第二章「ハッピーで埋め尽くして その6」

 王都オルデナムにデートに行った翌日の午後、俺とアルは森へ薬草を採りに来ていた。

 この村にはアルがいるから薬草なんてとるだけ無駄なんじゃないかと思ったが、どうやら採った薬草を使った貿易を行っているようだ。

 それに、アルにばかり頼ってはいられないという住民の心遣いもあるようだ。

 先日、村長が魔除けの箱をもらってきたため、最近は森へ出かける村人たちも増えているのだが、今日は今のところ俺たちのほかにここへ入ってきている人はいないようだった。

 昨日は年甲斐もなく、アルに慰められてしまったが、今日からの俺はアルに頼られるような男にならなくてはいけない。

 そして、俺がアルに頼られるような強い人間になったとき、そのときに俺の気持ちを伝えよう。

 もう俺は後悔したくない。今なら上手くやれる。

 そう意気込んで、一歩一歩進んでいく。


「アルはさ、好きな音楽とか、あんの?」

「音楽…ですか?」

「あ、そっか。ここ異世界だから音楽の形態とか全然違いそうだな…」

「気になりますか?この世界の音楽のこと」

「うん、まあどんなもんなのかなあ、と」

「基本的には弦楽器と打楽器、あとは琴楽器都オルデナムにデートに行った翌日の午後、俺とアルは森へ薬草を採りに来ていた。

 この村にはアルがいるから薬草なんてとるだけ無駄なんじゃないかと思ったが、どうやら採った薬草を使った貿易を行っているようだ。

 それに、アルにばかり頼ってはいられないという住民の心遣いもあるようだ。

 先日、村長が魔除けの箱をもらってきたため、最近は森へ出かける村人たちも増えているのだが、今日は今のところ俺たちのほかにここへ入ってきている人はいないようだった。

 昨日は年甲斐もなく、アルに慰められてしまったが、今日からの俺はアルに頼られるような男にならなくてはいけない。

 そして、俺がアルに頼られるような強い人間になったとき、そのときに俺の気持ちを伝えよう。

 もう俺は後悔したくない。今なら上手くやれる。

 そう意気込んで、一歩一歩進んでいく。


「アルはさ、好きな音楽とか、あんの?」

「音楽…ですか?」

「あ、そっか。ここ異世界だから音楽の形態とか全然違いそうだな…」

「気になりますか?この世界の音楽のこと」

「うん、まあどんなもんなのかなあ、と」

「基本的には弦楽器と打楽器がメインですね。音に関する祝福を持っている方もいて、そういう人たちは音楽界の第一線で活躍されてます」

「音に関する祝福か…。どんなものなのか、ぜひ聞いてみたいな」

「今度王都へ行ったときにでも、なにか演奏会などやってないか探してみましょうか」

「いいね。やろう」

「うふふ。楽しみです!」


「アルはさ、俺以外に年の近い知り合いとか…いたことないのか?」

「うーん、それが私、同年代の友達ができたことがなくて…。だから、シンさんとおしゃべりしてるとき、とても新鮮で楽しいんですよ!」

「そっか。でも、なんでタケダ村には他に年の近い子供がいないんだろう」

「若い人たちは、みんな王都の方へ行っちゃいますからね…。今、魔族との溝も深くなってるって言いますから、王都周辺は人手が必要なんだと思います」

「魔族との戦いに備えて…か」

「そうです…」

「…争いなんて、無くなってしまえばいいのにな」

「ですね。本当、みんなが分かり合える、平和な世界になってほしいですね」

「ああ…」


「あ、そうだ。今度王都に行ったときにさ、この世界の本屋を巡ってみたいんだけど…」

「え…?あれは…まぞ…!」

「ん?どうした。なにかヤバイもの…で…ぐはっ…かっ…」

 あれ…?

 なん…だ…?

 お腹の上あたりが、信じられないくらい熱い…!

 程なくして、それが痛みであることに気づく。そして、みぞおち付近から、何か鋭利なものが貫通していることも。

「シンさんっ!」

 アルの呼ぶ声がする。

 その声に応えようとするが、思考に自分の体がついてこない。

 意識が、消えていく。深い闇の中へ、落ちていく未来が見える。

「チッ、オメーじゃねえんだよ!」

 これは…アルの声じゃ…ない…?

「ア…ル…っ!」

 逃げろ。そう言いたかったのに。いつの間にか、口の中に血だまりができており、言葉が出てこない。

「シンさん、今、私が…っ!」

「ア…アァ…っ!」

「死ね、女ァァァッ!」

 舞台は、暗転した___。

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