6 灰薬

月低く

滴る露を

照らし居て

只一輪の

深く眠る


なんとはなしに…

只ほんのちょっとの悪戯で

藥袋に書いた短い句を

飽くこと無く繰り読んでいた


蕩けるような午後の陽射し


次第に思考は波打ち

心地好く微睡み始めた


ふと目を開ける


雲間から透けた淡い檸檬色が

いつの間にか熟れた蜜柑へと変貌し

遠鳴りのような宵を連れてくる


一粒また一粒

ちかちかと

一層忙せわしくなる空の点灯式


薄紫の綿を引きながら

橙の中を分け入る列車が過ぎ去る頃

街に夜が覆い被さる


今日もまた

独り


この空を切り取った

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