第24話 街はどんより

「スタさん、ボッサ、一旦、街を出ようか。」

 アランは、宮殿を後にして、ふらふらと帰りだした。


 行きとは違い、街はどんよりとして見えた。


 手には、行きに見たケーキ屋でたんまりケーキを買った。

 討伐が終わるまで、この街に戻れないかもしれないしと思い、ケーキを買いこんだ。


 明日の朝早くに、近くの町に行こう。

 もうひとつ先の町がいいかな。

 魔法協会に捕まらない程度に遠いところへ。



 アランは、宿屋に到着すると、ケーキを食べ始めた。

「近々、君には喜ばしい話がくるだろう。楽しみにしたまえ。」

 魔法協会の会長の言葉が思い起こされる。


 楽しみにしたまえ!?

 冗談じゃない、絶対ろくなことじゃないに決まってる。



 アランは、強面こわおもてからもらった紙を取り出し、もう一度読み始めた。


 この討伐、凄い雑だ。

 魔獣の数が多し。って、こんな大雑把な依頼なんて、どんなバカが依頼したんだよ。


 こいつバカだろ!

 アランは、依頼者を見た。


 依頼者:ラシフィコ州 統治者


 ……やっぱりバカだ。


「……もう、スタさん。」

 アランは、スタンにすりすりした。


 アランは、もう一度読み上げる。

「ハンターを50名、魔法使いを中級20名、初級を60名まで募集。出発は、明後日の早朝。」

 ざっくり過ぎるだろう。

 集まるのかよ。

 報酬を見ても、……賞金はいいな。

 それと希望があれば商品も別に貰えるとな。


 ……風呂。いやいや、割りに合わない。


 討伐後は、祝勝会を宮殿で開く。ふむふむ。

 なるほど、もしかしたら、美人姉妹とお近づきになれると。

 そして、統治者へ。


 しかしねぇ、街の近くに出た魔獣を考えたら、それ以上の厄介な魔獣がいるに違いないぞ。


 それと、ハンターもそうだけど、魔法使いだ。これ、昇級試験を兼ねているだろう。

 あー、やだやだ。

 面子メンツがわからないが、試験官混じってるよね。

 こんな試験初めてだな。

 何か、腕の良い魔法使いを緊急に揃えたいのかな。

 魔獣も増えているし。


 しかし、試験官、可哀想。大変だろうに。

 自分と、他の人を守りながら、昇級して良い魔法使い探すなんて。


 俺は、ごめんだ。そう、ごめんだ。

 明日、出ていく。




 早朝、アランは、食堂で朝食を食べていた。

 残念だが、また来ればいい。

 急げ、急げ。



 静かな食堂に、ドカドカとローブを着た男たちが入って来た。


「魔法使いのアランはいるか?」


「いませーん。」

 アランは、答える。

 どうせ、居ると知ってて来たくせに。


 ローブを着た男たちが、アランの前に立ち、おもむろに紙を広げる。

「上級魔法使いアランに通達だ。魔法協会の会長、及び魔法協会は、今回、貴君を特級魔法使いに昇格することとする。明日、出立の討伐に参加し、腕を振るうが良い。」


「無理です。なんてったって、俺、育休中ですから。」

 アランは、子猫サイズのスタンを男の顔の前に掲げる。

 スタさんは、いつものあざといポーズを決めている。


 ナイス連係!スタさん。


「そいつは、子供ではないだろう。」

 くっそ、バレている。ならば、


「この子がいますので!」

 ボッサを男の顔の前に掲げる。


「ニゲル種なら、連れて行け。良い教育だろう。」


「ご無体な!こんなイタイケな子をー。」

 アランは、マジで驚愕していた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る