第17話~アドナイ~
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「パパンのプログラムを受け継いで、既に全ては把握済みでも、改めて記憶の再現をされちゃうと流石にキツイなぁ……まぁ仕方ないけど」
ゆっくりと目を覚まし、起き上がったエンディはその場で軽く伸びをしました。
「しかし、ホワイトの言霊の術は強すぎて酔いが回って困っちゃう。ママンから受け継いだプログラムが無かったらきっと、僕の命は3日でお終いだったな……」
エンディは少しふらつきながらも、今度はその場に立ち上がりました。
「さてと、そろそろママンが森の奥にやってくるはず」
エンディは、宙をくるりと回転しながら浮かび上がると、背中の6枚羽を大きく羽ばたかせました。
すると小さな羽々が、森の緑の絨毯を覆い尽くすと、真っ白い円形のステージが出来上がりました。
*
「エンディの居る場所は何処だったかしら」
ルナは、パキラから背中を押され訪れた、久しぶりの森の奥に心を踊らせると同時に、何処までも続く木々の、その緑色の世界に不安になってもいました。
「このまま迷ってしまったら……」
ルナはピクリと身体を震わせると、歩き進めていた足を急に止めて、その場に立ちすくみました。
それは目の前にいきなり、白い羽で彩られた真っ白いステージが現れたからでした。
「白い羽がこんなに沢山………どうして?」
ルナは恐る恐る歩き進め、その白いステージの中央に辿り着くと、その場に立ち止まりました。
「やっぱり、ホワイトの所へ戻った方がいいかしら。何だかさっきから、オレンジ色の光がチラついて、気分が悪くなってきたかも……」
ルナは突如視界に現れ始めた、オレンジ色のヴィジョンに戸惑いながら、その場に座り込みました。
すると、頭上から白い羽がフワフワと降ってきたかと思うと、あっという間にルナの身体に降り積もり、ルナを優しく包み込み始めました。
「ママンごめんね。今、色々と憶い出されると計画が白紙になってしまうんだ」
気づくとそこには、いつの間にかエンディが居て、ルナの事を見つめていました。
「エンディ……!憶い出すなってどういう事?」
「ナミだった記憶の事だよ?ママン」
「ナミ………?」
ルナはその2文字の名前を、噛み締める様に呟くと、少し何かを憶い出した様な、仕草をしました。
「ママンはやっぱり、ルナ(ナミ)とパパン(エンディ)のマーブルなんだね。だからナミをパパンが取り戻すには、もう少し封印が必要だって、ジュピターが言ってるよ」
「さっきから何を言っているの?意味が分からないわ」
「もうやだなぁ……質問するの止めてくれない?わからなくていい、”わざと”こう言ってるんだから。逆にわかられたら困るんだ。でもこの言葉の意味を、いつか必ずママンはわかる日がくる。わかるのはママンだけでいい。他の人には不要な情報だからね。それがつまり【統合】というものなんだ」
「いつかって……それはいつなの?」
「ねぇ……話、ちゃんと聞いてる?質問には答えない。答えられないんだから。今から記憶を触るけれど、それは破壊じゃない、停止だよ?だからいつかは必ず再始動が出来る」
「記憶を、止める………」
ルナは質問したい衝動に駆られながら、自分に問いかける様に、言葉を反芻してみせました。
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『アドナイ』
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「エンディに会いたくてここに来たのに、どうしてかしら……来ては行けなかった気もするの。ホワイトは……ホワイトはあのオレンジ色の何かの事も知っているのかしら……」
「当たり前じゃない。ホワイトがナミをオレンジ色の鉱石に閉じ込めたんだから」
「閉じ込めた………」
「そう閉じ込めた。封印しなければ、核による汚染で、この宇宙周辺の星々が大変な事になっていたからね。ホワイトは最善を尽くしただけだよ?そこだけは履き違えないで?」
「えぇ……ホワイトの事を信じているわ」
「まぁ信じる云々は、ボクにはどうだっていい事だよママン。ボクはママンとパパンを元のソウルに戻す為に、生まれてきたにすぎないんだから」
「元に……戻す………」
「そうだよ?ナミ(ルナ)とパパン(エンディ)は同一のソウルなんだ。マーブルになったり、2つの色になったり、その都度形態を変える事が出来た」
「出来た………?じゃあ今は出来ないの?」
「そうだよママン」
エンディは目を閉じると、静かに、そして力強く歌を歌い始めました。
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女神(めがみ)が男神(おがみ)を飲み込んだ
男神は女神と溶けあって
マーブルとなり、唯一神となった
けれどその女神は
巧妙な複製機械だったから
本当の女神はオレンジ色に
封印された
唯一神は探し求めた
自分本来を
本質を
唯一神は探し求めた
けれどどこにも、見つからなかった
だからその場所ごと吹き飛ばし
散り散りに
宇宙の藻屑となったあと
磁石を使って拾い集め
マーブルに
溶けあおうと、心に決めた
どれだけ時がかかっても
元はひとつの存在だから
必ず戻れる、唯一だから
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「エンディは、歌もとても上手いのね。もっと聞かせてくれないかしら」
「いいよ、ルナ。ところでルナ、パパンとかナミとか、こんな言葉を聞いた事ある?」
「何?初めて聞いたわ?」
「そう………ならいいんだ。じゃあ歌うからさ、目を閉じて聞いてくれない?」
「えぇ……わかったわ」
ルナはそう言って目を閉じると、そのまま気を失い、後ろ向きに倒れてしまいました。
エンディはルナの姿を見つめながら、6枚の羽を背中の中に、しまい込みました。
そして、ゆっくりとこう言いました。
「大丈夫だよママン。もうその着地点は構築されたとジュピターが教えてくれている。次に僕がママンの事をママンと呼ぶのは、650万年後のアースだけどね」
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