第79話「都会風やめて」のニュース

福井県池田町の広報誌に、「池田暮らしの七か条」というものが掲載されたそうだ。


街からの移住者への心得というもので、思ったよりも柔らかなものだったが、

案の定「都会風やめて」のあたりが問題になったよう。


街に長く住んでいて、そちらのやり方の方が馴染んでいるのだから、何をやっても

何を訴えても「都会風」ということになるんだろう。

それに対して「やめて」というのは、逆に「田舎を押し付けないで」と言われても

仕方ない気がするけれど。


「品定めされることは自然です」の言い切りの方が恐ろしい。

新しい人がやってきてどんな人なのか興味を持って接するので、ちょっとおせっかいになるかもしれませんが我慢してね、みたいな言い方にならないところに本音が見える。


過疎地で街から若い新しい人が入ってくるのはありがたいだろうという

移住者の傲慢さもいけないとは思うが、住人として認めてやれるか監視してるよ、

品定めされるのは覚悟しておけというのは、さすがにどうなんだろう。


双方で「品定め」はしている。

移住者も自分がこれから気持ちよく暮らせるだろうかと地域を「品定め」するし、

田舎の方も移住者が地域に馴染んでいける人なんだろうかと「品定め」する。


地域行事に熱心に参加していれば早く馴染むことはできるだろうが、ちょっとでも

余計な口をはさめば厄介者とされるし、黙って重労働ばかり任されるのでは

移住者としては面白くないだろう。


どこの田舎もその「池田暮らしの七か条」をつきつけている。

はっきりと文章化して配布したりはしていないが。


本当に真剣に街から移住者に来てほしいのであれば、田舎の方の意識を変える必要があると思うよ。

こっちからは田舎のやり方のままガンガン接するからお前らがついてこいよでは

あなた方の子どもや孫が田舎を出たように移住者も出ていくだけ。

移住者に媚びる必要はないが、節度を越えた好奇心で距離を詰めすぎたり、

地域の立場が下だから何でもこちらのいうことを聞くべきだという思い込みを

なくすことが大切ではなかろうか。


うちの隣の地区の話だけれど、うちの子と同年代の子の母親たちが、毎週毎週

ランチ会を続けているそうだ。

仲が本当にいいのかもわからないが、それをきいても羨ましいとかいう気持ちではなく、「怖い」と思った。

メンバー抜けたら、残ったメンバーで悪口三昧になるんだろうなあ。

そんな他人と毎週ご飯食べるより、家族で今話題の回転ずしとかに行く方が楽しそう。


人と人との距離の近さに我慢できる人だけが移住者として認められるのだろうね。

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