第24話 お嬢様と執事の海

 電車に揺られながらも私達は海へやってきた。


 煌めく海、真夏の太陽、はしゃぐ若者達にナンパする男達。家族連れ、友達とBBQ、アオハル恋人同士…。様々な人が真夏の海で遊んでいた。


「私のプライベートビーチとは違って人がゴミのようにいるわね」


 というか、マナーのなってない人はゴミをポイ捨てしている。怖いから注意はしないけど、私はビニール袋にゴミを入れて回収した。


「全く!一人一人の意識が大事なのに…。ゴミくらい持ち帰って欲しいね」

 隣のおばさんも汗をかきつつも私よりゴミをたくさん拾っている。


 そう…私はゴミ拾いのバイトをしているのだ!!


 暑い。


 そして後ろからキャーキャーと黄色い声がした。


「海の家マリンブルーで休憩していってくださいね。素敵なお嬢様方」


 魚住が完全なるイケメン営業スマイルで自分がバイトしている海の家のチラシを歩いていた女性達に声をかけている。


「きゃー!!後で絶対行くーー!」

「お昼はマリンブルーで決まりよ!!」

 と盛り上がっている。


 ホストかよ!!あのクソ執事が!!


 最初は私もマリンブルーで普通にバイトをしていたけど、料理はできないし客に焼きそばを運んでいたらケーブルにつまづいて転んで焼きそばを客の頭にぶっかけてしまい、早々にクビにされ魚住が何とかゴミ拾いボランティアバイトを手配してくれた。


 因みに時給1000円だ。

 魚住のバイトは時給1500円でずるい。しかも魚住は小檜山財閥からも給料をもらっているからずるい。


 しかも何よ?客の呼び込みだが知らないけど水着の女の子に囲まれていやらしいったら!!


 ふん!私だってこのパーカーを脱いだら……


 脱いだら学校のスクール水着という……。


 うう、ダメよ!耐えるのよ!美玖!!

 私は海を綺麗にするの!


 と空き缶やらを拾ってひたすら地味にビニール袋に入れていく。


 すると歩いてきたカップルがアイスの紙クズを私の目の前で明らかにわざとポイっと捨てた!!


 しかもこちらを見て


「暑ーい!!ここに捨てとけば拾ってくれるよね」


「だな、ご苦労様だわ」


 なんか腹立つ。くすくすと笑いながら通り過ぎる男に私は


「ねえ、お兄さん…。人間として恥ずかしくないのですか?よほど育ちが悪いのですね!」


 と言ってやるとチャラそうな男はムッとして


「ああん?なんだよこの、ブス!どうせゴミ拾うんだからいいだろうが!?お前の仕事与えてやってんだよ!こっちはよ!!」


 と凄まれた。大丈夫、怖くない、怖くない!ていうか私はブスじゃない!


「貴方みたいな人がいなければこの浜も素晴らしく美しく映えるのに、残念ですわね!


 例えば砂浜で裸足で追いかけっこしている時に足の裏にガラスの破片がブッ刺さって大出血しちゃったら楽しい思い出も悲惨な思い出になってしまうと思いませんこと?」


 と言うと男は


「そんな昭和みたいな恥ずかしいことするわけねぇだろ!!バカが!!


 てめえは黙ってゴミ拾ってろ!」


 と男はゴミクズを私の顔目掛けて投げてきたので目を瞑ると


 バシッとゴミを魚住がチラシで跳ね返し跳ね返ったゴミが投げた男の顔にヒットした!!


「ああ!あっくん!!」


 と彼女が駆け寄るが


「お客さん方…、うちの店の近くで揉め事は営業妨害となりますので通報させていただきました。時期に見回り警備員がこちらに来ますのでここで待機お願いします」


 と言うと男と女は青ざめて


「ちっ!!ゴミクズが!覚えてろよ!!」


 と悪役みたいなセリフで去っていく。


「う、魚住…。あんた私を助けて…」


 と感動していると


「大丈夫ですかー!?通報があったのはそちらですか!?」


 と本当に警備員がやってきた!


「あ、こちらです!この人が逆にいちゃもんつけてゴミを投げていました!!」


 と私は通報された。


「なるほど…じゃあちょっと話を聞きましょうかね」


 魚住の方をチラッと見ると


 にっこり笑っていやがった!!

 このクソ執事ーーーー!!


 こうして私はこってり怒られた上に更にボランティアバイトの人にも怒られて時給を減らされて一人違うところで黙々とゴミを拾う羽目になった。


 そして岩場の陰から魔法少女ミミたんのビーチバレー大会が賑やかに行われているのを眺めた。人が多くてあまり見えなかったけど歓声が上がり、盛り上がっている様子が伺えた。


 別に羨ましく無いわよ。


 その後、魚住が優勝したらしくミミたんのフィギュアや抱き枕を抱えて帰宅準備していた。女の子達は連絡先を聞きたそうにしていたが、魚住が


「じゃあ、帰ろうか美玖」


 と私を呼び捨てにし、肩に手を置き、彼女扱いしていたのを見て女の子達は泣きながら去って行った。


「か、可哀想に…」


 魚住は手を離しザッと離れて荷物を担ぐ。


「まあ、俺の嫁はミミたんだからな」


 と大事そうにフィギュアや枕をカバンに詰めた。いつも通りの魚住に戻った。


 *


 帰りの電車では疲労感で爆睡してしまったら終点まで行ってしまい、しかも起きたら魚住はいなくてスマホから


「お嬢様が疲れてらっしゃったので起こしたらかわいそうかと思い寝かせて差し上げました。ざまあ!」


 とかいう腹立つ電話が来たのだった。

 ふっざけんじゃないわよ!!


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