第二話「ロボットヒーロー」
=数日後=
都市部に比較的近い防衛戦隊の施設。
今回はロボットヒーローと言う異色のヒーローのお披露目回が行われていた。
一般招待客やマスコミまでも招き入れる辺り自信の程が窺える。
ゴーサイバーはそれの警備任務と、評価試験を兼任する形で駆り出されていた。
茶髪でちょっと髪の毛が飛び跳ね気味な少年、楠木 達也ことサイバーレッドはハートの飾りがついたヘアピンに黒髪のボブカットの少女、桃井 薫(サイバーピンク)と明るめなブラウンのカラーでツインテールとロングヘアーが融合したツーサイドアップの髪の毛の少女、新宮寺 芳香(サイバーブルー)が両脇を固めていた。
さらに後ろでは紫掛かったクールで知的そうな背丈の高い宝塚系美女、佐々木 麗子(サイバーグリーン)や長い黒髪で温和な研究者畑の女性、白墨 マリア。
そして黒髪お下げのクールビューティーな美女、中條 霞(サイバーブラック))や黒髪の美女、空鳴 葵(サイバーウイングス)まで来ていた。
☆
Side 中條 霞
「まったく、浮かれおって――」
と、早速ゴーサイバーの仕切り役の中條 霞が苦言を呈する。
視線の先には両手に花状態の楠木 達也がいた。
麗子とマリアは呆れている様子だった。
傍にいた空鳴 葵は相方の「まあ仕方ないんじゃないかしら?」と言う。
二人は戦隊ヒロインと言うより"軍人が戦隊ヒーローやってます"みたいなかんじの人達であり、戦隊戦士は軍人だけで構成されるべきだと言う考えを持っていて気が合う仲でもある。
同時にその考えから戦隊内部でも反発が大きく、司令に釘を刺されたこともある。
楠木 達也も問題児ではあるがこの二人も別の意味で問題児である。
だが最近、霞は自分の考えに亀裂が入りつつある。
特に外国での船上での一連の出来事で迷いが産まれていた。
元々楠木 達也の功績は凄まじい物だ。
初戦闘でリユニオンの大幹部を撃退。
そして多くのヒーローを屠ったジェノサイザーの改良型をも撃破に多大な貢献など、自分の思想を否定するような――
(どうもいかんな・・・・・・)
それの頭を振り払い、今度はロボットヒーローかと頭を悩ませる。
正直言うとロボットヒーローには反対だ。
極論すれば軍人など不要。
戦いがただのコンピューターゲームと変わらなくなる。
運用を間違えればヒーローと言う名のただの殺戮マシンだ。
それを分かっているのだろうかと思う。
だが霞と葵の影の支援者は「戦力として有益ならアリ」だと考えている部分もある。
これも霞と葵も頭を悩ませている事だった。
そのためにも――都合の良いことは分かってはいるが――今回は頑張って欲しいと思ったのだが――
「あれ? 楠木君どこに行ったんでしょ?」
「なに?」
葵の一言で霞はハッとなる。
楠木 達也は消えていた。
「って、なんだこれは」
そして他のメンバーはマスコミや一般関係者などに押し寄せられて対応に困っていた。
「あの二人もゴーサイバーの人達よね」
「凄い綺麗」
「ねえねえ、写真撮ってもらいましょ?」
そうこうしているウチに二人にも人が集まってきた。
霞と葵はなんだかんだで根っこは軍人である。
一般人の対応をどうすればいいのか分からず、苦笑して対処するほかなかった。
☆
Side楠木 達也
(ああ、引きこもりだった時代が随分懐かしく感じるな~)
などと思いつつ上手く抜け出して一人行動して会場内を彷徨いていた。
マスコミや一般人などが詰めよってきて薫と芳香の二人が硬直した隙を見計らって人のいない場所を探していた。
華特高校や町、サイバックパークではあまり意識しないが達也も、すっかり世間では人気ヒーローの一角なのである。
先日の船上での一件では良い意味でも悪い意味でそれを思い知らされた。
帰った後も散々でなんかもう順調に外堀を埋められて行っている気がしているように達也は感じた。
それはそうと今回のテーマはロボットヒーローであるせいか他の展示物もロボットに関する物が多い。
ある意味サイバックパークの軍事基地版のような様相を呈していた。
「こんなところにいたんですか?」
「ああ、寺門さん!!」
整った顔立ちに鋭い目つき。
堅そうな背広を着ている青年。
寺門 幸緒。
元々は日本の――国防軍(*この世界における日本の国防組織)幕僚本部から派遣された背広組の戦術アドバイザーである。
楠木 達也が前線に出なかった初期の頃、ゴーサイバーの活動黎明期の頃は戦闘に不慣れで研究職の前線指揮官の白墨 マリア、サイバーホワイトを支援していた。
だがジェノサイザーとの最終決戦やその前のサイバックパーク防衛戦ではプロトタイプのゴーサイバーを身に纏って戦ったりとけっしてデスクワーク一辺倒の人物ではない。
モヒカンの宇宙人を撃破後からはゴーサイバーから離れて幕僚本部のお偉方とゴーサイバーとの調整役を担っていおり、戦術アドバイザーは実質サイバーブラックの中條 霞が隊長と兼任する形で行っている。
「工藤司令は元気ですか?」
「ええまあ」
「サイバックパークから離れることになった時は引き留められて、送迎会代わりの飲み会は大変でしたよ・・・・・・」
「確か最初はスパイだと思われてたんでしたっけ?」
「まあそれも強ち間違いではありませんしね。でもなんだかんだで修羅場潜って心を許してくれたんでしょう」
そして寺門 幸緒は周囲を目にやって「少し時間いいですか?」と言った。
☆
場所は人気が少ない関係者以外立ち入り禁止のスタッフルームのような場所だ。
そこで金髪ポニーテールの碧眼爆乳美女、ナオミ・ブレーデルがいた。
ライダースーツ姿ではちきれんばかりの超乳が苦しげに体にフィットした衣装のファスナーから胸の谷間を覗かせている。
相も変わらず非常に目に毒な女性だ。
「ナオミさん? やっぱり来てたんですか?」
「あら? あんまり驚かないのね?」
「まあ、おかげさまで・・・・・・」
ナオミ・ブレーデルの正体は正直分からないし行動も不明な部分も多い。
何かしらの組織に所属するスパイである事しか分かっていない。
だが何だかんだで助けて貰ったり色々と忠告してくれたりしてくれる。
一応油断するなと言われているが達也はどちらかと言うと防衛隊に警戒している。
「先日の豪華客船の事件といい、サイバックパークの事件といい、何が起きてるんですか?」
「新年戦争の時と同じよ。またあの時みたいに今も軍備拡大、増強に余念がない人が沢山いるのよ。それで甘い汁を啜ろうと考えている人達もね」
ナオミは伝えてないが甘い汁を啜ろうとしている人間は一度楠木 達也が戦った人物により狩られているのだがそれを知る由はない。
「寺門さん。この事は司令は?」
「伝えてます。何が起きるか分かりませんが、最悪強硬手段でイベントを中断させるつもりです」
「あ、私今回の一件も裏方に徹するわ。それじゃあね」
そう言ってナオミは出て行った。
「達也君は出来れば何も知らない風に演じてください。予定では確かロボットヒーローとの模擬戦があった筈ですね?」
「ええまあ。中條さんに勝つように言われています」
「・・・・・・ロボットヒーローに勝つのは難しいでしょう」
「え?」
突然の一言に達也は目を丸くする。
☆
寺門 幸緒が言うにはロボットヒーローは内部だけでなく、外部からのスーパーコンピューターの支援を受けて最適な行動パターンを選出するらしい。
そしてデーターには様々な戦隊ヒーローのデーター・・・・・・勿論ゴーサイバーのデーターも含まれているようだ。
ジェノサイザーは単純に強かったが、ロボットヒーローはまた別の意味で反則級の強さを持っているとのことだ。
さらに噂によるとある暗黒組織のデーターや技術がロボットヒーローに導入されているらしい。
なんとも恐ろしい話だと思いつつ施設内を彷徨っていると――
「どこに行ってたんですか?」
と、薫が尋ねる。
「探したのよ?」
芳香も顔を膨らませて言う。
達也は「ごめんごめん」と謝った。
(二人とも日本に帰ってきてから以前にも増して積極的にアプローチするようになったな・・・・・・)
その原因となったあの少女が来たら収集はつくのだろうかと思う。
もっともそうなったらナオミさんがひょっこり現れて引っかき回して来そうな予感がする。
またニット帽の親友に何か言われそうだ。
「おお、達也もいたのか・・・・・・相変わらずだな」
「招待されてたんだね」
「まあな。特別招待って奴らしい。なんか古賀博士さんって人にもさっき会った」
「ははは・・・・・・」
噂をすればなんとやらでニット帽の親友、結城 浩。
すっかり達也のクラスの纏め役が板についている。
「しかし随分派手なイベントだな。また襲撃あるんじゃねえのか?」
「ちょっと――それ言わないで」
「つっても可能性はゼロじゃないだろ。なあに、またあん時みたいにバイクで怪人に特攻とかやらねえからな」
「ああ、そんなこともあったね」
以前も語ったが――ジェノサイザーとの決戦前、華特高校がリユニオンに襲撃された時に結城 浩はバイクで怪人相手に特攻かました事もあった。もちろん、浩はその事で親や教師に大目玉をくらったらしい。
あの時は学園丸ごと総決戦状態で皆、リユニオンと戦ったりもして大変だったが被害は奇跡的に皆無だった。
「ともかく、万が一の時は頼むわ」
「うん。その時は任せて」
達也は即答した。
昔の達也なら考えられなかっただろう。
「ほら、噂をすればなんとやらだ!!」
まるでタイミングを見計らっていたかのようにサイレンが鳴り響く。
そして――
☆
Side 基地司令 黒川 アキラ
若手のエリート。
知的そうなショートヘアに黒髪の男性。
物静かそうな青年。
それが黒川 アキラ司令。
「丁度いいタイミングで来てくれたね。マッチポンプを疑われないか心配なぐらいに」
彼は運用テストのために丁度いいと思って即決して自慢のロボットヒーロー「ジルバーン」を出動させた。
負けるとは微塵と思っていない態度だった。
「私が設計した最強の戦士よ。勝てる奴なんていないわよ」
傍には金髪ツインテールで白衣を身につけた少女科学者「シェリル・ジーニアス」も強気な態度でいた。
「それは頼もしい。君と僕、そしてジルバーンがあれば新年戦争の被害ももっと抑えられただろう」
「当然よ。そのために、悪魔にも魂売ってでも作り上げたんだから」
黒川司令の物静かな口調にシェリルは強気な態度で返す。
「見てなさいリユニオン。あっと言う間にわたしのジルバーンが殲滅させてやるんだから」
☆
Side リユニオン
障害物が無い基地施設外周辺。
リユニオンの戦闘部隊が目にしたのは銀色のロボットヒーロー部隊。
それが五体。
新たらしめのメタルヒーロー的なデザイン。
赤いレーザーブレードと銀色のビームガンを持っている。
「こいつが噂のロボットヒーローか!?」
「かかれ!!」
リユニオンの戦闘員達が立ち向かう。
戦闘員達は果敢に攻撃するもまるで未来予測でもしているかのように攻撃が当たらない。
時折、背後に目がついているかのような超人的な動作を見せるときもある。
連携も完璧でお互いの死角をカバーするように立ち回っていた。
攻撃のタイミングも見事なものでロボットヒーローの一体が相手の攻撃や動きを封じて他のロボットヒーローがトドメを刺すと言う、教科書のような協力攻撃だ。
「あ、あっと言う間に戦闘員達が――」
リユニオンの戦闘員は倒され、怪人との直接戦闘にもつれ込む。
怪人は戦闘員と違って様々な特殊な武器を搭載しているのだが――
「なんだこいつ!? バリアぁ!?」
不意打ち気味の攻撃がバリアで防がれたり、
「は、はやい!?」
目にもとまらぬ超高速移動で相手を翻弄したりする。
しまいには高度な連携プレイの数々で相手を追い詰め、二体の怪人の撃破も時間の問題だった。
☆
Side 基地司令 黒川 アキラ
その様子を司令室から眺めていた。
特に喜んだ様子はなく、「さも当然の結果だ」と言わんばかりに納得がいかなさそうに眺めた。
シェリルも同じような表情だ。
「ジルバーンは確かに強いんだが、一体辺りのコストがなぁ・・・・・・これでは宣伝としてはちと弱い」
「そうね。大方威力偵察って奴でしょうけどこれじゃあね」
と、不満気にシェリルが言う。
「まあ、上の連中も不幸な事件で空席が空いてきてますし、安全を金で買えるなら乗ってくれるでしょう」
「正直不満だけど、まあ仕方ないって割り切るわ。予算さえ確保出来ればもっと強い奴を作ってやるんだから」
「それはそれは頼もしい」
などと穏やかに、そして腹黒さが垣間見える会話を二人はしていた。
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