超電特装ゴーサイバーⅡ
MrR
第一話「戦いの日々」
Side 楠木 達也
昨日もとても大変だった。
おもにサイバーブラックこと中條 霞教官のシゴキが。
だが先日の海外出張での一件以来、中條さんが少し優しくなったようなのを達也は感じていた。
やはり恩師との戦いで色々と思うところがあったのだろうか。
サイバックパークに残った面々も色々とあって実質部外者に全てを委ねる危険な状態だったらしい。
そうした事が立て続けに起きたせいかサイバーウイングスこと空鳴 葵さんや中條さんも強く言えないのだろうか。
まあそれよりも強く逞しく育った嘗てのクラスメイトの爆弾発言に振り回されたりしてプラマイゼロな状況であり、疲れはどうしても溜まる。
昨日も早く寝た。
睡眠スケジュールに限っては健康的とも言える生活を達也は送っていた。
「あ、ボウヤ。目が覚めたのね?」
「うん。どうしてナオミさんがボクのベッドの中で寝ているのかな?」
目が覚めると眼前には金髪爆乳(魔乳?)美女、ナオミ、ブレーデルがベッドの中に潜り込んでいた。
「え? イヤだった?」
「いや、そうじゃなくて。てか笑いながら抱き付いて胸を押し当ててこないでください!」
「えーでも下半身は」
「それ以上言わないで下さい!? てかライダースーツじゃなくて下着姿だし!」
刺激が強すぎる黒の下着上下にガーターベルトと言う組み合わせだった。
それにナオミの刺激が強すぎる肢体が組み合わさる事で童貞殺しの美女と化す。
「私に合うブラがなくてどうしても特注になるのよね~」
「そんな事言ってないで、早くベッドから出て! 変な気起こしたらどうするんですか?」
「やー恐ーい♪ まあその時はお姉さんが優しくリードしてあげるから♪」
「あーもうどうしてボクなんかにここまで夢中になってるんだこの人は!?」
などとドッタンバッタン大騒ぎしていると人と階段を猛スピードで駆け上がる音が二つした。
女学制服姿のサイバーピンクこと桃井 薫、サイバーブルー新宮寺 芳香。
二人とも涙目になって此方を見ていた。
この後の展開を大体想像出来た楠木 達也は(あ、終わった)と死を覚悟する。
「た、達也君・・・・・・これはどう言う事?」
黒髪のボブカットの少女、桃井 薫は涙目になって体をフルフル振るわせながら尋ねた。
ブラウンのツーサイドアップの髪型の神宮寺 芳香も似たような状態だ。
「こ、これは、その?」
「こう言う事♪」
達也は何か言い訳しようとしたが、ナオミがクイッと達也の体を自信の豊満なバストに押し付けた後に頬にキスをする。
「「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」」
女性二人は真っ白になって絶叫の叫び声を上げた。
そして二人はバックルベルトを巻いて変身する。
「ちょっと待って!? ここボクの自室――」
「あらお姉さんと戦うつもり? 外で待ってるわ♪」
そう言ってライダースーツを着て彼女も変身。
紫のちょっと刺々しい悪の爆乳女幹部風サイバーヴァイオレットが姿を現すと窓から飛び降りていった。
『久し振りに現れて何だか知らないけど上等よ! その胸ズタズタにしてやるわ!』
そう言って芳香が窓を飛び降りて後を追う。
『わわわわわ、私も達也君は貞操を守るために私の貞操を捧げるんだから!』
「薫なんか壊れてるぞ!?」
性格が壊れながらも薫も後を追う。
そして外では二対一の壮絶なデスマッチが始まったらしい激しい戦闘音が響いた。
ナオミ・ブレーデルは確かに立場的にはグレーな存在であるが市街地でここまで派手に戦闘して良いのだろうかと色々と考えたが・・・・・・
「・・・・・・今日、学校休もうかな」
達也は思考を放棄した。
☆
結局あの後――防衛隊・・・・・・と言うかサイバックパークの人達が来てついでに無線越しから遠回しに工藤司令から「なにしてんだお前ら?」とお叱りを受けて薫と芳香の二人は基地に連行された。
あの三白眼のヤクザみたいな顔で叱られる姿を想像して二人に同情した。
ちなみにナオミ・ブレーデルはしっかりと姿を消している。
「しかしあの爆乳の外人ねーちゃんが現れるの久し振りじゃねーのか?」
傍に居るのは何時もの女性陣ではなく、ニット帽が特徴の男、結城 浩だった。
茶化す様子でもなく、不安げな表情だった。
「うん。正直言うとナオミさんの事はあんまり詳しく知らないけど、ナオミさんがまた姿を現したと言う事は何か意味があると思う」
「意味ねぇ・・・・・・何かまたとんでもない敵が現れたりするのか?」
「たぶんだけど」
「そうかぁ・・・・・・なあ? 今日時間あるか?」
「え? 一応ボクは休暇貰ってるけど」
休暇と言うかドクターストップと言うか、工藤司令が根回しして申請させたと言うのが正しい。
中條さんのシゴキで倒れてばっかりなので流石に工藤司令も危機感を持ったらしく、中條とのケンカ覚悟でこのような手段に訴えたのだ。
「・・・・・・いやな。あんまり気分の良い話じゃないんだけど。皆でサイバックパークの慰霊碑に行かないかって言う話が出て来てよ・・・・・・」
「ああ・・・・・・」
その話が出て言い淀む理由が分かった。
以前の達也は――と言うか最近になるまで精神的に余裕がなかった。
これは学園全体からすれば周知の事実である。
だからこそ話を切り出すのに躊躇いが生じたのだろうと思う。
☆
放課後。
サイバックパークの慰霊碑前に立った。
ジェノサイザーとの決戦前の二度目の襲撃の時に一度破壊されたらしいのだが既にもう修復されている。
献花台には様々な物が置かれていた。
結城 浩の呼びかけに集まったのか、慰霊碑周辺にはクラスメイトだけではなく、他のクラスや他の学年、教員まで駆け付けていた。
ゴーサイバーの面々までいる。
「こう言うのも野暮だけど、どうして今になって?」
「さあな。自分でも分からん。だけど今みたいな暇な時を逃すともう出来ないんじゃないかなって思ってな・・・・・・」
そう言って結城 浩は慰霊碑を見詰める。
そこには最初の襲撃で犠牲になった一般人に紛れて学生、クラスメイト達の名前が刻まれていた。
それをじっと浩は見詰めている。
「今にして思えば何処かで無関係だったんじゃないかなって思ってたんだろうな。新年戦争の時からずっと・・・・・・」
「アレは正直仕方ないよ。生き残れただけでも奇跡みたいなもんなんだから」
「まあな・・・・・・未だによく生き残れたと思うよ」
そう言って浩は顔の上半分を手で覆う。
「どうしたの?」
「いやな、あの事件の時――お前を悪く言っただろ。その時の事をどうしても思い出してしまうんだわ」
「まだ気にしてたの?」
「まあな。そう言う自分が未だに許せないんだわ」
楠木 達也が初めて変身した時、サイバックパークの最初の襲撃の時、結城 浩は一度一緒に脱出した楠木 達也を周りの雰囲気に流されたとはいえ、罵倒しそうになった事がある。
それをまだ後悔しているらしい。
だからなのか失意の底に沈んでいたクラスメイトを纏め上げたり、学園でキラーエッジと戦った時なんかはバイクで特効したりと無茶な行動をした事もあった。(後で親にメチャクチャ怒られたそうだが)
ある意味では本当のヒーローは結城 浩の様な人間なのかもしれないと達也は思った。
「なあ・・・・・・また、戦いが起きそうな感じか?」
「・・・・・・うん。やっぱりこのタイミングで再びナオミさんが姿を現したのは偶然とは思えない。もしかしてあのイベントと何か関係があるのかもしれない」
「確か新ヒーローのお披露目会だっけか?」
「それと新しいヒーローチームのお披露目もね」
「なに? どう言う事だ?」
「何か別々のコンセプトのヒーローらしいとしか聞いてない。仮にリユニオンを壊滅させたとしても今のご時世、軍備向上は急務だからね。一般見学者も募集してるみたい」
「随分と強気だな? 以前みたいな事件になったらどう責任取るつもりだ?」
今の時代、厳重な警備体制の中お披露目会に敵の襲撃など容易に想像出来る。
特に今防衛隊が相手しているのは地球の戦力を纏めて相手に出来るような怪物軍団だ。平然と殴り込む姿が容易に想像出来る。
「うん。その警備にあたれだって・・・・・・」
「何も起きなかったら奇跡だなこいつは」
正直二人はイヤな予感しかしなかった。
間違いなく何かが起こる。
そんな確信めいた物を感じていた。
「うん?」
独特な緊急コール音が聞こえる。
ゴーサイバーのメンバーはそれぞれ腕に装着したデバイスで連絡のやり取りやメッセージの送受信を行う。
達也も例外ではない。
「どうやら出動らしいな」
「まだ分からないけどね――」
最近はシフト制みたいになっているので達也も出動するかどうなのかは分からない。
それに敵の組織規模を考えると、最初のサイバックパーク襲撃時みたいに多方面でも同時攻撃とかもありえるので全員投入は中々ないのが現状だ。
とにかく自分が出撃するか否か、確認するうえでも通信に出た。
☆
サイバーレッド、楠木 達也はウイングアーマーを身に纏い、空鳴 葵と一緒に現地に急行していた。
この二人は空中戦闘用装備を持っているので現場にスグに急行出来るからだ。
市街地で暴れてる相手はまるで黄色いショベルカーを人型にしたような大型の怪人だった。
両腕はバケット(ショベルカー先端のカゴの部分)になっている。
反応はデザイアメダル。
ゾンビ的な動きで無いのを見ると人を媒介にしたタイプだ。(デザイアメダルは人を媒介にしてないと動きが緩慢で弱いと言う欠点を持つ)
『私から仕掛けるわ!!』
まずは空鳴 葵が仕掛けた。
空鳴 葵こと銀色のゴーサイバー、そして機会の翼を持つゴーサイバー、その名もサイバーウイングス。
空戦特化型のゴーサイバーである。
手にはサイバーライフルを持ち、周囲には四機の流線的なフォルムのラジコンサイズの無人小型戦闘機が飛んでいる。
サイバーウイングスはただの空戦特化型のサイバースーツではなく、四機の無人機とのオールレンジ攻撃などを目的としたスーツだ。
その調整に手間取っていて以前の戦いでは実践投入出来なかったが今回ようやく投入出来た形だ。
『そこ!』
サイバーウイングスは攻撃を仕掛けながら、小型戦闘機をコントロールして相手を翻弄、時に攻撃させつつ、時に葵本人が陽動の役目をして狙いを逸らしながらショベルカー怪人を一方的に封殺する。
『凄い・・・・・・』(これが完成したサイバーウイングス・・・・・・)
最近実戦投入段階まで漕ぎ着けたと聞いていたがもうここまで使いこなしている。
正直自分いらないんじゃないかとさえ思う。
それぐらいまでに小機との連携は完璧だった。
『これでトドメ!!』
最後は四機の小型機と横一列に隊列を組んで葵本人も含めた最大出力の一撃を決める。
文句なしの完全勝利である。
『達也君の出番全部横取りしちゃったわね』
『そ、それは』
『まあいいわ。霞程でもないけどなるべく達也君の出番が無いようにするのが仕事だから』
『はあ・・・・・・』
何処か素っ気なさを感じてしまう。
確かにアレだけの戦闘力を目にすれば出番はやがて無くなってしまうかもしれない。
だがまだ辞めるわけにもいかないのが辛い理由だ。
皆のためや工藤司令や古賀博士の頼みとかもあるが、ナオミからもたらされた情報が確かなら尚更だ。
次に大きな事件が起きるとすれば間違いなく新ヒーローのお披露目会だろう。
なにはともあれ、基地に戻ることにした。
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