第13話~お前の味方~




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「入りなさい」



ホワイトに呼ばれたルナは、少し緊張した面持ちで部屋の中へと入ると、いつも通り壁面の前に立ちました。




「今日は、どれくらいの魂を回収予定なんです?かなり、爆発スピードは抑えられてると聞いてるけれど」



ルナは淡々と、そしてホワイトとは決して目を合わせずにそう言いました。



「何事も油断大敵だからね」



ホワイトはそう言うと立ち上がり、壁面に手を翳しました。すると、またどこかの戦場の景色がひろがり、そこではいつも通りの殺し合いが繰り広げられていました。




「酷い………」




ルナは、目の前のその光景に対して発した言葉なのか、今からその魂を回収する自分自身に対しての言葉なのか、もはやわからない心持ちで、その全てに嫌気が差していました。



「では、取りかかって欲しい。我々の星の為に」



ホワイトが開始の言葉を投げると、ルナはおずおずとした態度でホワイトの方を向き、今度は両目をしっかりと見つめました。



「これが終わったら……森に行ってもいい?」


「森ではなく、マリア達と過ごしなさい」


「私、森が好きなの……!だから、お願い…!」


「森が……好き?」


「そうよ、ホワイトも知ってるじゃない!」


「ルナ……この星は今とても危うい」


「知ってるわ、そんな事!」


「だから、お前を生み出した。あらゆる【ちから】を与えて生み出したのだ」


「そうね、皆が恐れる様な【ちから】を、永遠に与えたのはホワイト、あなただわ……」


ルナは射る様な眼差しをホワイトに向けると、唇を噛み締めました。


ホワイトは少し寂しそうに、ゆっくりと数回頷きました。


「わかった、いいだろう。森へ行ってくるといい。ただし……」


「ただし?」


「カイネと共に行ってきなさい、それならば許そう」


ルナは一瞬残念な表情をしたものの、直ぐ様その気持ちを隠すかの様に、満面の笑顔で顔を包み込むと、夫人らしく一礼のポーズで、ホワイトに感謝の心を現しました。


「では、早速始めるわ……これが私の使命だもの……」


ルナは強い意思を瞳に宿すと、強く祈り始めました。


戦場では次々と人々が倒れ、そして肉体から離れた魂達は上空へと舞い上がっていきました。










「何?やっと、私の出番なのかしら?」



ホワイトに呼ばれたカイネは、猫を抱いて部屋の中へと入ってきました。



「そうではない、ルナの付き添いで森へ行って欲しいのだ」


「森へ?ルナと?何故私が?」


「1人では色々と心配な状態だからね」



ホワイトの意味深な言葉を受け取ったカイネが、前方に視線をやると、ルナが苦しそうにその場にうずくまっていました。


「ちからを使いすぎている……まぁ、私からするとホワイトにそこまで求められて、羨ましい限りだけど」


カイネはルナに冷たい視線を落とすと、その場で猫を撫で始めました。


「塩梅はわかっている。だから、ルナが落ち着いたら癒しの為に、森へ連れていって欲しい」


「つまらない命令……まぁいいわ。ルナ行きましょう、今すぐに」


カイネは強引にルナの左腕に手をかけると、無理矢理その場に立ち上がらせました。


「カイネ、有り難う……」


ルナはヨロヨロとした足取りながらも、カイネに連れられて森へと向かったのでした。









「やぁ!ルナ!久しぶりだね。カイネ夫人と一緒だなんて、どうしたんだい?」


森の入口では、ケンタウルスのシャドが腰をおろして寛いでいました。


「先日も此処に来たのだけど、会えなかったからシャドに会いに来たのよ」


ルナはそう微笑むと、森の奥へと目をやりました。


「あぁ……あの日はみんなで、宇宙に飛び出て遊びに行っていたからね」


ルナは慌てて視線をシャドに戻しながら「宇宙の??どこに?」と、問いかけました。





「少し遠いんだけどね。前にも話をした事があるアースって星だよ。まぁ、具体的な事を聞いても、わからないだろうけどさ」


「アース……前にも聞いた事があったかしら?ダメね、最近何だか忘れっぽくて。それにしても、そんな星があるのね。星の外側まで、駆けていけるなんて……本当に羨ましい」


ルナが心から羨ましそうに呟くと、正反対にカイネは既に帰りたいと言わんばかりな素振りで、その場に退屈そうに座り込みました。


すると、宮殿の方角から青い鳥が飛んでくると、咥えていた小さな野苺の実を、カイネの口へと差し出しました。




「これを私に?美味しそう、頂くわ」


カイネはその実を早速、美味しそうに食べ始めました。すると突然、全身の力が抜ける様に倒れこむと、その場で眠ってしまったのでした。


「こ、これは……!?」


ルナとシャドがとても驚いていると、青い鳥はパキラに姿をいつの間にか変えていて、そこに立っていました。


「シャド、少しルナとふたりきりにして欲しい」


パキラのいきなりの言葉にシャドは困惑しながらも、「またあとでね」とルナに告げて、草原を駆けていってしまいました。


眠り続けるカイネを横目に、ふたりきりになると

早速パキラがこう促してきました。


「さぁ、森の奥へと行ってくるといい」


「パキラ……どうしてここまでしてくれるの?でも、本当に有り難う!」


ルナは戸惑いながらも、エンディに会える高揚感で感情を抑える事が出来ず、声をうわずらせました。


「言ったはずだよ?、私はお前の味方だって」


ルナは嬉しそうに微笑むと、森の奥へと急いで向かっていったのでした。






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