あの子に…

鈴木まる

第1話 梨々花(りりか)の場合


 中学生になってから、より一層頭のできの良しあしがあからさまになったと思う。中間テストや期末テストはもちろん、普段の授業のレベルも小学生の頃とは比べ物にならない。


 私は自分がまあまあ勉強はできる方だと思っていた。せめて真ん中あたり。でも、中2になるまでに受けてきたテストの点と通知表とが、真ん中以下であるという残酷な現実を突きつけてきた。


 だから、クラスが同じ妃奈(ひな)のことがとてもうらやましかった。小6の時から今現在の中2まで偶然同じクラスの彼女は、勉強がよくできた。だからといってそれを鼻にかけるわけでもなく、頼まれれば友達にはわかりやすく解説してあげていた。


 穏やかで頭脳明晰な彼女に、同じく穏やかだが勉強の苦手な涼太(りょうた)はよく話しかけていた。「今の授業のノートちょっとここ取りそびれたから見せて。」「テスト範囲のこれ、全然わかんないよ~。」と彼女にたびたび助けを求めに行っていた。


正直、勉強ができることよりそのことが私はうらやましい。きっと頼りになる人格者の妃奈のことを、涼太は好きに違いない。


ああ、妃奈になりたい!





 

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