第10話 突然の危機!? またも小悪魔な条件
天音ちゃんに手作り弁当をもらった日の午後。
授業中。
「……」
いつものようにぼーっと先生の話を聞いている。
だが、授業終了直前になって、危機は突然やってきた。
「来週、中間テストがあるからな。しっかり復習しておくように」
……あ、ああー!
もうそんな時期かー!
★
帰り道。
「うーん……」
「どうしたのかな、そんなに悩んだ顔をして」
「天音ちゃん……」
放課後、連絡をくれた天音ちゃんと一緒に帰る。
天音ちゃんはどうしても目立ってしまうので、みんなが帰る時間帯から少しずらして学校を出てきた。
「いや、中間テストがさ」
「ふーん。そっかあ、
「うぐっ」
いつものいたずらっぽい顔で早速からかってくる天音ちゃん。
「そういう天音ちゃんこそ……って、あ!」
そうだ、そうだよ。
なんで忘れていたんだ。
天音ちゃんは学年一の秀才じゃないか!
「なに?」
「天音ちゃん!」
俺はガバッと頭を下げる。
人通りが少ない道を選んでいるので、なりふり構わずだ。
「俺に勉強を教えてください!」
「……ふーん」
天音ちゃんの返答は渋い。
彼女も自分の勉強があるから当たり前だ。
「やだ、って言ったら?」
「そこをなんとか!」
それでも頼まなければ!
俺は勉強が出来ないんだ!
「じゃあ顔を上げて」
そうして頭を上げて見た顔の天音ちゃんは、ニヤニヤしていた。
「いいよ」
「え、ほんと!? やった!」
「じゃあ早速、奏斗君の家で勉強する?」
「うん、よろしく!」
意外にも返事はオッケー。
もう勝った気でいる俺は、るんるんで帰り道を歩く。
今回の天音ちゃん、ニヤニヤしていた割に優しかったぞ。
こんなこともあるのか!
「あ、言い忘れたけど」
と思っていたのに、後ろから嫌な予感のする彼女の声が聞こえる。
「わたしに教わるからには、三十番以内じゃないと許さないから」
「さ、三十番!?」
うちの学年は二百人。
二百人の中で三十番となると、かなりの高順位だ。
しかも、俺の一年最後のテストは……百六十番。
三十番なんて、夢のまた夢だ。
「ちなみに、達成できなかったら……?」
「んー、あの『妄想ラブコメ小説』を印刷してバラまくとか?」
「え……。じょ、冗談だよね?」
「さあ?」
ニヤニヤとした口を指で覆う天音ちゃん。
小悪魔っぷりが、これでもかという程に見える顔だった(可愛いけど)。
「ほらほら、早く奏斗君の家に行かないと勉強遅れちゃうよ?」
「そ、そんなあ~」
一瞬優しいかと思ったのに。
上げてから落とす。
やっぱり天音ちゃんは天音ちゃんだった。
俺の家に来て、一緒に勉強を始める。
始めるんだけど……集中できない。
だって、
「じー」
「天音ちゃん!」
隣で天音ちゃんが、俺の進み具合をじーっと眺めてくるのだ。
距離も近いし、肘をちょっとでも上げれば彼女の胸に当たっちゃいそうだ。
「奏斗君って、やっぱり頭悪いんだね」
「こんな状況で集中できる人いないよ!」
「そう?」
「うん、絶対そう」
いたずらっぽい態度とはいえ、天音ちゃんは天音ちゃん。
すっごく美少女なんだ。
それに距離も近くて良い匂いがするし、その綺麗な髪が腕にかかってきてドキドキしてしまう。
「じゃあ、わたしの勉強を見ててよ。同じようにしてさ」
「そういうことなら……」
いくら天音ちゃんが可愛くてもちょっと悔しい。
だから俺も、精一杯じーっと眺めてやるぞ。
天音ちゃん側に移動して、彼女がシャーペンを持った。
「じー」
「……」
サラサラサラ……。
一瞬だけ考えた後、天音ちゃんの手は止まらない。
「じー」
サラサラ、カッ。
そうしてあっという間に、
「はい、終わり」
「すごすぎるよ……」
わざわざ【難問】と書かれた問題に手を付けて、さっと問いて見せた。
「ほら、やっぱり君の集中力の問題だね」
「そうなのかなあ……」
渋々認めつつ、お互いちゃんと勉強に入り始める。
天音ちゃんは、今までずっと学年一位の成績なんだし、彼女の邪魔になりすぎるのもよくないからね。
と思ってはいたんだけど。
「ちらっ」
「ちらって、言葉に出すのやめてよ!」
結局ちょっかいをかけられまくった初日となった。
三十番以内……不安すぎる。
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