呪いを掛けられた魔眼使い
星月
第1話 「プロローグ」
呪法。それは、代償が大きく、魔法がありふれたこの世界で、使う人は「邪道」と言われており、相手に呪いをかけたりすることができる物で、使っていると自分にも呪いが降り掛かるような代物。その呪いをかけられた人は、「邪忌人」と呼ばれ、忌み嫌われ、最後には殺されてしまう。そして、俺__ルインは、色々あって、呪法によって様々な呪いを掛けられていた。呪いは一生解けない。だからこそ殺される。だが、俺は前代未聞の例外だった。何故なら、俺に掛けられた呪いの1つは、《不老不死》だったからだ。最初こそは俺もまだ幼く、ひたすら逃げ回り、捕まり、死を覚悟した。そして、俺は1度死んだはずだった。俺は《不老不死》の呪いのせいで、攻撃を喰らった瞬間から再生し、無傷だった。それを見て、俺を殺しに来た邪忌人専門の始末屋は言った。
「ばっ……化け物がっ……!!」
それが、俺が物心付いて初めて人に言われた言葉だった。そして、俺は自分が自分では無いかのような感覚に襲われ、気がついた時には始末屋が"死んでいた"。そして、俺は街へ行き、人に助けを求めた。だが、街に居る人々も、俺へ向ける目は"同じ"だった。あの始末屋が攻撃を受けて無傷だった俺に向けた、「絶望」「恐怖」の感情の篭った目。ある人は悲鳴を上げながら逃げ、ある人は意識を失い、ある人は死期を悟ったかのように放心したまま壁に寄りかかり、絶望の表情を浮かべながら座り込んだ。
「……此処に僕の居場所は……無い…のか……」
街の人々の様々な絶望に染まった表情や姿を見て、そう小さく呟き、また"あの感覚"が体を支配する。始末屋を殺した時の、自分が自分で無いかのような感覚。そして、次に気がついた時には、街の人々は血痕だけを残して"居なくなっていた"。
「……え?……街の人達は……?」
ざんがい
そして、街の人々の"血痕"と、自分の服や腕に付いた血を見て、何となく分かった気がした。いや、分かっていた。分かりたくなかった。皆を、自分が殺したなんて__
__あれから、どれぐらい経っただろう。どれだけの人が俺を殺しに来て、俺はどれだけの人を殺しただろう。
「この姿だからいけないのか?だからバレるのか?」
半分冗談のように、嘆くようにそう呟き、深紅の眼が白い光を放ち、一瞬で夜空のような紺色の髪を白銀に染め、髪が肩甲骨の辺りまで伸びる。元々中性的な顔立ちをしており、声も普通よりも高めで、男と言われれば「確かに?」となる位には見分けが付かない。今の状態のルインは、誰がどう見ても女にしか見えないだろう。
「まあ、こんな所か。"魔眼"持ちじゃなければ見破られることは無い…か。」
魔眼とは、魔法の才能に長けた者に生まれつきで宿る様々な力の事で、持っているだけでもかなり珍しく、ましては複数持ちなんて国宝と言われる程だ。そんなに珍しい魔眼持ちの中でも、正体を見破る事ができる種類の魔眼で見ないといけない。流石にそうそう見破られることは無いだろ。と心の中で呟く。
「魔眼持ちは出来れば仲間に引き入れておきたいんだがな。強い味方はいくらいても困らない。ま、いざとなれば、力を"奪い取ってしまえばいい"からな。」
人気の無い廃墟の屋上にある椅子に座り、呟く。
「さて…今は女って事になってるし、街にでも行ってみるか?」
ゆっくり悩む素振りをしつつ言う。
「そういえば、女にしてはちと男勝りな口調過ぎるか…」
そう言って頭を整理し、少し咳払いをする。
「こんな感じの喋り方かしら?」
少し恥ずかしいな…これは…と思いつつ仕方ないと受け入れ、屋上から仰向けにゆっくり飛び降り、頭から落ちた状態から、地面に落ちる直前で子猫の様に一回転して体勢を整え、着地する。
「そういえば、この格好も少々男っぽいな…」
慣れない口調で元の口調に戻ってしまうが、まあ街に着いた時に戻せばいいか。と開き直る。そうして、再びルインの深紅の眼が白い光を放ったかと思うと、次の瞬間には、白いTシャツに紺色のスカートの、一般的にお洒落と言われる様な服装に変わっていた。
「さて、行くか。」
そう呟き、記憶を頼りに、そこそこ大きい街へ向かう。
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