ブラックコーヒー

樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須

ブラックコーヒー

〈現在・喫茶店店内〉

私が高校生の頃、喫茶店でアルバイトをしていた。 彼がお客さんとして来店したのが彼との最初の出会いだった。


〈15年前〉

お店のドアベルが鳴り、 そちらへ目線を向けると、 彼がお店の入口のドアにぶつからないようにと首を前に倒しながら入って来た。


私は「うわー、めっちゃ背高いー」と目を輝かせていると、彼が気付いたようで照れくさそうにしていた。

「いらっしゃいませ」 という声が緊張で上ずってしまった。


彼はそんな事も気にせず 『オリジナルブレンドコーヒーをください。 ブラックで』と低めの声で注文した。

それからというもの、 彼は何度もお店に来ては【いつもの】と言って注文するようになっていた。


〈現在〉

15年ぶりにその喫茶店に来た。

ドアベルが鳴り、 目線を向けるとあの頃と変わらず首を倒しながら入ってくる彼。 注文は今も 【いつもの】で通るらしい。


彼は 『お待たせー』と言いながら私の向かいに座る。

彼は私の手元を見て『あれ??カフェオレじゃないんだね?』と馬鹿にするかのように言ってきた。


隣に座る息子はピザパンを美味しそうに頬張っている。

今日は3人揃って初めての喫茶店。

高校生の頃には全く飲めなかったブラックコーヒーを、 今は美味しく感じられるようになっていた。

授乳期には飲むのを止めていたカフェインを久しぶりに摂取した。

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