第9話 序列1位の正体

登校時間になっても昨日は自分の目の前にいたはずの福田は姿を現さなかった。


「まぁ、あんな負けっぷりじゃ当分学園には来れないだろうぜ」

優美の様子を見てか、隣の隆弘が話しかけてきた。


「それにしても昨日は本当にすごかったよ。同い年にあんな魔法みせられたらさすがに自信なくしちゃうなー」


「加藤くんも見てたの?」


「俺だけじゃないぜ。他のクラスのやつとか上級生も何人か来てたよ」

なんだか転入早々早速目立ってしまっている。しかし優美も家のために一刻も早く結果を出したいと思っていたため、そんなことを気にしている余裕もなかった。


「確かに福田くんの魔力はすごかったけど私の目標はこの学園で一位になることだから!」


何の恥ずかしげもなくクラス中に聞こえる声で話す優美。

若干引きつりつつも隆弘は会話を続けた。


「そっか。まぁ理由は聞かないよ。でもこの学園の一位は簡単じゃないよ。特に今年は学園始まって以来の快挙を成し遂げた天才が同じクラスにいるしね」


加藤の言葉に昨日審判を務めた教員の話を優美は思い出した。


「それって、一年生でいきなり序列1位になった人?」


「そう。なんだ知ってたんだ」


「昨日先生から聞いたの」


にわかには信じられないことだった。この学園の序列一位、すなわち日本一の高校生が本当に一年生だったとは。


「ねぇ、加藤くんの前の席も空いてるけどもしかして‥」


「そう!ここがあいつの席。まぁ先月の序列戦以降ほとんど学園には来てないんだけどね」


「どういうこと?」


「うちは序列戦で4位以内に入った人は次の序列戦までの単位が保証されるから登校は自由なんだ。まぁ、序列4位以内に入るのは普通3年生だから、本来は就職とか進学に集中させるための処置なんだけどね」


さすがは新時代の魔法学園。他の生徒たちも髪色など自由なようだし今まで優美が通っていた伝統ある学校との違いにギャップを感じる。

とはいえ本当に学園に来ないとは何とも不真面目だなと知らない相手を優美は勝手に軽蔑した。


「どういう生徒なの?」

めっちゃ聞くやん!と言うような顔を隆弘がしたが、優美はお構いなしに続けた。


「別に普通の高校生だよ。両親とも魔法関係の仕事してる訳じゃないし。中学時代の魔導士大会でも名前を聞いたことがないからね」


この学園には中学時代の魔導士大会で優美が顔を合わせたことがある生徒が何人もいた。ここの序列一位なら当然中学時代から有名人かと思っていたが‥優美の中でますます謎が深まる。


「その子の名前は?」


「名前は‥」

ためてないで早く言ってよ!優美は心の声をもろに表情に出してしまうタイプのようだ。

これには加藤も少し笑いそうになった。


「名前は月島しゅん。確かこの春から東京に引っ越してきて今は、一人暮らしだったと思うよ」


「月島しゅん‥」

聞いたことのない名前だった。しかし目的は定まった。月島しゅんを倒す。同じクラスなら対決に持ち込むのはそう難しくはない。そう思うと優美はニヤついた。


「加藤くん教えてくれてありがとう!」


「いや」

ニヤつきながら言う優美に隆弘は少し不気味に思ったが、美人からのお礼にほんの少し頬を染めた。


「おーい、席に着け。ホームルーム始めるぞ」

担任の教師が入ってきて、優美の転入二日目が始まった。

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