第22話 みんな、みーんな、だーいちゅき!

 それと、もう一つ大切な事。


 ラミカお姉ちゃん。


 力が戻った白聖女サン・ネージュの癒しの力や、栄養たっぷり摂ってしっかり休養した事で、肉付きは元に戻った。

 でも、皮膚のしわは完全には戻らなくて、所々残ってしまった。


 それを見て、申し訳なくなり、「早く助けてあげられなくてごめんね」と謝ると、お姉ちゃんは小さく首を横に振って、


『いいの、これは可愛い妹を困らせた悪い姉への罰なの。だから、メヒアがそうしたように、私もこの体を受け入れるの』


 と、優しく笑ってくれた。


 その笑顔は、仲良しだったあの頃のものだった。


 私はそれを聞いて、やっぱりべそをかいてしまい、


『メヒアはいつまで経っても泣き虫ね』


 と、お姉ちゃんに抱きしめられ、そっと頭を撫でられ、ボロボロ泣いてしまった。そんな私を見て、ガザムさんは、


『いつまでも泣き虫! そこが可愛いんじゃないか!』


 と、言ってくれ、ここでも肯定してくれた。





 叔父さんは牢で刑期を全うするらしい。何度か面会に行こうと、ガザムさんと話し合った。


 そして、あの叔父さんの事件以来、呪詛は禁止された。

 呪詛に関する書物は一斉に燃やされ、使っていた人は術を封じられた。


 その事により、呪いを解く私の力は必要となくなり、段々と弱くなってきている。


 でも、それでいいんだ。


 呪詛は、ない方がいい。


 ガザムさんやお姉ちゃんみたいに、苦しむ人はいない方がいい。

 私の力は、必要でなくなる方がいいんだ。




 そうそう、あれから。

 私みたいに黒い髪に黒い瞳の子はたくさん産まれ、呪いを解く力ではなく、聖なる力が宿った。そして、白聖女サン・ネージュ黒聖女サン・ノワールという区別はなくなり、みんな“聖女サン”と、呼ばれるようになった。


 だから、私も“聖女サン”でいいんだけど。本当に世界でたった一人の黒聖女サン・ノワールになったし、黒聖女サン・ノワールである事を誇りに思っているから、黒聖女サン・ノワールのままでいる。


 だって、この力があったから、大切な人を、この世界を救えたんだから。


「おかあさんおかあさんっ」


「んー? なーに?」


「おかあさんも黒聖女サン・ノワールやってー!」


黒聖女サン・ノワールやってって。私はもう黒聖女サン・ノワールだってば」


「うんっ、だから! ほんもの見せてー!」


「本物って、もう……」


「本物の出番か! ならば! ぐあぁー! 呪われたー!」


 エレクトさんが胸を押さえ、地面をのたうち回る振りをし出した。


「エレクトさんまでー」


「ぐあおぅー! 俺も何だかまた苦しいぞー!」


 ガザムさんもバタンと倒れ、足をジタバタし出した。


「ガザムさんまでー、もうっ、二人共ノリノリなんだからー」


「おかあさんおかあさんっ」


「母ちゃん母ちゃん!」


 我が子二人が両手を掴んで揺らし、早く早くと急かしてくる。


「もうっ、わかりましたっ。二人共、離れていてねっ」


「「はーい!」」


 二人が離れたのを確認すると、エレクトさんとガザムさんに手をかざした。


「黒も生、刻め生まれしものよ。我の糧とならん。共に生きようヴィーヴル・アミーチェ!」


















 私は、世界でたった一人の黒聖女サン・ノワール



 この黒い髪も瞳も、呪いを解く力も。



 白く美しい故郷も。



 夫のガザムさん、可愛い子供たちも。



 そんな、大切な人たちがいる、この世界も。



 みんな、みーんな、だーいちゅき!






 fin.




 ●●●●



 あとがき。


 完結、です。

 私大好き『本当のあとがき。』(笑)を、また書きますが、お話としては、これで終わりです。


 ここまで、最後まで読んでくれた皆さん! ありがとうございました!


 だいちゅきです!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る