんは出かける準備もしなくてはならない。
その事を二人とも知っているからだ。
「のこちゃん、先に食べる?」
「待つよ」
「そう?」
キッチンにあるダイニングテーブルへ4人分の食器を
そう言えば、番組内で告知されていた
ちゃんと朝早く起きる日曜日には、そんな事を考えられるくらいの
――――――――――――――――
剣道教室は、公営の体育館ではなく、公民館にある広い一室を
道場は、建物の1階で窓も大きく、
道場といっても、普段はダンス教室やら
集合時間より少し早いとあり、教室に参加するメンバーものこちゃんを
「今日のチャムケア見た?」
「見てねぇっつってんだろ」
のこちゃんがしれっと始めた話題にハイハイソウデスネといった
残念ながら、チャムケア
毎週、剣道教室に来る
それは歯に
背の高さはのこちゃんよりも大きく、本人の運動好きも手伝って、のこちゃんが知る限り特に運動部関係の友だちが多い
整った顔立ちと生来のやや
これが
同じ剣道教室に通っていると言っても、さほど運動が得意でもないのこちゃんと
と、主にのこちゃんが思っている。
「あたしが見てたのは"バシバシ!チャムケア"くらいの
ああ、いや、"スマッシュチャムケア"だったかを別のチャンネルで、同じ頃に見たかな?」
「『スマッシュチャムケア!』良いよね。
「あー、うるさいうるさい」
そうなってくれれば劇場版チャムケアシリーズにも
チャムケアは絶対にくじけないのだ。
「そう言えば、のこは、
友だちの
「きょう姉さんは、さっき仕事先から電話がかかってきて、そっちに行ったよ。何か用事を
「あー、
きょう姉さんは、学生時代に取った
聞いた話では、大学の部活で参加した、一般も
のこちゃんを剣道教室へ
きょう姉さんは、のこちゃんにとって剣道教室のコーチでもあるのだが、
事実、きょう姉さんとかかり
確かに、全身を防具で包む剣道の競技スタイルは、変身した気持ちになるのかも知れない。
そんなきょう姉さんであるから、教室に通う他の子供達には何のマネか通じていないながら、ヒーローっぽくてカッコイイと
「あ、
「おう」
剣道教室の先生が
ロッカーは二人で一つずつ使えるきまりになっており、当然のこちゃんと
着替えた服と
チャムケアシリーズ2作目『チャムケア!マーベラス・ハウル』は、1作目の純粋な続編であり、新たに加わったパートナーと二人でチャムケアに変身する設定となった。
二人が
のこちゃんがロッカーの使い方がそれに似ていると言えば、
「そう言えば、のこは
「えー、お
「ばーか、
「あっ、チャムケアでもメイクをテーマにした作品が…」
「うるさいうるさい」
繰り返されるたわいないボケとツッコミの様なものは、そんなひとときこそが、のこちゃんと
二人の顔は笑っていた。
――――――――――――――――
結局、仕事先のゴタゴタが終わらずにきょう姉さんが剣道教室へ来られなかったので、のこちゃんをはじめとする参加者たちは先生の
中にはもの足りない顔をした子供たちがいたものの、これが本来の剣道教室である。
とは言え、のこちゃんもきょう姉さんがいた方が楽しいので、気持ちは分かる。
やはり、きょう姉さんのお下がりであるのこちゃんのMyPhone(マイフォン)には、きょう姉さんの
「きょう姉さん、良い人だったのに………」
「いや、
「のこちゃん、すくねちゃん、剣道終わったみたいだね?」
のこちゃんと
声の方へ視線を向ければ、そこには、
背はのこちゃんと同じくらいか少し高めで、ふんわりとした毛質の黒髪をテキトーに、それでも耳が隠れてしまう
ややキノコっぽい印象ではあるのだが、
この年代の少女らしく全体的に少しふっくらしているものの、目も大きく、
いつも何かしら本を読んでいる様などちらかと言えばのこちゃん
せっかくの日曜日なので、お出かけしていたのだろうか。
「あ、まなっちゃん」
「よぉ、まなち」
学校では、
「いやぁ、大型書店めぐりで都内へ足を
「ああ、朝のニュース番組で見たよ。
電車一本で都心へ出れても、その電車がだめだと、あたしたちじゃどしょうもないよねぇ」
中学生の身では、家族に車を出してもらうか、電車より割高なバスを乗り
そう言えば、のこちゃんが小さい頃に住んでいた都内のアパートからは都庁の建物も近くに見えていた記憶があるので、電車が止まっていても何とかなっただろうか。
「まなち一人で行ったのか?」
「ああ、ひなちゃんも
「うすか。何かあいつに、
「そんな事無いよ。ひなちゃん、良い
ひなちゃんとは
確か、
「それでどうしたの、まなっちゃんは、あたしたちに用事?」
「うん、本当にこのまま帰るんじゃ物足りなくてね…二人とも
のこちゃんと
そば屋のチェーン店である
「天ぷらうどんな感じだったのになぁ……」
「まぁほら、食べ終わって
白身魚のフライを
勿論、チャムケアの話である。
「そう言えば、二人は連休の予定って何か考えているのかい?」
おおそれだよ!と目を
「都内の方は最近変な事件や事故が多いし、たまには山の方へでも
「ん?ああ、天気が良けりゃあ、別にいいよ」
「なぜわかった」
「ほら、わたしたち二年生になってクラスが別れちゃっただろ?」
「そっか。のことは剣道教室があっからまだ良いけど、まなちは、たしかになぁ」
「そうそう、チャンスがあるならイベントの一つも欲しい所じゃないか」
若干リアクションのおかしいのこちゃんに
「そうだ。せっかくだし、うすも引っぱって来いよ、まなち」
「それはかまわないが、すくねちゃん、何か悪い顔してるよ?」
中学へ上がり、たまたま同じクラスになって、どういう訳か馬が合った
そんな
特に
それにしても、山の方へ遠出となると、やはりハイキングだろうか。
のこちゃんも、ひとまずチャムケアについては
こうしたものは、あれやこれやおしゃべりしながら、予定を考える時間が一番楽しいのだ。
――――――――――――――――
当然、宿題も忘れない。
正直に言えば学校の勉強は
お世話になっている人への
のこちゃんにとってそれは、
まだ小さな
しかし、今思うとアパートの一室なのだろうが
都庁の建物がそれなりに近く見えた記憶から、恐らく副都心の、
ただ、その
トントン
のこちゃんが準備を終え、
「いま良いかな?、のこちゃん」
祖父である。
着替えたらおやすみなさいの
祖父は、祖母より
「何?おじいちゃん」
なんだろうとドアを開けると、
のこちゃんの"なんだろう?"は、
祖父はどう話を切り出そうかと迷ったらしく、
「実はね、のこちゃんのお父さん側のご
「え?……」
祖父の話が意外な方向からだったので、のこちゃんはどう反応して良いか分からず、つい固まってしまった。
「のこちゃんと、二人だけで面会したいそうなんだよ」
「……お父さんの?」
「お兄さん、つまり
亡くなったのこちゃんのお父さんは、古い
幼いのこちゃんを残して
しかし、それはのこちゃんが小学校へ上がる前の事、昔の話だ。
のこちゃんが
「
「それが、向こうさんが言うにはね……」
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