ユマさんとぺぇくんの年末年始
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
第1話 妖怪・全裸マフラー女
「ユマさん、どうしたの?」
家に帰ると、妻の
「刺激が欲しくて。編んでみた」
夜中になにかしていると思っていたら、マフラーを作っていたのか。
「だからって、全裸の上に巻いても暖かくはならないと思うけど?」
今のユマさんは、全裸である。
天女の衣をイメージしているのか、裸の上に。
見慣れているとはいえ、今の状況は目のやり場に困る。
「ネックウォーマーがあるじゃん。おそろいの」
首に巻いていたネックウォーマーを外して、テーブルに置く。
つい最近、僕たちは青とピンクのネックウォーマーを買ったばかりである。
しかも、選んでくれたのはユマさんだ。
「あれは仕事用っ。こっちは二人でお出かけする用だからぁ」
「それはいいとして。なんで全裸なわけ?」
「ぺぇくんだって、PC組むときは全裸じゃん」
ボクは「
「あれは静電気対策っ。ユマさんのマフラー作りは、静電気関係ないでしょうが。むしろ大発生じゃん」
「年末に間に合わせるの。この長ーいマフラーを二人で巻いて、初詣に行くのー」
「だったら、どうして全裸なのさ?」
「服が絡まっちゃって」
同じ色・形のセーターを着ながら作業していたら、セーターごと編んでしまったらしい。
似た生地を着るから……。
「だったらいっそ、セーターを解いてマフラーにしちゃえって。そしたら、何も着てなかった」
「お客さんが来たら、どうするつもりだったの?」
「ぺぇくんに助けてもらおうと。ムリなら居留守を使うしかなかったよ」
「ていうか、下はどうして裸なの?」
「ぺぇくんが帰ってくるから、サプライズお風呂を」
いやいや、わけわかんない。
お風呂サプライズって、ヒートショックで死んじゃうよ。
「あ、お風呂湧いた。二人で入ろ……ひゃあ!」
立ち上がった瞬間、ユマさんがつんのめった。
長すぎるマフラーに、足を引っ掛けたのだ。
「危ない。ユマさん!」
僕はとっさに、ユマさんを抱きしめる。
ユマさんの色んなところを掴んでしまったが、不可抗力なので許してもらいたい。
「大丈夫、ユマさん?」
「ありがとー」
僕にしがみついたまま、ユマさんは離れようとしない。
「ああ。どうしよう」
ユマさんの身体から、マフラーがスルスルと解けていく。
「どうしたのユマさん」
「ぺぇくん、マフラーよりあったかい」
ユマさんは僕を抱きしめながら、うっとりした顔になる。
「お風呂に入ろう。体中毛玉だらけだよ」
「うん」
身体は清めておかないとね。
数日後には、同じマフラーをして初詣に行くから。
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