二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

つきのはい

予定調和

 学生時代の頃の話なんだが、何人かの女子との間に、とんでもなく奇妙な出来事があったんだ。


 俺の名前は木下逸色(いついろ)。

 まあ、どうせ大して読んでる奴もいないと思うが、名前くらいはそれらしくつけておいた方が、この後の便宜上いいと思う。


 だから名前と、俺が男だっていう事。

 それと、地方のそこそこ栄えていた場所に住んでたくらいの情報を踏まえてくれれば、これから話す内容の前提としては十分だと思う。



 俺は、これまで色んなアニメや漫画、ゲームを見てきた。


 どれもこれも、初めはすごく面白くて、興味が絶えなくて、色んな物を見て楽しんでいった。

 アニメはオンタイムで見る事もあれば、録画をして、後日見る事もあった。


 高校生だったから、勉強やアルバイトにも時間を割いていた。

 部活はしていなかった。


 自動車学校のお金や、携帯電話の使用料を自分で稼ぐという家庭の方針で、学校以外は基本アルバイトをしていたんだ。


 アルバイトをしていれば、趣味にも使えるお金が増えるだろ。

 だからこの時期は、お金をある程度稼いで、そして少しずつ趣味にお金を使っていたんだ。


 好きな漫画やゲームも買った。

 アニメのグッズも買った。

 円盤もフィギュアも、アクキーもポスターもタペストリーも、出せる金額の範囲でそこそこ買って楽しんでいたんだ。


 でも俺は、ある時気が付いたんだよ。

 目の前にあるこういう娯楽作品は、全部「二番煎じ」なんじゃないかって。



 これは、あくまで俺が気付いたつもりになっている、「つもり」の話だとは思う。

 でも、最近の作品は、どれもこれも何かの二番煎じなんだよ。


 そういう風にしか、見えなくなってしまったんだ。


 おっ?て思う事が全くないんだ。

 全て予定調和。

 敷かれたレールとお決まりのルール。

 そこからはみ出していく事は、ごく稀なんだ。


「召喚少女とデッドモンドヘヴンズ」ってアニメがあるんだが、お前ら知ってるか?


 俺はその時、名前くらいなら知っている程度だった。

 あらすじを今見てみても、うんざりする。



「召喚少女とデッドモンドヘヴンズ

 あらすじ:幼い頃に不慮の事故で両親を失った主人公・エリカは、親友のヒカリが、ある日、学校の使われなくなった教室で悪魔を召喚している場面に遭遇する。


 実はヒカリは、この世の「悪」を根絶するために日夜活動している、召喚少女なる存在だったのだ。


 召喚少女である事がバレてしまったヒカリは、エリカにある真実を打ち明けた。

 彼女の両親が亡くなった事故は、実は全てヒカリの姉・キスナの失態によるものだという事。


 しかしエリカは、ヒカリやキスナを責めはしなかった。事情を聞くに、それはやむを得ない結果だと知ったからだった。


 両親の命を奪った「悪」は、未だに誰かの命を奪い続けている。

 それをヒカリから聞いたエリカは、自らが召喚少女となり、「悪」への復讐を決意するのだった。


 悪には悪魔を持って制裁を下さなければならない。

 今、召喚少女達の死闘が幕を開ける!

 竹野コノサト先生の話題作!堂々刊行!」



 魔法少女と悪魔を掛け合わせただけの物だった。

 やっぱり所詮、二番煎じだと思う。


 こういう、魔法だの召喚だの、天使だの悪魔だの、現実にありもしないものを絡める作品でも、やっぱり要素を分解していくと、二番煎じの臭いが漂ってきて嫌気が差すんだ。


 オリジナリティって一体なんだろうって思う。

 独創性って何?

 既出の記号を掛け合わせる、その掛け合わせ方がオリジナリティになるのか?

 俺はその答えがわからなくて、いわゆるオタクカルチャー的なものが楽しめなくなっていた。

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