第三章 綺麗な花には棘がある!?!?
!?♡?!?!?♡?
ある晴れた日の朝、学生服を着た、眼鏡の神経質そうな顔立ちの少年が、家々が軒を連ねる住宅街を一人、歩いていた。
今日の天気とは対照的に、どういう訳か、彼の表情はどんよりと曇っていた。
彼のズボンの中で、着信音とともにスマホが振動した。
少年は浮かない顔でそれを取り出した。見ると、同級生からl○neの通知が来ていた。
『約束通り金持って来いよ』
『じゃなきゃ罰として全裸で校庭3周な』
少年は溜息をつくと、小さく呟いた。
「ああ、死にたい…」
神様、仏様、誰か僕を楽にして下さい。少年はそう、切に祈った。
l○neの返事に迷っていると、少年は前方にいた何者かに正面から衝突した。
「あ…すいませ…」
慌てて顔を上げた瞬間、少年は凍り付いた。目の前にいたのは、頭部に2本の角を生やし、口角が異様に吊り上がった、まるで般若のような形相の、怪物じみた女だった。うっすらと牙が覗く口には血が付着しており、ついさっき誰かを食ってきたのが一目瞭然だった。
「へ、へ、変異者…!!」
少年は反射的に踵を返すと、全力で逃走をはかった。変異者は長い黒髪を振り乱しながら彼を追いかけた。その姿は、まさしく鬼さながらだ。
「ヒイイイ!やっぱ死にたくないィィィ!助けてェェ!」
恐怖で足がもつれ、少年は顔から派手に転倒した。急いで仰向くと、鬼女の顔が、すぐ側まで迫っていた。
少年は再度、強く祈った。神様、仏様、いや誰でもいい、僕を助けてください。
その祈りは成就した。
少年の背後から目にも止まらぬ速さでやってきた巨大な黒い影が、彼を横切って行った。その影は、通り過ぎ様に鬼女の首をもぎ取った。
断面から噴き出た血が、少年の体中に浴びせられた。
陸海空は振り返ると、少年の様子を伺った。
「…ラッキー、気絶してら。たまたま俺が通りかかってよかったな」
そう言うと陸海は変身を解除し、近くの家の敷地に生首を投げ込むと、何事もなかったかのように学校へと向かった。
教室に着くなり、陸海は窓際の席へと向かった。
「よう…」
軽く挨拶を済ませると、陸海は薄井幸に向かい合って座った。薄井はもの言いたげな表情で彼を見た。
「な…何だよその目ェ~!もうお説教はこりごりだぜェ~!」
「元々こういう目だ。お前よくそんな呑気でいられるな、テレビでも学校でもお前の話で持ち切りだぞ」
「ああ…まったくひどいもんだぜ。『怪人蛾男、またも大量虐殺!』とか、『怪人蛾男、白昼堂々交尾か!』とか…事実無根だっつーの」
陸海はやれやれといった様子で頭を抱えた。
「…どうせお前のことだ、また余計なことに首を挟んだんだろう」
「まあ、そんなところかな…。1時限目は体育だっけ?やだなァ~!」
「なんかお前、嬉しそうだな…」
「陸海君」
放課後、下駄箱へと向かっていた陸海は、後ろから呼び止められた。振り返ると、別のクラスの女子生徒がそこにいた。ワンレンロングの髪型をした、清楚な雰囲気の女子だった。陸海は顔を見ただけで勃起した。
「な、なんでしょう」
「ちょっと話があるの。ここじゃなんだから、ついて来てくれるかな」
陸海は大人しく、名も知らぬ少女の後をついて行った。
この展開、もしかして…。いやいや、俺に限ってまさかな…。
陸海は空き部屋となった教室に案内された。
「で~…話って?」
どうせ誰々にラブレター渡してとか言うんだろ…。
「率直に言うと、陸海君の事好きなの」
「ふ~~ん……はいぃ!?」
陸海は背後に吹っ飛んで壁にクレーターでも作れそうなくらいの、衝撃を受けた。
「迷惑だった?」
「いやいや、嬉しいけども何で俺なんか…」
「だって陸海君、最近とても魅力的になったから」
陸海はまだ納得出来なかった。
「嬉しいこと言っちゃってェ…!ホントはその辺に誰か隠れてて、今頃クスクス笑ってんじゃないのォ!?」
「…これでも信じられない?」
少女は陸海に近づくと、彼の首に手を回してキスをした。
「!?♡?!?!?♡?」
時を同じくして…。
「もしもし!大変です!ウチの庭に変異者の生首が…!」
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