第26話 異世界初動

 異世界初期位置は、正面に木製のドアがあり、壁や天井には光苔がある小さな洞窟? 洞穴? で、俺達の後ろには、帰還用の扉があった。


 俺達は正面のドアを開け外に出た。

 

 外に出ると、そこには草原が広がっており、遠くに村が見えた。

 出てきた場所を確認すると、高さ4メートル程の崖が左右に広がっており、左の崖を追って行くと途中から弧を描いて見えなくなり、その先には川が微かに見える。右の崖を追っていくと、森の中に続いていた。


「とりあえず、村に行ってみようか。小さい気配がいくつかあるから、様子見ながら進もう」


 せっちゃんが頷くのを確認して、草原を進む。


 気配があるところを確認すると、小さな角の生えたウサギがいた。

 鑑定によると角ウサギ、まんまだな。

 俺は弓で角ウサギを仕留め、短剣で首を落とし、血抜きしながら村を目指した。


 村の入り口には、槍を持ち鎧を身に着けた40代のおじさんが立っていた。


「そ、そこで止まれ! 何者だ!?」


 おじさんは、槍を構え警戒している。


「私は、シゲオといいます。この子は従魔のゴーレムで、せっちゃんといいます」


「……登録証を」


「これから登録しようと思っているのですが、ここにはギルドはありませんか?」


「あるが……完全武装している奴らを入れるわけにはいかない」


 だいぶ警戒されてるな。何でだ?

 改めて自分達を確認してみる。

 ミスリルの槍とタワーシールドを持ち、大剣を背中に背負っているせっちゃん。

 片手に、ウサギの亡骸を提げ、ミスリル装備一式の俺。


 俺が門番なら、絶対入れたくないね。うん。


「あー、すみません。なら、せっちゃんは村の外で待ってもらって、俺だけギルドに登録させていただくのはどうでしょうか?」


「……応援を呼んでくる。ここで待っていろ」


 そう言っておじさんは、こちらを警戒しつつ、すぐ近くの小屋の扉を叩いた。


 何やら、中の人と話しているようだが、こっちには聞こえない。


 しばらくすると、中から、2人出てきた。

 1人は、おじさんと同い年くらいのおじさん。

 もう1人は、20代くらいの青年だ。


 3人とも警戒は解かないまま、最初のおじさんが声をかけてきた。


「シゲオと言ったか、あんただけ俺と一緒に村に入ってもらう。そっちのゴーレムは外で、この2人に見張らせる。いいか?」


「はい、いいですよ。商業ギルドへ行きたいのですが……」


「わかった、ついてこい。ただ妙な動きはするなよ」


「了解です。じゃあ、せっちゃんは、外で待っててね」


 頷くせっちゃん。

 警戒する残り2人。


 俺は、おじさんについて行く。

 しばらく進むと、硬貨の入った袋の看板がついた木造の建物の前で止まった。


「ここがこの村の商業ギルドだ。その剥き出しの角うさぎはどうにかならんのか?」


「あ……収納しますね」


「ッ! スキル持ちか。武器も収納へ入れてくれ」


「わかりました」


 より一層警戒が上がった気がするけど、しょうがないね。

 俺は、角ウサギと武器を収納へしまう。


 おじさんは、頷き中へと入っていく。

 俺も、おじさんに続き中へ入る。

 建物の中は、両サイドの壁に商品が並んでおり、正面には2つのカウンターがあった。


「いらっしゃいませ。あらソルさん、どうしたんです?」


「あぁ、こいつがここに用があるというので、連れてきた」


「見ない顔ですね? 旅の方ですか?」


「だと思う。武装した奇妙なゴーレムを連れていたため、用心のためについて来たんだ」


「あら、そうだったんですね。改めまして、私は当ギルドで受付を担当しているサラです」


「どうも。私はシゲオといいます」


「当ギルドには、どういったご用件でしょうか?」


「商業ギルドへの登録と、売却をお願いしようと思っています」


「承知いたしました。では、まずこの水晶に触れていただけますか?」


 俺は頷いて、水晶に触れた。

 すると水晶は、青い光を灯した。


 そこで漸くソルおじさんの警戒が解かれた。


「ふぅ、気疲れしたぜ。登録証があればこんな警戒しなくても済んだのによ」


「そうだったんですね。すみません色々常識に疎くて……」


「いや、いい。冒険者なり旅する者なり、色々な事情があるからな。俺はここで戻るが、もしあのゴーレムを村に入れるなら、武装は収納してくれよ」


「はい、わかりました。ご迷惑をおかけしました。ありがとうございます」


「丁寧なヤツだな。ま、問題は起こすんじゃねぇぞ。じゃあな」


 そう言ってソルおじさんは出て行った。


 水晶を鑑定すると、犯罪鑑定の水晶と出た。

 犯罪歴とかを調べる魔道具のようだ。


「では、シゲオ様。こちらの用紙に記入をお願いします」

 

 その用紙には、氏名や従魔、スキルについて記入する欄があった。


 日本語で記入していいのか悩みながら、記入してみると、日本語ではない何かに変換された文字を書いていた。

 異世界言語のおかげかな?


「はい。ありがとうございます。収納スキルですか。良いスキルをお持ちですね。では登録料金貨1枚お願い致します」


「あ、すみません。金貨1枚分の商品でも良いですか?」


「構いませんが……金貨1枚となると相当な物になりますが……」


「うーん、塩と砂糖があるんですが、どうですかね?」


「ッ!? さ、砂糖で御座いますか……見せていただいてもよろしいですか?」


 周りをチラッと確認すると、ここには俺と受付の人しかいないから大丈夫と判断して、1キロずつに包装された砂糖を5つ収納から取り出した。


「こ、これは!? とても上質な砂糖でございますね。何か透明な物に包まれていますが……」


「売却するときは、この包装から何か容器に移してお売りしますので、容器をお願いしてもいいですか?」


「は、はい。少々お待ちください」


 そう言って受付のサラさんは、小さな壺をもってきた。


 俺はその壺に、砂糖を入れた。


 サラさんは、その砂糖を味見し、目を見開き、固まった。


「あの、サラさん。どうでしょうか? どれ程買ってくれますか?」


「ハッ! す、すみません……そうですね、1キロ買い取らせたいただきます」


 単位は異世界言語のおかげか分かりやすくていいな。

 でも、あんま買い取ってくれないんだね。


「分かりました。それでお願いします」


「ありがとうございます。容器を持ってきますので少々お待ちください」


 今度は、ガラス? で出来た瓶を持ってきた。

 不思議そうに俺が眺めているとサラさんが教えてくれた。


「これは、密封魔道具ですね。砂糖などは、湿気があると固まってしまいますので。ではこちらに入れてください。その間にお金を準備してきます」


 俺は、こぼれないように砂糖を容器に入れていった。

 丁度入れ終わる時、サラさんが戻ってきた。


「では、登録料の金貨1枚を差し引きまして、金貨1枚と銀貨50枚になります。ご確認ください。それとこちらが登録証になります」


 おぉ、1キロでこんなになるんだ。

 さすがおじ様情報だ。

 登録証は、カードで、氏名と従魔が記載されていた。

 これも魔道具らしい。


「はい、確かに。あと聞きたいんですが、奴隷って一般的ですか?」


「そうですね……行商の護衛や商店の下働き等、奴隷を購入される方はいらっしゃいますね。大きな街や王都に行かなければ購入することは難しいかと思います」


「なるほど……ここから1番近い場所だとどこでしょうか?」


「北の街でしょうか。馬車で2日ほどの距離にありますよ」


 その後も少し雑談をしつつ、塩も売ることにした。


 2キロで金貨1枚になった。


 俺は、サラさんにお礼を言って、せっちゃんを迎えに行った。

 

 せっちゃんは、ソルおじさんと並んで立っていた。


「ソルさん、戻りました。せっちゃん連れて行きますね。あと冒険者ギルドはどこです?」


「おう、冒険者ギルドは、そこだ」


 ソルおじさんは、剣が交差している看板がついた建物を指差した。


 俺は、せっちゃんの装備を収納し、ソルさんにお礼を言って冒険者ギルドに入って行った。


 中は、掲示板とカウンターが2つというシンプルな内装となっており、冒険者らしき人の姿はなかった。


 こちらは、サクサクっと登録が済み、注意事項を聞き、銅で出来たドックタグをもらった。

 あと、角ウサギを解体してもらった。

 角ウサギの皮と相殺でやってくれた。

 受付嬢と少し雑談し、周囲の魔物や植物等の情報を手に入れた。

 解体が終わり、俺は肉だけ貰って冒険者ギルドを後にした。


 門番のソルおじさんに挨拶をして、そのまま森へ向かった。


 受付嬢からの情報で、この森には、薬草や魔力茸、食用のキノコや自然薯があるらしい。

 魔物は、スライム、ゴブリン、ウルフがいるとのこと。


 スライムかぁ、ファンタジー小説では有用な魔物だよな。

 雑談の中で、トイレはスライム浄化システムってことがわかったし。

 それを聞けて本当助かったよ。

 本物の中世だと、街を歩けば空から糞尿が降ってくるらしいからな。

 不衛生すぎるよ中世。


 そんなこんなで、各種素材と食用系素材を採取して、門番のソルさんに北に向かう振りをしつつ、街が見えなくなったところで、ダンジョン帰還を発動する。


 これは、従魔に触れていなくても、異世界にいる従魔を連れてダンジョンに帰還するスキルらしい。


 こうして、俺とせっちゃんの第1回異世界散歩は終了した。




——————————————

現在の主人公装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

ウエットスーツ一式


ミスリルの短剣

ミスリルの剣

ミスリルのカイトシールド

ミスリルコンポジットボウ

ミスリルハーフプレートメイル

ミスリルアームガード

ミスリルグリーブ

ウルフマント

リザードマンの皮手袋


—————————————

スキル一覧


テイム

体術

短剣術

長剣術 

盾術 

弓術

魔力

魔力操作  

魔力向上 

上級回復魔法

(回復魔法には、解毒などの魔法も含む)

生活魔法

補助魔法

腕力上昇 

脚力上昇 

体力向上 

回避補正

鷹の目

鑑定

錬金術

収納

矢弾作成

水中行動

気配察知

異世界言語

冷寒耐性

熱暑耐性

ダンジョン帰還

————————————

持ち物一覧


若返りの薬 1本

チェーンソー

ミスリルの両手剣

ミスリルの槍

ミスリルタワーシールド

ミスリルの腕輪

ガーネットとミスリルのネックレス

隠者のローブ

ツルハシ 3本

—————————————

設備一覧

内装 ロッジ風

初心者物干しセット

鍛治設備一式

小さな個室

トイレ

脱衣所付き風呂場(洗濯機、洗面台は脱衣所)

冷蔵庫

キッチン設備一式

大きな座卓一式

配信用カメラ

——————————————

従魔一覧


ヴァルキリー風ゴーレム(せっちゃん)

ロリドワーフ(ラズ)ラズベリーショート

セクシーリリス(トワさん)ゆるふわロングダークレッド

(拘束魔法)

土下座スケルトン(桜)

(異空間収納、料理)

——————————————


残 Dポイント 29,095

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る