終章:ファイナルバトル開幕
決戦開始
Side 桃井 薫
空中ではサイバージェットが舞い、大地をサイバータンク、その後続をサイバートレラーが走り抜け、サイバーマシンに跨がりウイングアーマーを纏ったサイバーレッドこと楠木 達也、サイドカーであるデンジダーマシンに乗り大地を疾走する青き稲妻の戦士、デンジダーこと黄山 茂。その後方をいく重装備仕様のプロトサイバーこと戦術アドバイザー寺門 幸男、そして防衛隊、サイバックパークに所属する隊員達。その支援車輌や戦闘マシン群。
戦いは四人の戦士を救う戦いであると同時に防衛隊の面子を賭けた総力戦へと発展していた。
その状況をマスコミは上空から望遠カメラで実況する。
御陰で遠目ながら激しい戦いの状況が画面越しにも伝わってきた。
リユニオン側もジェノサイザーを筆頭とした怪人部隊、戦闘員部隊、オートバイ部隊に車輌部隊で応戦し、各所で激しい激突が繰り広げられている。
囚われの身となっている採石場には数に物を言わせた多方面から攻撃が仕掛けられているがジェノサイザーの圧倒的な殲滅力の前にその戦略が瓦解している。
一方達也達は怪人部隊――正確には再生怪人部隊やオートバイ部隊、車輌部隊の猛攻を受けていた。戦闘員はどうにかなるがスカイファイアーなどの再生怪人達の実力はかなり高い上に物量差もあって長期戦を強いられていた。
「くくく、自ら死にに来たかゴーサイバー」
(達也君が来てるの……)
磔となった体を起こし、前を見やる。
遠くから激しい爆発音と煙が彼方此方から立ち上っているのが見えた。
(ダメ……逃げて……)
薫は自分が助け出される事よりも達也に生きて欲しいと望んだ。
ジェノサイザーとの戦いに敗れた薫は心身ともに衰弱しきり、己の死を受け入れていた。
心残りは沢山あるが――叶うのならば芳香、麗子、マリアは解放して欲しかったが今の自分ではそれも叶わない。
「早く来い! ここが貴様達の墓場となるのだ!!」
(私はどうなってもいいから……生き延びて……)
ただひたすら薫は達也の無事を願った。
いや、もう彼女にはそれしか縋る物しか無いのかも知れない。
芳香は涙を必至に堪えながら死の恐怖に抗っていた。
麗子は俯き瞳を閉じてずっとグッタリしていた。
マリアは芳香をか細い声で必至に励まし続ける。
ずっとこんな感じだ。
(達也君……ごめんね……)
糸が切れた人形のように項垂れ、目端から透明な雫を溢し落とす。
Side 結城浩
少し時間は遡り、場所はサイバックパーク。
そこに主立った屋上のメンバー達が全員揃って集結していた。
他の生徒は戦いの行方を――誰が言い出したのか体育館や視聴覚室、職員室で一緒に見守ろうと言う話になっている。
ここに駆けつけたのは屋上で戦いの帰りを待っていた古株達を中心としたメンバー、そして達也達と同じクラスの生徒に担任達だ。
(あいつは屋上で言った……)
応援して欲しい。
この言葉で浩は覚悟を決めた。ならば盛大に応援してやろうじゃねえかと。
(何の助けになるかも知れないかもしれねぇ)
「話は分かった。君達の言う通りにしよう――」
「「「「「「ありがとうございます!!」」」」」」
生徒、教職員達は一斉に頭を下げる。その向こうにはサイバックパークの司令官、工藤 順作がいた。
Side 楠木 達也
(想像以上に敵の数が多い!!)
サイバーマシンを動かしながら次々と襲いくる敵のバイク部隊をデンジターと共に土煙を上げながら蹴散らして行く。
後方ではサイバータンク、サイバートレーラーが続き、更にその後方からはプロトサイバーを身に纏った寺門 幸男が隊員達と共に続く。
まだジェノサイザーどころか怪人との戦闘に至ってはいないがかなりの物量で四方八方から、高い斜面の上から飛び降りるように襲い掛かってくる戦闘員までいる。
上空では空中戦が――飛行可能な怪人や戦闘員達、マシンに乗った戦闘員との熾烈なドッグファイトが始まっているらしい。
勿論そこにはサイバージェットの姿もあった。敵も手強いらしく、中々此方への援護は出来ない状態だった。それに地上からの対空砲火――怪人の攻撃や時折飛んでくるジェノサイザーの攻撃も熾烈で制空権の確保はより一層困難になっていた。
『キリが無い!!』
『貴方達は先へ進んで下さい』
『寺門さん!?』
『雑魚の相手なら十分出来ます。貴方達はサイバータンクの一斉射を合図に先行して下さい』
『でも・・・・・・』
『心配ご無用です。私も今ではゴーサイバーなのですから』
『達也君。ここは言う通りにしよう』
『……分かりました。お気を付けて』
そしてサイバータンクの、怪人すら一撃で吹き飛ばす程の主砲が唸る。
この豪砲を合図に達也、茂、そして戦いの切り札とされるサイバートレーラーが突き進む。
『またこいつらか!!』
再び戦闘員のオートバイ部隊、車輌部隊、そして今度は防衛隊から鹵獲でもしたのか戦車までもが現れた。
『ここが僕が引き受けるよ』
『黄山さん!?』
黄山 茂ことデンジダーのサイドカーが唸りを上げて跳ね上がる。
敵集団の頭上を取ると両手を広げ――
『デンジダー稲妻落とし!!』
両手から落雷が次々と戦闘員部隊を襲い掛かった。
黒焦げになり、バイクや車輌はエンジンに引火して爆発を起こし――特に悲惨だったのは戦車だ。恐らく砲弾が誘爆でも起こしたのだろう、黒いキノコ雲が上がる規模の花火があがった。電撃で目が眩んだ上に爆風で思わず倒れそうになり、ブレーキを踏んで側面を晒すように停止する。
『黄山さん!?』
『僕は大丈夫だ。それよりもまだ戦いは前哨戦――気を抜かないようにね』
『は、はい!』
色々と言いたい事はあったが茂の言うとおりだ。薫達が貼りつけにされている大広間までまだまだ距離がある。それまでには今のような妨害が立ち塞がっているだろう。自分達はそれ達を全てぶち破って行かなければならない。
それに――敵はジェノサイザーと言う切り札を持っている。報告を聞く限りジェノサイザーは防衛隊の迎撃に出ているようだ。そのせいで被害は凄まじい勢いで発生している。
これに関して達也は二通りの考えが思い浮かんだ。
まず他の味方を倒して自分達を孤立させると言う考え。
もう一つはそれしか運用方法が無かったのでは? と想像する。
何せジェノサイザーの火力は凄まじい。単独で基地を破壊する程だ。
だが部隊として組み込んだ場合、その殲滅力が災いし味方を巻き込む恐れがあるため、迎撃に回さざる終えなかったのだろうと推考できる。
『確認するけど……ジェノサイザーが現れたら僕が相手するから、達也君は皆を助け出す事を優先して』
『はい……』
これは昨日決めた段取り通りだ。
ジェノサイザーの戦闘経験――以前とは別物に近いらしいがそれでもジェノサイザーを倒した経験があるデンジダーこと黄山 茂が担当するのは当然の流れと言えた。
と言う事は必然的に自分はあのリユニオンの大幹部や再生怪人達と戦わなければならないのだろう。それが達也の不安だった。一応シュタールは以前倒しているがアレは殆ど奇跡に近いので参考にしていない。今でも何かの間違いだと思っている。
が、それでも戦わなければならないだろう――サイバーレッドとして、仲間を救い出すために――
『今度はどうやらスグには突破出来そうにはないね』
二人の前に立ち塞がったのは見た事がある怪人の姿達。いわゆる再生怪人と言う奴だろう。そしてその背後には戦闘員の群れが控えていた。そして達也が何より一番驚いたのは――
『キラーエッジ!? また復活したの!?』
「もう負けねえ!! 絶対にテメェをブチ殺してやる!!」
そう、キラーエッジだった。
最初が片腕と頭部が刃物、二度目は両腕が刃物だった。しかし今度は背中から翼のように鋭利な刃物の羽を生やしている。
そんな外見的な変化よりも達也はまるで自分を殺すためだけに地獄から蘇ってきたその非常識さと執念に恐怖を覚えてしまう。
「俺だけじゃねぇぜ~お前達ゴーサイバーに復讐するために地獄から蘇ったのはよ~」
そこでふと見覚えのある怪人達がサイバックパークで見覚えのある奴ばかりだと気付く。
両腕がベンチの恐竜。
戦車ロボット。
ドリルロボ。
そしてキャノン砲を搭載したロボット――確かエアシャッターと言う対空砲をモチーフとした薫が倒した怪人で達也はデーターでのみ見た事がある。
全員があのサイバックパークで現れた怪人達だ――まるで亡霊と対面したようで正直気分が悪くなってしまう。
特にキラーエッジだ。遂先日倒したばかりでもう復活している。怪人には特撮物に出て来る怪人同様に死という概念は無いのだろうか? と言うか本当に同一人物なのか? もしかして本体は別の場所で眠っていて意識だけを――と色々と考えたが達也は途中で思考を打ち切った。
「お前は仲間を助け出す事も出来ずここでゲームオーバーだ!!」
『やるしか無いのか……』
今は倒すべき敵なのだ。
幸い無尽蔵に自己修復したりする訳ではない。葬れる相手だ。復活した理由なんてのは後で幾らでも考えれば良い。
『ここで倒さないと最悪挟み撃ちにされる。手早く倒したいところだね』
確かにそうだ。
まだジェノサイザーやシュタールだっている。
もしかすると他のリユニオン幹部だって控えているかもしれない。
なるべく敵の戦力は削っておきたい。
それに逃げながら、尚且つ後方に控えているサイバートレーラーを守りながら戦うのは困難だ。
だから――
『倒しましょう!! ここで全員!!』
何かから決別するかのように達也は言い放った。
「余裕だな貴様達~」
『この少年を甘く見ない方がいい。俄には信じられないが……急激なスピードで成長している』
「何だと?」
『言っても無駄だとは思うが――幾らパワーアップしたところで今の君に達也君は倒せない』
「ほざけ!! その減らず口諸共この刃で斬り刻んでくれるわ!!」
相手の攻撃が来る前に達也は一旦サイバーマシンから降りた。
同時に先手必勝、サイバーウイングのブースターをONにし電子クラフトを作動し、両脚にプロテクターを身に付ける。そしてドリル怪人目がけてキックを放った。前回キラーエッジに叩きつけた時と同様に足に搭載された電子クラフトをレールに見立てた急加速の一撃を叩き込み、上半身と下半身を泣き別れにさせる。
あの時と同じく呆気ない、見せ場も無い最後だった。それを特別気の毒だと思わなかった。
『残り4!!』
茂は戦車ロボット、ベンチ恐竜の二体に向けて両腕から電撃を放ち、相手の動きを止めて飛び掛かる。同時に雷光を纏った手刀が二体の怪人を切り裂いた。
テレビに出て来る再生怪人でも、もうちょい見せ場はあるだろうにドリル怪人同様の噛ませ犬にもなれない体たらくだった。
『残り2!!』
達也は残り――対空砲怪人エアシャッターに向かう。
足のプロテクターを解除し、新たに追加された武装――サイバーライフルをを所持し発砲。流石に一撃で倒せる破壊力は無かったがそれでも威力はエレクトロガンとは段違いだ。そして幸運な事に予想外の速さで爆散してくれた。
元々の防御力が低かったのか、それとも内部の砲弾と誘爆してくれたのか――どちらにしろ達也にとっては嬉しい誤算だった。
『これでラストォオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「舐めるなガキがぁあああああああああああああ!!」
サイバーライフルからサイバセイバーⅡに切り替え、斬り掛かる。
それはキラーエッジも同じだった。怒り任せにオーバーアクションで襲い掛かる。まるで怒り狂った手負いの野獣のようだ。たぶん、同士討ち覚悟でもその刃を突き立ててくるであろう事を容易に想像出来た。
だが一旦突いた勢いは互いに止められない。もう加速し続けるしかない。
だから――
「なっ!?」
突如として達也は急加速した。
そしてそのまま土手っ腹に、水平に押し当てるように、サイバセイバーⅡで両断した。
電子クラフトによる急加速を乗せた一撃は見事に相手の意表を突き、呆気なく倒してみせる。
これが映画やテレビならもうちょいキラーエッジにも見せ場があったのだろうが、現実と言うのはこんな物なのかも知れない。
「ち、チクショオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」
しかし対義語に「現実は小説よりも奇なり」という言葉が存在する。この後起きた現実は想像を遥かに超えていた。
倒された四体の怪人の残骸から何かコンピューターチップのような物が飛び出て、それが上半身だけになってボロボロになったキラーエッジに吸い込まれていく。一瞬の出来事だった。後々になって達也は思う。この易々と勝てた戦いはこれの予兆だったのでは無いだろうかと思う。
それは科学の常識を越えた光景だった。
みるみるウチにキラーエッジは巨大化した。
戦隊物みたいに五十mぐらいの高さではない。大体十m程だ。
だが変化したキラーエッジの造形が問題だった。
変わりゆく敵の姿を見て、慌ててサイバートレーラーがパラボナアンテナからレーザーを、そして茂が電撃攻撃を加える。正気に戻った達也もサイバーライフルを取り出しフルオートで連射する。
それでも敵の変化は止まらない。
「クハハハハハ!? 一体どう言う事だコレは!? まぁいい!! あのクソガキを叩き潰せるんならなぁ!?」
頭部はキラーエッジ、胴体中央に戦車怪人の頭にあった砲身が伸びている。両肩の背後からはエアシャッターのキャノン砲が伸びており、翼の様に一対の巨大なナイフが生えていた。右肩はドリル怪人の頭で手はドリル。左肩にはベンチ恐竜の頭でこちらの手は巨大なベンチ。尻尾を――恐らくベンチ恐竜の奴だろうを生やし、両脚の膝からはドリルが突き出て、足はその巨体を支えるためか下駄足の様にキャタピラを履いているような感じになっていた。
センスの欠片もない。まるで子供が適当に玩具をくっつけた様なキメラロボみたいな印象を持った。
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