第87話 病院にて
うちは子どもが二人。
上の子の学年は地獄で、下の子の学年は天国だった。
子どもの話ではなく、大人、保護者の話。
上の子も下の子も同じ学年だった保護者は、下の子の学年の集まりでは
とても機嫌よく挨拶して話もするのだが、上の子の学年の集まりでは
挨拶をしているところを誰かに見られるのもイヤなのか、絶対に近づいては
こないし、挨拶も無視だったり。
人それぞれ事情もあるだろうしと思い、特に気にせず、最低限の付き合いを
してきた。
下の子の学年はリーダー格の保護者が人格者で爽やかな人だった。
上の子の方も実はそうなんだけれど、いわゆるボスママというのが存在して
暗躍していたから、私にとってはいい学年とは思えなかった。
上の子の学年も、地元の人からすると「学生時代に生徒会に入って活動していた
賢くていい人」がいたのだが、私が挨拶しても完全無視、一緒にPTAの仕事していても会話も無視という、パーフェクト無視オッサンが存在したのだ。
こっちも元々は生徒会には立候補するほどは真面目ではないものの、ずっと学級委員などをやってきたような普通よりは真面目で誠実であろうと思っている人間である。
似たような気質の人なんだろうなとうっすら期待したのがバカだった。
すごいな、どこまで無視するんだろう?と、会ったら毎回大きな声で元気よく
挨拶してみた。
子どもは付き合いがまああったから、挨拶なしとはいかないだろう。
みんなにも聞こえるくらい大きな声で「こんにちはー」。
一回も返ってこなかったよ。敵ながらあっぱれ。
90°ぷいっと向こうをむくオバサンも面白いが、こっちは見えてない聞こえてないというフリなので、それも面白い。
このオッサンの奥方はうちのことをあることないこと言いふらすオバサンの筆頭で
それを恥じているのかな?とも思ったが、それなら謝るだろうし違うなあ。
子どもが高校に上がる時に付き合いが切れてすっきり。
奥方の方は、その後、とある病院でばったり出会って挨拶された。
私は下の子の付き添いでその病院へ行っていて、学校への連絡をどうするかとか
子どもと話をしていたので、自分に声がかけられているのを気付くのに
やや時間がかかった。かかったうえに目の前にいるのが奥方でびっくり。
「あ、こんにちは」(私)
挨拶さえすれば、なんか急に仲良くしてもらえると思っていたようで
挨拶を返したら奥方は私からの会話待ちの状態に入った。
おわかりのように、奥方の夫はあのオッサン。
奥方も私とほぼ喋らないくせにあることないこと言ってまわるデマゴーグ。
会話、しますか? それも私からふる?
しませんよね。
下の子と部活はどうするかとかのような話を再開した。
待ちの姿勢の奥方。挨拶はしたのだから十分に義理は果たした。
お引き取り願おう。
奥方の夫のこれまでの態度を見習ってみた。
共通の会話なんて既にないし、この先の彼女のネタになるような
うちの話題を提供する気もない。
なので、挨拶以降は彼女を見ないし、会話もしない。
会計で呼ばれて、そのまま子どもと帰ってきた。
なんか自分の記憶の片隅にぽかんとした顔があるが、気にしないよ。
友達じゃないのだもの。挨拶したらそれで十分さ。
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