第50話 クロスステッチの魔女、姉弟子の元に行く
「じゃあ、また羽があったら持ってきてね」
「はい、そうさせていただきます。ありがとうございました」
私はお茶会をある程度した後、ルイスと一緒にガブリエラ様の家を辞した。お茶会は楽しかったけれど、ずっと上級の魔女様方—――それも、私の一門とは別の、身内ではない魔女―――に囲まれているのは緊張する。ルイスの方は、先輩の《ドール》達と実りある時間を過ごせたようだ。
グウィンに門の外まで送ってもらったのは、正解だった。鵞鳥たちが鳴きながらまたつつきに来たものの、グウィンが穏当に追い払ってくれたことで私たちは無事に出ることができた。一人で帰ろうとしたら、大変なことになっていたかもしれない。もちもちふかふかの鵞鳥は絶対触り心地がいいけれど、嘴はもちもちしていないのだから。仕方ない。
「マスター、依頼としては達成になるんですか?」
「うん。でもいくらあっても困らないから、また見つけたら持ってきてだって。ルイスも仲良くなれたみたいだし、また羽を貯めたら持っていこうね」
「はい!」
ルイスは嬉しそうに頷いた。私はその様子をほっこりと見つめながら、今度はルイスのお願いを聞くために箒に乗って、まずは浮き上がった。行先のリボンを結ぶ前に、ふと大事なことを思い出してルイスに頼んで水晶を取り出してもらう。
「グレイシアお姉様、もしもし。クロスステッチの魔女です。今からそちらに行ってもいいですか? ルイスのことで相談というか、お姉様の《ドール》達にお願いがありまして」
ルイスに支えてもらった水晶に話しかけると、ぼやーっと水晶の中にお姉様の顔が浮かび上がった。お姉様の声が、『今から来るの? 別にいいよ』と返事をしてくれるのが聞こえる。早速、お姉様の家へ私達を《引き寄せ》る魔法のリボンを結んで、出発しながら話を続けた。
「よかった、行ってみていなかったりしたら、さすがにちょっとなあと思っていたんです。ルイスが剣を習いたいと言うので、お姉様の《ドール》達から教えてもらえないかなって」
『なるほど。剣はもう持ってる?』
「いえ、どういうのがいいかを決めてから選ぼうかなって」
ふむふむ、とお姉様は何かを思案しているご様子だった。お姉様自身も剣を使うし、素材になる獣だのなんだのを狩るためにちょこちょこ《ドール》用の武器を買ってると言ってたな……と思い出していた。実用だけでなく、単に「武器を持ってるうちの《ドール》達はかっこいいもの」と言っていたところもあるけれど。でもルイスが腰から剣を佩いている姿を考えてみると、確かにカッコいいだろうと思えた。
じゃあとにかくうちにおいで、という言葉を最後にお姉様との繋がりが切れ、水晶は静かになった。ルイスに水晶をカバンにしまってもらってから、少し速度を上げようと魔力を多めに箒に流し込む。
「ルイス、せっかくだから早くお姉様の元、に―――ヤバいつかまって!!」
魔力を流し込み過ぎたのか、想定よりも数段早い箒のスピードに慌ててルイスに声をかけた。ルイスが一生懸命クッションにしがみつく姿を見ながら、私は私自身も箒から落ちないよう必死になるのであった。
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