第296話 肉

ちょっとした記念日に外食するのもいいのだが、そういうのにちょうどいい相応しいお店が近辺で見つからない田舎住みとしては、たまには手の込んだものを作ろうかなということになりがち。


まだ子どもが家に居る頃、夫の誕生日にビーフシチューを作ろうということになった。

ルゥをスーパーで購入して作るのではなく、もうちょっとだけ時間がかかるものを。

お肉も煮込みに合った頬肉を用意した方がいいということで、お肉屋さんを何軒か回ってみたが、どこも扱っていないと。


困ったのでネット通販の店舗から購入した。


こんな感じで、思ったようなお肉はぱっと入手できないのが田舎なのである。


ハンバーグを作ったり、カツを作ったり、唐揚げを作ったり、そういうお肉はスーパーに置いてあるのだが、変わったものを作ろうとなるとどこにも置いていないのだ。


車で1時間かかるような場所のお肉屋さんにもなかった。

自社牧場があるということだったから、全部の部位を売っているのかと最後の頼みで行ってみたのに。


今でこそステーキ肉はスーパーでも置くようになったけれど、田舎の定番商品になるまで長かったよ。

セールで売り切れとかではなくて、本当に新婚時代なんかはそういうコーナーがなかったのよ。

細切れはあっても。


お肉の扱いが豊富なスーパーが進出してきて、ワクワクしながら見に行ったが、やはり頬肉はなかった。

街の店舗だったら置いてあるのかしら。


ちなみにネット通販で買った頬肉を使ったシチューは美味しかった。

ワインもどんどん煮詰めていって、本格的な味に仕上がった。

でも、もう作らないとは思う。

通販で買うのも、作るのも大変だったので。

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