第77話 とても嬉しかった話

まだ夫と結婚する前の話。


結婚式の招待状を出すにあたって、仕事が忙しかった夫(まだ彼氏だ)は

招待状に宛名も書けていない状態にあった。

それで私が夫の元に行って、宛名を書いて郵便局に持っていくということになった。


最寄りの郵便局の場所はわかっていた。

わかっていたが、何キロ先なのかはわかっていなかった。


車でそれほどかからなかったので、あまり考えずに散歩がてら出かけた。


路線バスのバス停があったなと思いだして、バス停の時刻表を見ると

日に数本しか走っておらず、既に朝のバスは出ていた。


仕方ないなと思いながら、夫が車で走っていた道の路側帯を歩く。

歩いても歩いても、郵便局近くの風景にならない。


そんな私を車が追い越していく。


なんとか汗だくになりながらも郵便局に着いて、招待状を出す手続きを終えた。


さすがに喉が渇いたので、近くにある小さなスーパーで飲み物を買った。

帰りも同じ道を歩くのかと思うと気が遠くなった。


スーパー前で一休みしていると、行きに私を追い越していった車から

ご夫婦が降りてこられて

「どこの人?どこに行くの?大丈夫?」と声をかけられた。


田舎の道を歩く人、それも知らない人だから、道に迷ったのかと心配されたようだった。


事情を説明して、夫の住所を言うと

「それは大変。遠いから車に乗って。送っていくよ。」と

私を怪しむことなく乗せてくれたのだ。



数年後、そのご夫婦のお孫さんとうちの子が同級生ということがわかり、

こんなことがあったよ、ありがとうともう一度お礼を言うことができた。



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