平行世界からヒロインが俺を抱き締めにやってくる、どうやら平行世界の俺は死んだらしい、逆に俺の世界にはお前らは死んでんだよ、現代和風ダンジョン攻略、現代ファンタジー
三流木青二斎無一門
迷宮攻略者
迷宮攻略者。
その歴史は五百年前に遡る。
ある術師が、大罪を犯し死罪を決めた時。
その術師は穴を掘って洞窟を作り、逃走したと言う。
術師の能力によって、その洞窟は入り乱れていき、そして追跡者が来ない様に術式で作った魔物、術像を置いた。
多くの術師は、大罪術師を追ったが、追跡叶わず、捕まえる事は出来なかった。
そうして、その土地には多くの術師が根付き、現在に至る今では、術師は迷宮攻略者と言う名を背負い、大罪術師を追い続けている。
五百年経った今でも、何故迷宮を進むのか、五百年も経てば、大罪術師は死んでいるのでは無いのか?
恐らくは生きている、恐らくは死んでいる。
どちらの可能性であろうとも、迷宮攻略者は奥へ進まなければならない。
何故ならば、五百年の間、迷宮は未だに作られている為だ。
最奥に進み、迷宮構築を終わらせぬ限り、彼ら迷宮攻略者の終わりは訪れない。
性は
迷宮にて出現する術像と対峙する。
大柄な蛇だ。しかし、その蛇の肉体は岩石である。
巨大な岩が連結した様な、見栄えとしては輪を切った数珠の様な姿である。
その蛇と対峙した伏鹿角は武器を構える。
迷宮には、術具と呼ばれる道具が放置されている。
五百年前の大罪術師が、この迷宮を掘る為に使役したらしい術具を、迷宮攻略者は再利用して使役する事が多かった。
「『
伏鹿角は名を叫ぶと共に、手首に巻かれた数珠が光る。
その数珠は術具を内包する為に使う、言うなればアイテムボックスの役割を持つ。
名前を呼ぶ事で、その名前に呼応して術具が出現する様になっていた。
名前を呼ばれた事で、竜骨と呼ばれる術具が出現した。
その道具は、白い骨だった。
刃物の様に、大太刀と言うのか、細長く反り返った武器であり、その刀身は厚くで武骨。
岩石の蛇が伏鹿角を確認すると共に、彼に向けて巨体を振り下ろす。
蛇の攻撃に、伏鹿角は体を前転させて回避すると共に岩石に攻撃を繰り出す。
竜骨と呼ばれる武器の破壊力は底知れない。
彼が持つ術具の中では、竜骨が一番の威力を誇る術具であるからだ。
その竜骨が、岩石の蛇に攻撃して、刀身半ばで破壊された。
岩石の蛇の肉体の方が硬かったらしい。
折れた竜骨を確認した伏鹿角は岩石の蛇の方を見つめると共に頷く。
「戦略的撤退ィ!!」
そう叫び、全速力で走り出す。
術像から逃げて、それを恥じる事なく、彼は逃げた。
性は伏。名は鹿角。
迷宮攻略者としてまだ一年も経っていないひよっこである。
そうして、伏鹿角が逃げた先は、大きな広間だった。
「…ふぅ、どこだ、此処は」
広間の真ん中には、巨大な鏡の様なものがあった。
壁に張り付いた水銀の様に、鏡が波打ち波紋を作っている。
「見た事無い場所だ」
そう呟きながら、伏鹿角は鏡の方へ向かう。
そして、鏡が伏鹿角の姿を認識すると共に、眩く光り出した。
「うわ、な、なんだッ!?」
そうして目を瞑る伏鹿角。
水銀の鏡から、人が出てくる。
その人物を見て、伏鹿角はゆっくりと目を開く。
淡い紫の様な色合いが似合いそうな、黒髪の少女だ。
少女、と言うには、聊か、肉体が豊満ではあるが。
とにかく、美しい女性である事は確かだろう。
急に出現した少女に、伏鹿角は身構える。
「(新手の術像か?)」
人間の形をした術像も少ないが居るとも聞いている。
だから、伏鹿角は身構えたのだが。
目を開き、きょとんと、伏鹿角の方を見つめる少女。
そして、伏鹿角の姿を認識すると、少女は目を開き、涙を流した。
そのまま、よろめく様に、少女は歩き、そして伏鹿角の胸に飛び込んだ。
「鹿角、さま…かずみさまぁ…ッ!」
泣きじゃくる少女に、伏鹿角は狼狽える。
何故自分の名前を知っているのだろうかと、伏鹿角は不思議にそう思っていた。
「な、んだ、お前は」
伏鹿角が聞くと、少女は答える。
「私は…
白院。
その名前を聞いて、伏鹿角は驚く。
迷宮攻略者として、前線を行く名家の名だ。
そして、癒遊と言う名前も聞いたことがある。
「白院癒遊は、十年以上前に死んでるぞ」
病弱な子供であった。
白院癒遊は、病に侵されて、死んだと聞いている。
けれど、此処にいる彼女は、生きている。
「…この世界での私は、既に他界、しているのですね?」
彼女は目に浮かぶ涙を指先で拭いながら、紅葉の様に紅い瞳を伏に向ける。
「私は、平行世界からやって来た、生きている白院癒遊です」
平行世界。
そう言われて、伏鹿角は混乱した。
まさか…と思いながら、迷宮と言う概念がある以上、平行世界を否定する事も出来なかった。
「そして…前の世界では言えませんでしたが…鹿角さま、私は、貴方を…」
何を言うのかと、伏鹿角は思った。
「(好きとかそんな感じか?いや、それは無いか)」
伏鹿角は自分に対する好意を否定した。
そして、白院癒遊が声に出す。
「お慕い、していました」
恥ずかしそうに、口に手を添えて、彼女の目は潤んだまま、頬を紅潮とさせつつも、自らの想いを口にした。
…好きと言う言葉ではない。
だがそれは、好きに等しい言葉であった。
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