第98話 偶然

 森深く入ると、静寂が少々恐怖に変わり始めたようで、スタさんは、アランの肩に乗っている。


 ボッサもアランの足元から離れない。


 アランは、ふと立ち止まった。


「どうした?」

 タイラーが、周りを光りで照らしながら、アランに聞く。


「……うーん、なんか、人のような、魔獣のような。」


 アランは、こめかみに手を当て呟いた。


「もうすぐ現れる。」

 アランは、また歩き始めた。

 タイラーは、アランの後ろについた。

 タイラーは、医者だ。攻撃魔法ではアランに敵わないのを知っている。



 しばらくすると、少し開けた場所に出た。


「居た。」

 アランは、呟いた。


「なんだあれ、カラーボールの塊みたいのは?」

 タイラーも、あまりに奇妙な物体を見て拍子抜けして呟いた。


 カラーボールが沢山くっついて出来上がったような塊は、不自然に何個も出来上がっていた。


「良く分からないけど、まぁ、こいつらのお陰で助かったのかもな……。」

 アランは、杖を出し地面をついた。


「うわっー!」

 カラーボールの塊が崩れて凄い速さで動き出す。


 カラーボールは、木の枝に移動して、アランを見ていた。


「ポール?」

 タイラーが驚いた。

 ポールは、カラーボールの塊があった場所で、放心状態のようになっていた。


「……大丈夫だ。」

 タイラーは、ポールや、ポールと同じようにカラーボールの塊があった場所で、放心状態の新人ハンター達が無事かを見て回った。


「この薬草で、放心状態は戻せるよ。」

 アランは、タイラーに薬草を渡した。


 タイラーが、薬草を使うと新人ハンター達は、放心状態がとけ、今度は、混乱状態になったようだ。

 皆、慌てたように手を振り回し何かから逃れようとしているみたいだ。


 アランが、また杖を地面につく。


「アラン!」

 ニーナが、アランに抱きついた。


 皆、助かったー、無事か、と仲間に声をかけ、無事を確かめ始めた。


「アラン、あれ、何!」

 ポールが、素っ頓狂な声を上げ、木の枝からこちらを伺うカラーボールを指差す。


「いい加減、魔獣図鑑を買えよ!」

 アランは、呆れながらニーナの背中を撫で落ち着かせると、ニーナから離れ木の枝を指差す。


「この魔獣達は、ララフィーだ。人へ害なすことは無い。」

 アランは、ララフィーに手を振る。


「……で、でも俺達に向かって来たよ。」

 魔法協会会長のお孫さんが、恐怖でまだ顔を引きつらせている。


 お前も、魔獣図鑑買ってねぇのかよ!ってツッコみを止めて、アランが説明する。


「お前ら、シャムリに追いかけられたんだろ。ララフィーは怖がりさんだから、怖いとみんなで固まるんだよ。そこに、お前らが偶然いたから、一緒に固まっちゃったのさ。」

 アランは、自慢気に話す。


「固まったからといって、何か攻撃出来ないんだったら、意味ないんじゃない?」

 ニーナが、不思議そうに尋ねる。


「でも、みんな無傷だろう。ララフィーは、ああやってみんなで固まって、体から匂いを放つのさ。怖い魔獣に食べ物じゃないよーって匂い。でも人間には、放心状態を起こさしちゃうんだから、……まぁ、すぐ誰かに放心状態を解いてもらわないと、人間も危ないが、今回は、ララフィーに助けられて、尚且つ、俺のような優しいお兄さんのお陰で助かったって訳だな。感謝しろよ。」


「よく見ると、モモンガみたいで可愛いわね。それに青いのや、ピンク色や黄色や緑、色々な色の子がいるわ。」

 ニーナが、ララフィーに近づく。

 ポール達も、ララフィーを見に近づき、ありがとな、とお礼を言ったりしている。


 聞いてねぇな、俺にも言えよ、まったく。


 ララフィーは、群れで動くし、臆病だから人にも懐きにくい。

 色は単色だが、それぞれ色が違うので、確かにカラーボールみたいだ。


「……なぁ、子供だけで行動しているのか?」

 タイラーが、アランの横に立つ。


「あのな、そんな訳あるか!見てみろ、あの母親ララフィーの子供を守ろうとキリッとした顔を。」

 アランが、指差す方をみんなが見る。


「どれ、分からん。どれも同じ背恰好だし、顔も同じに見える。」

 タイラーは、目を凝らす。


「なんか分かる気がするわ。」

 ニーナが呟くと、ポールも呟く。

「うん、俺も。」

 ハンター達も、本当だと言い始める。

 皆、相棒を連れている者達だ。


 タイラーと魔法協会会長のお孫さんは、同じに見えると見分けるのを早々に諦めた。


「あいつ、魔獣図鑑見過ぎだろう。」

 タイラーは、昔からアランが魔獣図鑑を持ち歩いていたのを思い出していた。


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