第42話 ダンジョン従魔事情

 朝起きると、ノートパソコンからピピピピっと音が鳴っていた。

 何事か確認すると、緊急アンケート調査と表示されていた。


 クリックすると音が鳴り止み、アンケートが表示された。


 ザッと見る感じ、従魔に関するアンケートの様だ。


【従魔に対する過度な行いを確認しております。テイムの解除は双方の了承が必要です。ですがダンジョンでは逃げ場がありません。従魔の中には過度な扱いに耐えかねて解放を望む者が現れております。そこで、皆様にアンケートを行います。賛成が一定数を超えた場合、速やかに対応を行いますのでご了承ください】


 あー、結構な数の配信で酷いのあったからなぁ。

 陵辱配信とか、ドS配信とか、見たら不快になる配信やってたな。

 配信せずに酷いことしてる人もいるんだろうなぁ……。

 それで、このアンケートか。

 回答は、『はい』か『いいえ』だな。

 じゃあ、回答していきますかね。



1、貴方は従魔が好きですか?

『はい』


2、自分の従魔には何をしても良いとお考えですか?

『いいえ』


3、過度な行いが行われた結果、従魔が解放を願った場合、解放しても構いませんか?

『はい』


4、解放された従魔をどのように扱えば良いか、何かお考えがあればお書きください。

『従魔だけの街を作る。そこに行けるのは、従魔に酷いことをしていない者に限定する。従魔のやりたいことが出来るようにしてあげると良いかも知れない。例えば、鍛治、家事、農耕、酪農、お店(風俗含む)など。お金については、Dポイントや魔石でいいと思う。』


 ま、こんなところでいいでしょ、完了っと。


 完了をクリックすると、【回答ありがとうございました】と表示されていつもの画面に戻った。


 その後、異世界組に朝食を届け、俺は、ダンジョンでみんなと朝食を食べた。

 ノートパソコンが鳴っていたのは何だったのかと聞かれたので、アンケートの話をした。

 そんな事になっている従魔がいた事に、みんな悲しげな表情をしていた。

 その時、ノートパソコンが再び、ピピピピっと鳴り出した。


 俺達は、ノートパソコンを確認しに行くと、画面に【アンケート結果】と表示されていた。

 それをクリックし内容を確認する。


【解放を賛成する人が一定数を超えましたので、解放を望んでいた従魔を解放しました。それに伴い、従魔の街を作り、解放を望んだ従魔はそちらに転移されました。従魔達が落ち着くまで、この街への立ち入りは出来ません。ですが、選ばれた数人のみアプリがインストールされますので、従魔が落ち着くための協力をしていただきます】


 協力……選ばれた人は大変だろうなと思いながら、表示されていた画面を閉じると、従魔の街がインストールされていた。


「あ、マスター選ばれたんですね! マスターならきっと大丈夫です!」


「シゲオさん、なんとかしてあげてね!」


「ご主人様なら大丈夫よぉ」


 せっちゃんは言葉なくサムズアップしていた。


 みんなの信頼が高いです。

 俺は内心ため息を吐きながら、やれるだけやってみるよと言ったが、たぶん顔が引き攣っていたと思う。


 俺は、準備を済ませると、スウェット姿で従魔アプリをクリックする。


 クリックすると、【従魔は連れて行けませんので、ご了承ください。また従魔の街で死んだ場合、従魔の街でリスポーンします】と表示された。

 

 みんなに行ってくると声をかけて、従魔の街へ向かった。


 そこは、快晴の空に、緑の絨毯が広がっているような草原だった。

 見渡すと、結構な数の従魔いるのが分かった。

 歩き出そうとしたとき、後ろに気配がした。

 振り返ると、おじ様がいた。


「あ、おじ様だ」


「ん? やぁ。君も選ばれた人だね?」


「そ、そうみたいです。あ! ドラゴンに困っていた時、ポイント助かりました!」


「あぁ、あの時の……無事に進めているようで何よりだよ」


「その後も、おじ様からの情報、助かってます。いつも、ありがとうございます」


「そう言ってくれると嬉しいね。どういたしまして。さて、我々は何をすればいいのだろうね」


「そうですよね。何もないですし……」


 俺がおじ様と話していると突然頭の中に声が響いた。


『ようこそおいでくださいました。私は従魔の街の管理者です。ひとまず従魔達のもとへ行きましょう』


 周りを見ると、茶色のショート、金色の瞳を持つ、中学生くらいの子がいた。

 中性的な整った顔立ちをしていて、白い貫頭衣を着ている。


 管理者は、俺達の有無を聞かずに従魔のもとへ歩き出したので、俺達も後についていく。


 従魔達は、座り込む者、寝転んでいる者、虚な瞳をして立ちすくむ者と様々だった。

 中には、欠損している者もいた。


「これは、酷いですね……」


「あぁ、思っていた以上だね」


『私は管理者として生み出された存在です。ここにきた元従魔達は、私がテイムしている状態となっています。ですが私は、従魔達の感情がわかりません。必要な物があれば言ってください』


 ホムンクルス的な存在なのかな?

 とりあえず俺が出来ることをしよう。


「おじ様、俺は欠損している子達を回復してきますね」


「あぁ、そっちは頼むよ。私は管理者と話をしていよう」


 俺は、欠損している従魔達を回復していく。

 その時に様々な反応があった。

 回復しても虚な瞳をして座り込んでいるままだったり、近づいただけで怯えた状態になってしまったり、小さな声でありがとうと言ってくれたりと、この子達の今までが相当辛いものだったのがよくわかった。


 みんな汚れも酷かったので、浄化をかけて周り、区切りがついたところで、おじ様達のもとへ戻った。


「おじ様、一通り診てきました」


「あぁ、ありがとう。こちらも少しは話が出来た。これから従魔達の寝床となる建物を建てるところだよ」


「そうなんですね。あ、何人か近づいただけで怯えた状態になった子がいました」


「どの子だい?」


 俺は、怯えた子をおじ様に教える。

 その後、おじ様と管理者が何かを話すと、目の前に大きな宿屋のような建物が現れた。


 中に入ると、一階は食堂で吹き抜けになっており、そこから2階を見ると個室がいくつもある造りになっていた。


 俺達は手分けして、従魔達を食堂へと入ってもらった。

 全員が席に座ったので、この場は、おじ様に任せて、俺は簡単な温かいスープでも作っておこう。


 キッチンに向かうと、色々な材料が揃っていたので、コンソメスープの素、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、ベーコンで、ポトフを作った。

 バターロールもあったので、ポトフと一緒に、みんなに配って行った。


「みんな温かいうちに食べよう。せっかく、あー……」


「あ、俺シゲオって言います。名乗るの遅くなってすみません」


「いやいや、私も名乗ってなかったからね。私は、マコトだ。今まで通り、おじ様で構わないよ」


「分かりました!」


「っと、さぁみんなシゲオ君がせっかく作ってくれたんだ、温かいうちに食べよう」


 そうおじ様が声をかけると、ポツリポツリと、従魔達がゆっくり食べ出した。


 すると、啜り泣くような声が、ちらほらと聞こえ出した。


 おじ様と頷き合い、そのまま静かな時間が流れていった。

 しばらくすると、食べ終わる者もいたので、おかわりもあることを伝えると、恐る恐るおかわりをもらう者も現れた。


 みんなが食べ終わった後は、解散し、それぞれ個室に入っていった。


「ふぅ……シゲオ君お疲れ様」


「お疲れ様でした。かなり酷い状態ですよね」


「そうだね。これは時間がかかりそうだよ。なにか案はあるかい?」


「そうですね……昔テレビで、ペット療法って聞いたことがありますね。あとは土いじりですかね。人にもよるとは思いますが、俺は日本で疲れた時は、畑で何か育てて、世話をして、実がなったら食べるってことをして癒されてましたね。あとは花ですかね。ラベンダーの香りはリラックス効果があるって聞きましたし、個人的には桜がみたいですけどね」


「なるほど、すぐに出来そうなのは畑と花かな。私も色々考えてみるよ。管理者よ、畑と花を用意出来るか?」

 

『可能です……用意しました』


 仕事が早いねぇ。

 ここの気温的に春から夏ってところかな。

 なら、ミニトマトやラディッシュ、二十日大根とか、栽培が簡単なものからやってみても良いかも知れない。

 そのことを、おじ様と管理者さんに話しておく。

 2人とも了承してくれて、明日になって、出来る者からやってみようという話になった。


 あと、うちには桜がいるので、オーク汁を明日持ってくることを話した。

 おじ様と管理者さんは、ご飯と鳥の唐揚げを用意してくれるらしい。


 とりあえずは、温かくて美味しい料理と、ぐっすり眠れる環境で様子を見ていくしかないかな。

 もしかしたら、おじ様が何か情報を持ってきてくれるかも知れないけど。


 今日のところは、ここまでにして、俺達も解散した。


 ダンジョンの部屋に戻ってくると、みんなに心配された。

 どうやら、顔色が悪かったらしい。

 思っていた以上に酷い状態であることを伝え、桜には明日持っていくためのオーク汁を作ってもらった。


 俺は、みんなをハグして、これからも大切にしていくからねっと声をかけていった。

 異世界組のところに行って、同じように伝えた。

 何事かと聞かれたけど、向こうの世界で色々とね、と誤魔化しておいた。


 桜も、他のみんなも俺を元気づけようといつもより明るく振る舞ってくれていた。

 夕食になり、煮カツ丼を持って、異世界組と一緒に食べた。


 みんなの優しさが心に染みた。


 今日は、色々あったけど、みんなのおかげで、ゆっくり眠れそうだ。





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現在の主人公装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

ウエットスーツ一式


ミスリルの短剣

ミスリルの剣

ミスリルのカイトシールド

ミスリルコンポジットボウ

ミスリルハーフプレートメイル

ミスリルアームガード

ミスリルグリーブ

ウルフマント

リザードマンの皮手袋

スノーシュー

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スキル一覧


テイム

体術

短剣術

長剣術 

盾術 

弓術

魔力

魔力操作  

魔力向上 

上級回復魔法

(回復魔法には、解毒などの魔法も含む)

生活魔法

補助魔法

身体強化

腕力上昇 

脚力上昇 

体力向上 

回避補正

鷹の目

鑑定

錬金術

収納

矢弾作成

水中行動

気配察知

異世界言語

冷寒耐性

熱暑耐性

ダンジョン帰還

遮音結界

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持ち物一覧


若返りの薬

チェーンソー

ミスリルの両手剣

ミスリルの槍

ミスリルタワーシールド

ミスリルの腕輪

ガーネットとミスリルのネックレス

隠者のローブ

ツルハシ 3本

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設備一覧

内装 ロッジ風

初心者物干しセット

鍛治設備一式

小さな個室

トイレ

脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)

冷蔵庫

キッチン設備一式

大きな座卓一式

配信用カメラ

ブルーレイ対応液晶テレビ

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従魔一覧


ヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)

念話、食事

ドワーフ(ラズ)

鍛治能力向上

リリス(トワさん)

拘束魔法、拘束魔法強化

ヴァンパイア(桜)

異空間収納、料理


アンナ 赤髪ロング (異世界奴隷)

フィオナ 狼人族

リン 狐人族 シロとクロ

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食材等 Dポイント 500

残 Dポイント 67,005

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