第11話 下校途中で
放課後になっても、結局福田は姿を現さなかった。この学園には部活動はその数も所属している生徒も少なかった。魔法学園に通う生徒はそれぞれ魔法道場に通っていることが多いからだ。各々下校の準備を始めだし、優美も他の生徒同様下校の準備をして帰路についた。
優美の家は学園から徒歩15分ほどでその途中には、昨日苦い思いをした吉田屋があった。
転入二日目だが早くも通学ルートを覚えたようだった。
「暑い‥」
この日は気温三十度を超えており額に汗が流れる。
急いでクーラーのある家に帰りたい。その思いが優美の帰宅する足を早めた。
「よう、探したぜ」
「え?」
後ろから声がかかり優美が振り向くと大柄な男が立っていた。福田だった。
「福田くん‥?」
「おいおい、何で疑問形なんだよ。昨日戦ったばかりだってのにもう忘れられたのか?俺は」
「人の顔、覚えるの苦手なのよ」
確かに福田だった。しかし昨日とはどこか様子が違う。理由は分からないが優美は福田の変化に薄ら勘付いた。
「探したって言ってたけど、私に何かご用かしら?」
「ああご用だ。昨日の続きがしたくてな」
「本気で言ってるの?実力の差は明らかだったと思うのだけど」
嫌な感じがする。そう思ってはいたが優美は余裕ある返答に努めた。
「つべこべうるせー!やるのかやらないのかどっちだ!」
この感じ、明らかに何か考えがあるように見えた。しかし優美もここで引くわけにはいかない。多少の不安はあるが乗っかるしかなかったのだ。
「続きって、まさかこんな街中で?」
「少し歩ったところに河原がある。そこなら魔法を使っても被害はないし問題ない」
「河原で決闘って、いつの時代よ」
「その余裕も今のうちだけだ。ついてこい」
福田は歩き始めた。優美もそのあとに続いたが足取りは軽くはなかった。しかし昨日は福田を圧倒したわけで、たった1日でその差は埋まる物ではない。自分を奮い立たせて根拠のない不安を優美は取り払った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます