第13話 中間テスト開始!<天音視点>

 朝目覚めて、シャワーを浴びる。


「ふんふふ~ん」


 今日は月曜日、中間テスト初日だ。


 わたしの方は、まあ大丈夫でしょ。

 いつもよりは少ないけど、それなりに勉強したし、分からない箇所もまず無い。

 後は本番ちゃんと思い出せることを祈るだけだね。


 問題は、がどうなるかだ。


「奏斗君……」


 この一週間、頑張ってたなあ。

 奏斗君が前回のテストで百六十番だと聞いたのは、わたしが三十番以内の条件を出した


 我ながら「やっちゃったかなー」なんて思ったけど、奏斗君は本当に頑張ってた。

 だからわたしも、ちょっかいをかけるのを我慢して、ちょっと真面目に教えてあげていたんだ。


 けど、うーん……


「三十番以内は難しいかなあ」


 一応、例の小説のコピーだけはしておこう。







 中間テスト初日が終わり、放課後。


「……うん」


 手応えは、まあアリ。

 今日の三教科の内、多分二つは百点。

 もう一つは……九十点は超えるだろうから及第点か。


 そうして放課後になった途端、わたしの周りには人が集まる。

 中間・期末テスト、授業の小テスト後なんかでは、よくみる光景だ。


「姫野さん、今回はどうだった?」

「難しかったよね~」

「私、最後の問題が分からなくて」


 それには、わたしの笑顔を見せながら順に対応をしていく。


「わたしも難しかったよ。それと最後の問題はね──」


 別に、クラスのみんなと話すのが嫌いなわけじゃない。

 むしろ話しかけてくれるのは嬉しいし、いなくなったら寂しいと思う。

 

 でも、何か違う。

 話していて楽しくないわけではないけど、何か足りない。

 このまま話していても、どこか満足しないまま日常が過ぎていくだけだ。


 そう思った時、ふと後ろの席を振り返る。

 

「……」


 奏斗君が、落ち込んだ顔を見せつつも今日の問題用紙を眺めてる。

 

「どうしたの? 姫野さん」


「あ、いや……」


 なんとなく誤魔化しつつも、わたしは鞄を持って机を離れていた。

 そうして、彼の席の前に立つ。


「あ、あまねちゃ……姫野さん」


「今日の出来、良くなかった?」


 先に奏斗君が話しかけてくれたことで、自分の口角が上がっているのが分かる。

 わたしはきっと今、いたずらっぽい顔をしているだろう。


「うん。思ったよりは解けなかったかも……」


「そっかあ」


 奏斗君の席の前に来て、後ろは振り返らない。

 きっとみんな、唖然あぜんとしていることだろう。


 教室内では奏斗君とは話したこと無かったし、そもそも奏斗君はぼっちだ。

 そんな人とわたしがどうして? って。


 それでも関係ない。


「じゃあ明日からの教科で取り返さないとね」


 そう言いながら、わたしは鞄からチラッと奏斗君の『妄想ラブコメ小説』を見せる。


「これをバラまかれないように」


「そ、それっ!」


 奏斗君はビクついて、小説を隠すように手を伸ばしてくる。

 その手をわたしは、そのまま引っ張った。


「じゃあほら、いくよ」

 

「わっ! ちょっと!」


 奏斗君も慌てて鞄を持ったので手を引いたまま教室を出ていく。

 

 教室内にはそれなりに生徒もいたと思うけど、声が全く聞こえない。

 みんなわたしたちのやり取りを聞き入ってしまっていたのかも。


 でもわたしは、


「時間ないから、さっさと君の家にいこう」


 一刻も早く奏斗君の勉強を応援してあげたくなったのだ。 

 

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