第69話 生々しい
気分転換に本当にたまに近所を散歩したりすると、ご近所のおばあちゃんに
捕まっていた。
おばあちゃんやおじいちゃんは、天気がいいと定期的に散歩に出ている。
私はそのジャマにならないように様子を見ながら出かけていた。
比較的若い方はそうでもないのだが、一人暮らしで高齢の方ほど私を家に
なかなか帰してくれないのだ。
ああ、それは前にも聞きましたよというような話、全然知らない人の話、
別に私が聞かなくてもなあという話が続く。長い。
こちらも後に用事がない時ならそれほど気にはならないが、そろそろ洗濯物を
取り込みたいとか子どもが帰ってくる時間が迫っているとなると、
どう切り上げようかと悩む。
私が聞いていて困った話は、一人暮らしの高齢者どうしの「あの人はその人に
色目を使っている」という話だった。
登場人物みんな私から見たら自分の祖母くらいの年齢で、それぞれに連れ合いを
亡くしている人たちだから、何をどうやったらそういう話になるのか、現実に
そうなのかわからない上に、どう返答したら正解なのかと脂汗が出た。
みんな一人暮らしで近所に住んでるんだから、仲良くお茶でも飲んだらいいじゃないかと、当時の私は思ったのだが、介護施設内でも異性は異性で、そういった争いもあると聞くと、今になってそういう色恋事の話をされていたのかと気づく。
正直に言うと、少し認知症が入ってきておかしくなってきているのかなとその時は
思って対応していたのだ。
一人のおじいさんを取り合っていて、片方は「私の方が昔からの付き合い。あっちは気を惹こうとしてうろうろうろついて気味が悪い。」と言い、もう片方は「私の方が仲がいい。あっちは昔から気が強くて意地悪だ。」と言う。
面倒なので、外へ出る時はおばあさんたちがいないか確かめて出て、早足で帰宅するようになった。
今はどちらも介護施設に入っていると聞く。
同じ施設ではないといいのだけれど。
おじいさんは鬼籍に入っている。
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