第120話 中古《ドール》、後輩たちの前で張り切る
「ルイス、あなたが私の採取を一番見てくれてるわ。アワユキは雪兎の身体だし、メルチは元々お嬢さん。だから、私も気にするけど、ルイスからも二人を気にしてあげてね」
そう、昨日の夜にマスターに言われたので、僕は張り切って二人の様子を見ていた。アワユキには手も足もないけれど、ぽんぽんと跳ねまわっては雪を浴び、朝出発した時よりも丸く大きくなっている。マスターの魔法のリボンで雪が溶けないようにしているとはいえ、雪から離れていた分、最初の雪兎より縮んでいたのは少し戻っていた。というか、戻りすぎている。大丈夫かなあの大きさ、帰ってから何度かやってたようにマスターの膝に乗ったら、すごく重そうだ。
メルチの方は、多分最初の頃だったらもっとひどかったのだろう。けれど、彼女はマスターに教わった家事をやっているうちに、色々と器用になっていた。とはいえ全部採ってしまいそうになるのを、ある程度はわざと残しておくのだというマスターの知恵をお話して止めたけれど。なんというか二人とも、僕が最初に思っていたよりは面倒を見る必要がなかった。アワユキには採取物を入れておく袋がないから、僕のポシェットに代わりに入れておくくらいだ。
『見てみて兄様、これ、綺麗な石ー!』
「本当だ、マスターが喜びそうな石ですね! とっても綺麗です」
ただの灰色の石の見た目に、魔力で指先が少し痺れるような感覚がある。アワユキは魔力のある素材を「綺麗」と言うようで、僕よりもその辺りの感覚が優れていた。アワユキの耳が指し示した石や葉、木の実をちょっとずつ採取して、ポシェットに入れていく。
「見てみて、これは姉様も喜んでくださるかしら」
「ええ、きっと! 少し透き通っていて綺麗な石ですね」
メルチは僕より背が高いから、遠くも見える。マスターは恐らく自分の目についたものをすべて採ってはおらず、ある程度は僕達が採る余地を残してくれていたようだった。それらを拾って、メルチも順調にポシェットを膨らませていた。彼女は採取が意外とうまくて、繊細そうな素材も上手に採取して、壊すことなくポシェットにしまっている。僕は色々二人に教えられたらな、と思っていたけれど、少し教えただけでもう僕の出番はあまりなさそうだった。
そういうことを思いながら、僕も僕で雪の欠片や木の実や、小石、水を小瓶にひとすくい、と色々と集めていく。あんまりポシェットを重くすると飛びづらいかと思ったけれど、意外と問題はなかった。一度、どれだけの重さのものを持って飛べるか確かめるべきかもしれない。僕はふわふわ飛んでいって、少し先にいたマスターの方に声をかけた。
「マスター、あの二人、思っていたより大丈夫そうです。僕、もっと色々教えられると思ってたので、ちょっと悔しいですが」
「ふふ、ありがとうね、ルイス」
マスターが僕の頭を撫でてくれるのが嬉しくて、僕は目を細めた。
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