第15話 やあ
翌日心愛のインターフォンを鳴らすと、ピンポーン、とチャイムが鳴る音がした…。
…と、いった描写はいらないだろう。心愛の家はそんな古い設計をしていない、というかかなり近未来的な設計をしている。
そもそも、心愛の両親は科学者だ。科学者は、今の時代最も優れた人類であると言っても過言ではない。そんな両親を持った心愛がどう育つかなんて、言わずもがなわかるものだ。
「…認証完了シマシタ。ドウゾナカヘ。」
もはやAIの顔認証で入れる。鍵とかない。これが本当の顔パスってわけだ。…というか僕ここにくるのも二年ぶりなはずなんだけど入れちゃうんだな。それにしても、僕の顔パスで心愛の家に入れるのはまずくないか?
僕は広い庭を通り抜けて屋敷の中に入った。こんな住宅街には似つかないような豪邸は、まるでお城のようだった。高い天井には、キラキラとLEDライトが光る。
「心愛ー?」
いかんせん勝手に入ったようなものだから、お出迎えがあるはずもなく。僕は心愛の名前を呼んだ。
「…あー、やっぱり入れちゃったよね。こっちこっち。」
心愛の声が階段の上からした。どこか落胆したような、覚悟を決めたようなそんな声だった。そんな声でも、天使が囁くような声に聞こえる僕は病気かもしれない。…あれ、超幸せだな、僕。
しかし、僕はそんなことに構っているわけにはいかないのだ。今日、僕は心愛の前科を知るのだから。ずっと隠していた、その罪を僕は一緒に背負わなくてはいけないのだから…。
階段を上がると心愛の部屋がある。二年前の記憶と同じところにそれはあった。
「ねえ、私はあなたをなんて呼べばいいのかな?」
その扉の向こうから、心愛の声がする。
扉を開けたら、何かが変わる気がした。僕から見える世界が全て。認証機械に手を当てて鍵を開ける。ドアが、開く。
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