1/3 悟

 今日も図書館も本屋も開いてないけど、気持ちばかり焦ってイライラするから、近くの公園に散歩に行った。

 朝だったから誰もいなかった。正月なのもあるかもしれない。ベンチに座って頭を冷やした。寒かった。

 思えば、アイツが倒れたのはこの公園の前の横断歩道だった。信号を渡っている途中、急に苦しみだしたかと思ったらあっという間にドサッと。


 その時のことを思い出してたら、いつの間にか目の前に女の人が立ってた。

「私、キレイ?」って聞かれた。

 マスクで顔がほとんど見えないからよくわかんないし、どうでも良かった。だから適当に「キレーだと思います」って言った。俺よりは確実に美人な目元だと思ったし。

 そしたら、女の人はマスク外して「これでも?」ってさらに聞いてきた。

 めんどくさい人だなと思った。

 それなら最初からマスク外してから聞いてくればいいじゃん。

 女の人の口はすごく大きくて、耳まで裂けてた。口を閉じてても奥歯まで見えて、そこはスゲーって本気で感心した。声に出てた。

 女の人は「うん?」ってちょっと首を傾げた。

「坊や、素直で可愛いわね。可愛いすぎて食べちゃいたいくらいよ」

 そう言うと、女の人はパカッて口を開けた。大きくて黒い穴が迫ってきた。

「お姉さん、何でも食べられますか」

 って聞いてみた。

「は?」って言われた。


「ねえお姉さん、“呪い”を食べてくれたりしませんか」


 お姉さんは、もっかい「は?」って言った。

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