第8話 犬がいないなら犬になりなさい

1Kボロアパートの1室で、私は魚住とイチャラブな生活ではなく、完全に線引きをしていた。


狭いアパートを半分ずつ分けて使う。

一応真ん中には食卓の為のテーブルを設けているが、それにも半分テープを貼り、更にバリケードみたいな板をDIYしてこっちの空間が見えないようにした。


「お嬢様の顔を四六時中見るのも気持ち悪いし、俺の賢者タイムも必要なんで」

と言うので


「そっちの方が気持ち悪いんだけど!死んで!」

と、とりあえずバリケードの向こうから返した。

私はこないだの犬の件で機嫌が悪かった。


子供に先を越された。飼いたかったのに!アパートは無理でも実家の本邸では、なんとか置いてもらえると思ったのに!


「魚住、犬が飼えなかったんだから、あんたが犬の真似して、私を和ませなさい?」

と言うと


「は?キモ。なんで俺がそんな事をしなきゃならんのです」


「あんた私の専属執事でしょ!?執事って言えばお嬢様の忠実な犬ってのがド定番よね!


ならば、あんたにも犬の素質があるってものよ!さあ、犬になり、お手をしなさい!」

と言うと魚住は


「お嬢様…。俺にも人権があるし、人間を辞め、変態に走ることはできない!


そもそも俺が家事を担当してる分、お嬢様は俺に感謝していいはずだ!


いいか、お前こそ身分を弁えろ!俺の犬になり、外行って、ちょっとジュース買ってこい!!」

とテーブルの敷居の板の僅かに空いた小さな穴…、丁度手が入るような所から、魚住は180円を置いた。


私は怒り、テーブル事持ち上げて、バリバリとバリケードをぶっ壊して怒った。


「ふっざけんじゃないわよーー!!何でお嬢様の私が、執事の犬に成り下がらなきゃいけないのよー!


立場!立場を弁えるのはあんたの方よーー!!」

と怒ったら


「あーあ、せっかくの力作が台無しだ」

と魚住はなんと、パンツ一枚でくつろいでいた!!


「ぎゃーー!変態!!あんた、なんて格好してるのよ!!バリケードの向こうでそんな!上半身裸で如何わしい事を!?」


「いや、着替え中だったんだけど。勘違いして変な妄想するのやめろよ、脳みそ腐りポンコツお嬢様」

とゴソゴソ気にもせず、普通に服を着替えた。


「あんた!恥じらいがないの!さ、最低だわ!こ、このケダモノ!


いつか私を襲う気ね!!」

と言うと魚住は真剣な顔で


「それだけはない。お嬢様を襲うほど俺は自分を見失っていないし、壊れてもいない!


むしろ俺の方がお嬢様に襲われないか心配です!俺、イケメンだし!!


こんな危険思考のお嬢様と一緒にいて怖い!」

と逆に私を見て怖がる!


「私がやっべー女みたいに言わないでくれる!?」


「え!?やっべー女じゃないですか!!」


「どこがよ!!普通だわ!!あんたの方がおかしいわよ!!」

すると魚住はゴソゴソとスマホを取り出して


「昨日のお嬢様の寝言を録音させていただきやしたー」

とか言って再生ボタンを押すと


『むにゃむにゃ、ご、吾郎!いいだろ!お前の●●●が欲しいんだ!


えっ!?紫苑くん…ぼ、僕のことそんな目で!?


吾郎!なんて可愛いんだ!今すぐ●●●い!そして、●●●●●●●して、愛したい!


ああ、し、紫苑くん!ぼ、僕も…』


「ぎゃあああああああうあうあうああ!!」

と私は恥ずかしさで絶叫した!最近買ったBLのもどかしさの展開で悶々してたから、願望が夢に出てたのね!!


「あんたこれでも!これでも普通じゃないってのかよ!!」

と魚住が言うと、ドンと隣の人が壁を叩き、また怒られるのかと思ったら


「俺んとこにも嬢ちゃんの寝言、でっけー声で聞こえてんぞーー!!この脳みそ腐り女がー!」

と言われた。


「すみませーん、うちのアホな、お嬢様が安眠を邪魔しまして!」

と魚住は壁向こうに謝ると


「と言うことで、どっちが犬になるかわかったでしょう!?


さ、バリケードは直しておくから、ジュース買ってこい!」

と言われたので、私は仕方なく180円を手にして


「……わ、わおーーん!!」

と泣きながら出て行った。

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