第19話 学園長の頼み

授業が終わると2人は早速学園長室へと向かった。

この学園は四階建ての造りになっており

しゅんたち一年生の教室は4階、学園長室は二階にあった。

隣には職員室が並ぶが、学園長室は別次元で豪華な造りになっていた。

扉には最高級の木とガラスがあしらわれており、他の教室との違いに、まるで別の場所にあるのかと思わせるほど豪華なものだった。


2人はその佇まいにややあっとうされるも、ノックをして中に入ろうとした。


「失礼します。一年の月島と一条です」


「入れ!」

中から麻耶の声が聞こえ、2人は部屋の中に入っていった。


中に入るとこれまた豪華な内装で、一人掛けの椅子に麻耶は座っている。


「まぁ、座ってくれ」

2人は3人掛けの椅子に並んで座り、麻耶もまた向かいの長椅子に座った。


「早速だが、昨日のこと詳しく聞かせてくれないか」

麻耶がそう言うと、優美の方から説明を始めた。


「一昨日、福田くんに私の方から模擬戦をお願いして、

放課後演習場で試合をしました。その時は一応私が勝ったのですが」


「ほう、序列10位の福田を転入初日から打ち負かすとは」


「福田くんは相当悔しがっていました。次の日は学園に来なかったのですが、

帰り道、私の目の前に現れてそれで‥」


「河原で戦うことになったということか」


「はい、そうです。ですが模擬戦の時とはまるで別人のように魔力が強くなっていました。なす術がなくなっていたところに、月島くんと学園長が来てくれたということです」


「なるほど。話は分かった。しゅん、お前は異様な魔力を感じて河原に行ったのだったな」


先程まで優美が話していたためしゅんは完全に気を抜いていた。いきなり自分の方に話が飛んできて慌てて答える。


「あ、ああ。うまく言えないけど今まで感じたことのない魔力だった」


「同感だ。それで当の福田の方だが、まだ意識が戻らなくてな」

麻耶のこの言葉には2人の表情もするどくなる。


「原因はなんですか?」

しゅんは自分も魔法で攻撃をしていたため、少し責任を感じながら麻耶に聞いた。


「検査した結果、福田とは別の魔力が体内から検出されてな。病院によると、どうやらそれが原因で意識が戻らないらしい」


自分の魔法が原因では無かったことにホッとした表情をしゅんは見せる。別の魔力、しゅんや優美が感じていた違和感はやはり間違っていなかった。


「それで、その別の魔力ってのは何かわかったのか?」


「いや、それは分からなかったのだが一つ言えることは、その魔力は人間のものではないということだ」


人間の魔力ではない。そういうことならしゅんがこれまで感じたことのない魔力だと思ったのも納得がいく。


「福田くんはそんな力を一体どうやって手に入れたのでしょうか?」


「恐らくだが‥誰かに何らかの方法でもらったのだろう。

一条に勝負をしかけたところをみると、無理やりではなく

むしろ福田がそれを求めた可能性が高いように思える」


そんな聞いたこともない力を一体誰がどうやって?

福田はどうやってその人物と出会い、力を得たのだろうか?

考えれば考えるほど、3人とも分からなくなっていった。


「現状分かっているのはこれだけだ。そこで、お前達2人に頼みがある!」


麻耶が改まってそう言うと、しゅんと優美も少々かしこまりながら話を聞いた。


「お前達2人にも今回の黒幕を探して欲しいのだ」


生徒にこんなことを頼むなんて、2人とも一瞬冗談かとも思ったが、麻耶の表情からそうではないことが伝わる。


「一応言っとくけど、俺たちただの高校生だせ?」


「この学園の序列一位と一条家の長子は、もはやただの高校生とは言えんだろう」


「だ、だけどよ‥」


「もちろん、私や警察も捜査はする。ただ被害者が高校生である以上、同じ高校生の方が情報が入ることもある。

事情をよく知るものとして、お前達なりに黒幕を探してみてほしいということだ」


麻耶の言うことは一理あった。このたくみな話術に2人とも妙に納得させられていた。


「分かりました」


「分かった。探してみるよ」

2人の返事を聞いて、麻耶は少しほっとしていた。


「ありがとう。2人とも教室に戻っていいぞ。

しゅん、頼りにしているぞ!」

そう言うと、麻耶は思いっきりしゅんの背中を叩いた。

うぎゃ!と声をあがながらしゅんと優美は学園長室を出て、教室へと戻ろうとした。


部屋を出てもしゅんは背中がまだいたむようだった。

「あの性悪魔女!普通頼み事しながら背中ぶったたくか」


麻耶に叩かれた背中をさすりながら教室へと向かう。

そんなしゅんに笑いそうになりながらも、自分たち2人に何か出来るのだろうかと優美は不安に駆られていた。


「私たち2人に、出来ることがあるのかしら?」

優美がそう呟くのを聞くと、しゅんは鼻で笑った。


「2人じゃないさ。教室に戻ったらあいつにも手伝わせよう」


「あいつ?」

転入してきたばかりの優美には、全く見当もつかない。


「こういうことに強い奴がいるんだよ!」

ますます見当がつかない優美。

それとは裏腹にしゅんはかなり自信があるようだった。

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