第14話 またかよ。

「ちょっと、くすぐったいし、……痛っ!」

 スタンが首にしがみつく。


「スタさん、落ち着いて、頸動脈切られたら死んじゃうから。」

 鋭い爪が痛い。

 スタンを掴んで引き離すと、スタンは上見たり、アランの顔を見たり忙しい。

「なんだよ、ボッサまで。」

 ボッサはさっきまでの威嚇は何処へやら、足の間でしっぽを丸めて隠れている。


 アランは、上を見上げた。


「またかよ。」

 空には、また例の魔獣が飛んでいた。しかも、何匹いるんだよって数が。

 そりゃあ、怖いよな。空じゃ戦えないお前たちは、捕まったら死ぬだけだ。


「ったく、おこぼれ狙いだな。」

 あの大きな魔獣が、早く馬車を倒さないか待っているのだ。


「お母さん、怖いよ。」

 小さな女の子が、母親にすがり付いている。


「……お嬢ちゃん、この子たちを守ってくれる?お兄ちゃんが魔獣を倒すから。」

 アランが、声をかけると女の子は、スタンとボッサを抱き抱えた。


 震えるスタンたちに、女の子が声をかける。

「大丈夫だよ。」


 人は、守る者が出来ると強くなるものだ。


 アランは、立ち上がると空の魔獣から退治する。


 手を掲げると銀の杖が現れ、そのまま杖を横倒しのままくるくると回す。

 銀の杖から炎が大きく広がり、大きな竜巻となって空を飛ぶ魔獣たちを飲み込み消滅させていく。

 そして、その炎がまるで生きている竜のように、後ろから近づく大きな魔獣を襲い飲み込む。

 しかし、炎が裂け、火だるまになりながら、まだ魔獣が突き進んでくる。

「しつこい!」

 アランは、杖を持ち、槍のように魔獣に投げつけると杖は光の矢となって、魔獣を貫き、煌めきながら消えた。


 魔獣は、大きな音をたてて倒れ、炎が魔獣の姿を覆い消し去った。


「もう、慌てなくいいから、ゆっくり走ってくれ。」

 アランは、馬車の手綱を持つ男に大声で声をかけると、腰かけた。


「お嬢ちゃん、ありがとう。」

 アランは、スタンとボッサを受けとると2匹のもふもふを堪能した。


 ……まったく、タダ働きだ。


 馬車に乗る者たちは、唖然とするばかりだった。



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