【気楽な転生者には地獄こそ相応しい】~イベント感覚で死ぬヤツにパラダイスな異世界など認めない!~

楠本恵士

第1話・初めての転生

 深夜の人通りがない地方の田舎道──田畑が広がり、カエルの鳴き声が聞こえる。

 ポツンとある、外灯の明かりで照らされる田舎の道に転倒した自転車と、その近くに両目を見開いて横臥している男子高校生の姿があった。


(感覚がなくなってきた……このまま死んで異世界に転生でもするのかな……へへへっ、ミスったスマホ見ながらの自転車乗りはやっぱり危険だな……まさか、道に飛び出してきたガマガエルに驚いて、転倒して頭強打して死ぬなんて……ダサっ)

 男子高校生は、自転車に乗る時に義務化されている、ヘルメットを着用していなかった。


(ちょっとだけ、外出するからヘルメットしなかったのがダメだったな……あっ、頭から血が出ている。みなさんはヘルメット着用しましょう……へへへっ)


 横臥おうがしている男子高校生の目に、しゃがんでスカート奥のパンツが、丸見えの女子の姿が映る。

(誰? いつ現れた)

 ロリロリなフリルスカートの、高校生くらいの少女は取り出したスマホで誰かと会話をはじめた。

「現場に到着しました……はい、確認しました……わかりました、転生させます」

 男子高校生が、少女に訊ねる。

「転生って……オレを異世界に転生させてくれるねか?」

「わっ、コイツまだ生きていた? しぶとい……時間がないから、さっさと始末しないと」

 少女は、どこからかモザイクがかかった、バールのようなモノを握りしめて振りかぶる。


 慌てる男子高校生。

「ち、ちょっと待て! それで殴ってトドメをさす気か!! それって殺人罪だぞ!」

「残念でした、あたしには、この世界の法律は関係ありませーん、あなたを殺しても罪に問われるコトはありませーん」

「この世界の人間じゃないって……おまえ、何者なんだ! 説明してくれなきゃ死にきれない……あっ、興奮したら傷口から血が」


 ロリロリ少女は、ポケットから取り出した。

 固形の栄養調整食品をポリポリと食べながら言った。

「しかたがないなぁ、じゃあ簡単な説明で……おまえは、もうすぐ死ぬ。おまえ、生きている時に異世界に転生したいって考えただろう?」

「確かに何回か考えた……テンプレの異世界転生で、女性ハーレムとか、無双とか、とにかく楽してご都合主義の第二の人生を、異世界転生で」


 ロリロリ少女が、いきなりモザイクがかかった凶器で、にやけている男子高校生の頭を叩く……ゴキッ。

「おごぅ!?」

「アポ! おまえのような、自堕落で向上心もない努力嫌いな適当なヤツに、いい来世が訪れるか!」

 ロリロリ少女は、モザイクがかかった凶器に付着した血を、ハンカチで拭きながら言った。


「いいか、異世界転生で最高の転生人生を歩めるのは、それなりの心構えや強い意志がある者だけだ……まったく、なんで。おまえのようなヤツが『異世界転生ガチャ』に当選したのか疑問」


 薄れはじめた意識の中で、男子高校生は、パンツ丸見えのロリロリ少女に訊ねる。

「異世界転生ガチャって?」

「異世界転生を考えた者に、ランダムで訪れる転生権利の当たりクジみたいなもの……まぁ、当たったんだから転生させてあげるけれど」

「最初の職業ジョブは、戦闘に参加しない盾を持った安全な、回復魔法系のヒーラーでお願いします」


「甘ったれた、贅沢なコト言っているんじゃねぇ! 最初は〝虫〟からスタートだ! そこから転生を繰り返して、家畜や人間に生まれ変わっていくんだよ! さっさと死んで転生しろ! おらおら」


 ロリロリ少女は、無抵抗な男子高校生をモザイクがかかった、凶器でメッタ打ちにする。

「ぐぇっ、ぐあぁぁぁ」

「死んで異世界に転生しろ! あはははははっ」


 陥没する頭蓋骨、飛び散る脳漿のうしょう、男子高校生は……異世界転生した。

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