この復讐(愛)が実りますように

@kumadagonnsaburou

第1話 故郷


「お客さん・・お客さん!」


 男の声に青年は目を開き視線を向けた。

 声の主はあまり見覚えのない痩せたおっさんだったが、おっさんが身に着けている服装で自分がタクシーに乗っている事を思いだした。


「そろそろ奇岩市(きがんし)に着きますけど、これからどちらに向かえばいいですか」

「・・・・・・・・」


 青年は運転手の問いに答えることはなく、ただポケットに入っている紙を渡した。


「お客さん観光ではなく里帰りだったんですね。山奥ですが病に効く奇跡の温泉街としても有名な所がご実家とは羨ましい限りです。近年じゃあ噂が広がり海外の難病人が訪れては奇跡的に回復した! なんて噂もあって、ここは神が住まう地なのだ! なんて言われてますよ。外国人の観光客も増えたおかげでワタシ等も稼がせてもらっていますし、ありがたい限りですわ」

「・・・・・・・・」


 紙に書かれている住所に見覚えのあった運転手は青年に話しかけるも、青年は何も答えず瞳を閉じ小さな寝息をたて始めた。

 運転手と話すことを嫌い静かに自分の時間を過ごしたい客もいるので、運転手はそんな青年の行動に腹をたてることはなく、紙に書かれた場所へと車を走らせた。



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