第3話 模擬戦1
放課後、優美と福田の模擬戦の噂はクラスや学年をこえてすでに学園中に広まっていた。すでに大勢の生徒が、決戦の場である第一演習場に集まっている。
魔法学校のほとんどにこのような魔法を発動できるような演習場が備え付けてある。
大抵の衝撃では傷一つつけることがてきない建物の造りとなっており、特にここ第一演習場は東京魔法学園の5つある演習場の中で最も大きな規模のものであった。
アリーナ状の造りとなっており多くの人が観戦できるものとなっていた。
舞台には優美と福田、それに審判と思われる男性教員の3人が立っていた。この学園では模擬戦でも必ず教員の立ち会いが必要であり危険な場合は生徒の安全を第一とし試合を止める役割もはたしている。
「2人とも準備はいいかな。これはあくまで模擬戦だ。どちらかに怪我が及ぶと思われる場合は試合を止めることもある。お互い正々堂々試合をするように」
審判の声にますます会場は熱気だっていく
「おいおい、始まるぞ。転入初日から模擬戦なんてお前のお隣さんやるなぁ加藤」
「しかも初戦が福田なんて。全くお嬢様ってのはすごい自信家なんだな」
加藤をはじめとするクラスメイト、また他クラスから上級生まで試合開始を興奮気味に待っていた。
「うるせーやつらだ。おい、さっさと始めようぜ」
観客席で盛り上がっている生徒たちの声を聞いてか
福田は少し苛立っているようだった。
「それが教師に対する言葉遣いか?」
まったくと呆れた様子で福田を見ながら審判である教員が右腕を上に上げた。
「それでは試合はじめ!」
大きな掛け声と共に右腕を振り下ろし2人の模擬戦が始まった。
ふん、鼻で笑うと大柄な体で優美を見下ろしながら福田は笑みを浮かべていた。
「俺はな、ご先祖様の栄光で踏ん反り返っているお前ら名家が大嫌いなんだよ」
「先祖の栄光ですって‥」
喧嘩腰の福田の物言いに優美もさすがに頭に来た。
「ああ、そうさ。だがなぁ才能ってのは何も血だけで決まるわけじゃないんだぜ。教えてやるよ。」
そう言うと福田は集中力を高め魔法を発動させ始めた。みるみるうちに大柄な福田の体が獣の様な姿へと化していく。
「特殊‥。初めて見る魔法だわ」
優美は一度後方へと距離を取った。
「ああ、そうだ。俺の魔法は自分自身の姿を獣へと変身させる魔法。身体能力を飛躍的に高め‥この手で相手をズタズタに引き裂く!」
そう言い終えると福田は超スピードで優美目掛けて突っ込んで行った。優美は初めて見る変身魔法と福田の魔力の高さに多少の驚きはあったものの極めて冷静であった。
右手を前に出し優美も魔法を発動させる。
すると、風が現れ優美の周りを取り囲むように覆った。
「そんな風の魔法で俺の攻撃を受けきれると思うなよ」
そう叫びながら福田はそのまま優美の風の壁へと突っ込んでいった。
「消えろー」
福田は思い切り拳を振りかざした‥しかし福田の右腕は優美の風の壁の前で完全に動きを止められた。
「な、んだと。止められた」
福田はすかさず拳を引っ込め後方へと距離を取った。
会場がざわついた。いくら名家の娘とはいえ序列10位の攻撃をあっさり止めたことに見ている生徒たちはどよめいていた。
「おい、あの福田の攻撃を止めたぞ。どうなってるんだ?」
「確かに福田の魔力はすごいがそれより一条だ」
「??あの風魔法そんなにすごいものだったか?」
友人の反応に加藤は呆れた様子だった。
「お前ほんとにこの学園の生徒か?よく見ろ」
「あの風の壁は範囲は狭いがものすごい高密度な魔力だ。あんなものを一瞬で発動させるとは、さすが名家と言ったところか」
加藤の他にも優美の魔力の高さに気づいていた者は会場には少なくなかった。
「もう終わりかしら?日本一の学園の序列十位っていうのはこの程度なの?」
「一度攻撃を止めたくらいで調子に乗るなよ。女ー」
そう言うと福田はさらに魔力を高めていった。特に右腕に魔力を集中させ一気に勝負を決めようとしていた。
「そうね、次で終わりにしましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます