第21話 魔石の武器防具

 元警備隊のドルファーさん達、指導の下で武器や防具作りを始めることにした。

 集落の人達から警備隊への入隊希望者を集って、この人達に合った装備を作る。

 だけどドルファーさんの話だと、戦闘経験がない人が今から訓練してもそう簡単にものにはならないらしい。

 ましてや普通の武器や防具じゃ、魔物相手にするなら差はうまらない。

 だから僕がいつも使っている刃魔石で作っただけの剣じゃ心もとないと思った。


「リオ。爪がいい。爪爪爪」

「ユウラには爪が合ってるけど、他の人達はね……」


 ユウラが爪をかちゃかちゃと鳴らして張り切ってる。

 ユウラにも特訓相手をしてもらう予定だけど気合が入ってる分、心配だ。僕みたいに心が折れかけないといいけど。

 そしてドルファーさんが希望者の体格を見て武器を決定した。


「あんたは剣だな。槍だと体格的に支えられん」

「そ、そうか。それなら仕方ないな」


 希望者の一人のおじさんが少しがっかりしていた。

 この人は男なら槍だろなんて意気込んでいたけど、ドルファーさんの目は厳しい。結果的にほとんどの人が剣で槍は一人、斧が一人。

 ひとまず僕が暫定的にそれぞれ剣や槍、斧を刃魔石と突魔石で作っておいた。これで先に訓練を始めてもらう。


「よぉぉーーし! お前ら! 訓練が始まったら俺は厳しいぞ! だけど自分達の居場所を守る為だからな!」

「お、おぉ!」

「やってやる! やってやるぞ!」


 ドルファーさん達が外へ出ていった後、僕は自分の研究室に戻った。

 ドルファーさん達のおかげで皆に合ってる大きさなんかの規格はわかったから、後はカスタマイズするだけだ。

 まずは刃魔石の剣。これは普通の状態だと――。


ウイングソード

属性:【斬】【風】

効果:なし


 刃魔石だけならこの二つの属性だけだ。

 ここで新しく魔石を生成してエンチャントする。力の魔石は確定だ。これは武器の攻撃力を上げることができる。

 あ、どうせだから速の魔石もつけちゃおう。そしてこの周辺には獣系の魔物が多い。となると、牙の魔石か。

 それぞれ小さい玉として生成して、これを柄にはめ込む。そうすると武器に特定の効果が付与できる。

 ひとまずこんなものでいいかな?

 

「魔石生成……」


ウインドソード

属性:【斬】【風】

効果:【攻撃力アップ】【速さアップ】【獣系特攻】


 うん。見違えるほどいい武器になった。

 この攻撃力アップで元の二倍くらい切れ味が増したし、牙の魔石による獣特攻で獣相手に2倍。

 村潰しのバフォロ相手にかなり期待できる。ひとまず槍も同じ要領でいいかな?

 それと忘れちゃいけないのが防具だ。これはまず玉にした硬魔石を埋め込んで【斬】【突】【打】態勢を付与する。

 肝心の防具の素材だけど、これは軽いものでいいか。魔石の中でも軽いのが確か風魔石、これで胸当てを作る。

 心もとない防御面は耐性で補って、戦いの初心者が身に着けるものだから軽さも重視したい。

 それもドルファーさんの言いつけの一つだ。


「うーん……。もう一つ足りないなぁ」


 武器や防具にしても、付与できる効果は限られている。

 もっとすごい魔石で作れば付与できる効果の数も多くなるけど、その分重くなる。

 初心者用の武器や防具なら性能より軽さだ。まぁ全部、ドルファーさんの受け売りなんだけど。


風の胸当て

属性:【風】

効果:【風耐性】【斬耐性】【突耐性】【打耐性】


「これはお手軽に強いはず!」


 僕でも装備できる軽さだし、それでこの性能! 屋敷にいた時、本で勉強した甲斐があった。

 ユウラに特訓してもらった後もずっと考えていたんだ。魔術に頼るだけじゃなくて、いざという時に繰り出せる自分の力。

 言ってしまえば第二の魔術だ。僕の場合は剣術に加えて魔石術、二段構えで戦うことができる。

 それにまだまだ色々な魔石があるし、皆が成長したら更にいい武器や防具を作ることができるはずだ。

 だからドルファーさん達が使う武器や防具なら、もう少し性能がいいものを用意できる。例えばドルファーさんの槍はこれだ。

 速魔石の【速さアップ】、力魔石の【攻撃力アップ】、防魔石の【ガード率アップ】、牙魔石の【獣系特攻】。

 これらをすべてエンチャントした。


ウインドスピア

属性:【突】【風】

効果:【攻撃力アップ】【速さアップ】【ガード率アップ】【獣系特攻】【風追加攻撃】


「うーん、これは重い」


 僕じゃ持てない。これは後でドルファーさん達に取りに来てもらうとして。

 ん? なんか視線を感じる。それも首筋の後ろ辺りに――。


「リオ」

「わぁっ! ユ、ユウラ! 皆の訓練に行ったんじゃなかったの?」


 心臓が飛び出して壁にぶつかるかと思った。気配が一切ない状態で背後に近づかれたのか。

 ユウラがその気になったらいつでも僕なんか殺せそう。いや、そんなことはしないだろうけど。


「なんで」

「なんでって?」

「武器」

「武器……? あ! そうそう! ユウラの爪も強化してあげようと思ってさ!」


 その途端、ユウラが首を上下に激しく動かして頷いた。わかってくれたとばかりの反応だ。でも訓練は?


「爪」

「はい、やるよ。大丈夫だよ。えっと……」


 刃魔石で作ったから武器はウイングクロー。

 ユウラが更に強くなるにはドルファーさんの武器と同じようにもう一つ属性の付与かな。

 【突】属性を付与して、攻撃の幅をもたせることかな? 【斬】に耐性がある相手にも【突】があれば、安定してダメージを与えられる。

 後は【速さアップ】と【ガード率アップ】、それともう一つ。ユウラは手数がおそろしく多いからこれがいい。

 そう、【クリティカル率アップ】だ。これは、芯魔石を使えばエンチャントできる。


ウイングクロー

属性:【斬】【突】【風】

効果:【攻撃力アップ】【速さアップ】【クリティカル率アップ】【ガード率アップ】【獣系特攻】


「はい。ユウラ」

「ん……」


 受け取った爪をユウラがまじまじと見つめている。気に入ってもらえるといいけどな。

 表情がほとんど動かないから、そこがまったく読めない。さぁどうかな?


「ありがと」


 無事、ぽつりとお礼を言ってくれた。そしてなぜか頬を染めている。

 そうか。訓練で疲れたから休憩しに戻ってきたのかな?

 そこへドルファーさんがドタドタと研究室に入ってきた。


「おぉい! ユウラの嬢ちゃんよ! 突然いなくなられちゃ困るぜ!」


 え? 無言でいなくなったの?

 確かに僕ならまだユウラの言わんとしてることはわかるけど、他の人達だと意思疎通が怪しいか。

 ふとドルファーさんがウイングスピアを見つけてニカっと笑う。


「お! こりゃもしかして俺の武器か! すげぇ仕上がりじゃねえか!」

「はい。力持ちのドルファーさんなら扱えるはずです」

「ハハハッ! お前はいい魔術師だ! ありがとな!」


 ドルファーさんに頭をわしゃわしゃされて髪がぐちゃぐちゃになった。気にいってもらえたならよかったよ。

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