第5話 1層攻略から2階層

 久しぶりのベッドで十分な休息をし、8ヶ月ぶりの焼き鮭定食味噌汁付きをじっくり味わい、気力十分な俺は、1層を攻略するためにダンジョンへ入った。


 装備は、初心者の剣、初心者の弓、スウェット、地下足袋である。


 スキルは購入すれば勝手に使える状態になっているらしい。

 なお、取り外しは出来ない。モノによってはオンオフが出来るらしい。

 体術は、身体の動かし方やスタミナ消費、行動全般に効果があるらしい。

 全部おじ様のとこから情報を得た。おじ様有能すぎる。


 ダンジョンに入り、ドラゴンとの死闘の場から真っ直ぐ続く通路を奥へと進むと、黒い両開きの扉が通路を塞いでいた。


 気合い十分な俺は、その扉を押し開けた。


 中はドーム状の空間が広がっており、その中央にはゴツい体格で緑色の肌をした人型モンスターが立っていた。


 ゴブリンは小型らしいので、ホブゴブリンといったところか。


 背丈は2メートルほどで、大きな棍棒を正面に突き立て、両手をその棍棒の上に置いている。  


 俺と目が合ったホブゴブリンは、引きずるようにして両手で棍棒を構えた。

 

 あの感じであれば、動きはそこまで速くなさそうだな。

 

 俺は弓に矢を番え放つ。


 ホブゴブリンは避けることもなく、右肩に命中し、深く刺さった。


「グギャァアアアア」


「そんな重い棍棒を持っているのが悪いんだよ!」


 続けて矢を撃ち続けていると、もう片方の肩、腕、脚と次々に刺さっていく。


 

 グギャグギャ喚いているホブゴブリンのトドメを刺すために、弓から剣に変え、走り近づく。


 身体が軽い。

 これが体術の効果か。


 ホブゴブリンに近づくと、がむしゃらに腕を振り回しだした。

 その隙を掻い潜り、首を狙う。


 ポーンとホブゴブリンの首が飛び、光となって消えていった。


 体術スキルスゲェな。

 スッと動けたし、剣を効率的に振るための身体の動かし方が勝手に出来ていたような気がする。


 そして、ホブよ。自分に見合った装備をせよ……。


 ホブゴブリンのドロップは、魔石と大きな棍棒だった。


 棍棒要らなくなって捨てていったみたいに感じるよ。


 ドロップ品を回収し見渡すと、入り口と反対側に、新たな赤色の扉が現れているのを見つけた。


 棍棒重いな。

 持てなくはないけど、一振りするのも苦労しそうだ。


 俺は、棍棒を引き摺りながら新たな扉を開け、進むと、扉が勝手に閉まり、色が変わった。色が変わった扉に触れると部屋に戻れるらしい。


 早速部屋に戻る。


 棍棒が邪魔なので部屋の角に立てかけておく。


 せっかくなので、Dポイントを確認すると、朝食を考慮して、ホブゴブリンは50だとわかった。少なく感じるが、ゴブリンが5と考えれば多いな。


 そのまま魔石も売り、新たな階層を探索することにした。


 2階層も洞窟タイプで、真っ直ぐ奥へ続いている。


 またしても入り口付近にはモンスターが居らず、ドンドン奥へ進めた。


 すると、先ほどのボス部屋よりも大きく広い空間に出た。


 その空間の中央には、3メートル程の白い石像が腕を組み仁王立ちしていた。


 古代ローマ人の様な服装……トーガを纏っていて、モジャモジャな髭頭な石像だ。


 見た目はまるで、ドラク○のうごく石○のようだな。


 目が合うと、ドンッドンッと足音を立てながら動き出した。


 コイツが特殊個体なのか通常モンスターなのかを判別するために、テイムスキルを使おうと思う。


 おじ様達の検証により、特殊個体をテイムしようとすると、【テイムが出来ないモンスターです】と目の前の空間に表示されるらしい。


 通常モンスターの場合は、【テイムが成功しました】または【テイムが失敗しました】と表示されるらしい。テイムの成功率は、相手の体力によって確率が変わると検証されていた。


「こんなモジャモジャ相手が、初テイムスキルなんて癪だが、判別しないと戦い方を決められないから、しょうがねぇ! いくぞ! 【テイム】」


 体力満タンなんだから、失敗するだろう。


 失敗するよ。


 失敗するよね!?


 そして絶望が現れた。





【テイムに成功しました】



 ていむにせいこうしました?

 せいこう

 性交の間違いじゃなくて?

 成功?

 え……





 気がつくと、真っ白なモジャモジャ髭頭の巨人が俺を見下ろしていた。


「石像さんテイムされちゃったの?」


 ゆっくり頷く石像。


「あ、あぁそうなんだ。あは、あははぁ……」


 この大きな空間には似つかわしくない、小さな乾いた笑い声がこぼれた。



 気持ちを取り戻すのに時間がかかったが、一度部屋に戻ることにした。


 石像さんは、少し屈みながらの移動となりました。


 部屋についたら、真っ直ぐ立てているので、この部屋の空間は、上にだいぶ余裕があるみたいです。


 ノートパソコンを開くと、新たに従魔のアイコンがあった。


 これは、従魔の状態(待機中もしくは同行中)と名前が確認出来るだけものだ。


 現在の従魔の状態は、待機中で、名前は石像さん。


「石像さん……名前になっちゃったのか……これほどまでに可愛げのない塊に……」


 なんかわからんけど、泣いた。



 しばらく泣いてスッキリしたので、石像さんと対話する。


「石像さん、戦闘中だと石像さんって長いので、愛称を考えましょう」


 ゆっくり頷く石像さん。


「うーん、せきさん、せっさん、せき……いっそせっちゃんとか」


 ゆっくり頷く石像さん。


「えっと……せっちゃんが気に入っんですか?」


 ゆっくり頷く石像さん。


 愛称だけは、可愛くなりました。



「じゃあ、せっちゃんこれからよろしくね!」


 石像さん改めて、せっちゃんはサムズアップした。


 なお、せっちゃんは食事・睡眠は、必要ないそうです。


 定位置は、ダンジョン行きの扉が現れる横が、お気に召した様です。まる





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現在の装備一覧


初心者の剣

初心者の木の盾

初心者の弓

地下足袋


初心者物干しセット


テイムスキル

体術スキル


醤油 

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ホブゴブリン Dポイント 50

魔石 Dポイント 50

1日の食事 朝夕変更 Dポイント 20


残 Dポイント 3,140

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