ラビリンス・エルモール

KKモントレイユ

第1話 ショッピングモール・エルモール

「おい、ここ一体どうなってるんだよ!」

いつも冷静なあきらも、さすがにこの状況を理解できないという感じだった。

「ねえ。私たち本当に迷ったの? ここショッピングモールだよ」

奈緒子なおこが呆れたようにあたりを見回す。

「まあ、とにかく、とりあえず、まずは下に下りるエスカレーター探そうよ。一階にさえ行ければ必ず出口あるんだから」

こんなとき美弥みやが一番冷静で頼りになる。

「そうだな。でもここ本当のところ何階なんだ?それすらわからないよ」

和也かずやばかりではない、四人とも自分たちが何階にいるのかすらわからなくなり始めていた。

「冗談でしょ。本当にショッピングモールで迷子になったの? でも、まあ、これだけ人がたくさんいるんだから、いくらでも聞く人はいるじゃない。きっと地元でしょっちゅう来てる人もいるだろうし」


奈緒子は近くを通る親子連れに声をかける。

「すみません。下の階に下りるエスカレーター、どこにあるかわかります? 私たち迷っちゃったみたいで」

「ああ、ここをまっすぐ行って時計台のある広場を左に曲がったところにあったよ」

「ありがとうございます……ほら、すぐわかるじゃない」

お礼もそこそこに言われたとおり広場に向 かう。そこに向かう間も、いちいち周りにある店の記憶が曖昧あいまいである。行き違う人もさっきすれ違ったような気もするが、初めて見る人のような気もする。

さっきの時計台だ。

「和也……ここがさっき通ったところだよね」

奈緒子は印象的な文字盤の時計を見上げながら言う。

「そうだね」

和也の言葉に、

「左に曲がるって……私たち、そっちから来たのよ。エスカレーターなんて……なかった」


左の方を見ながら美弥も不安そうに言う。


当然、時計台には記憶がある。

そこはちょうど交差点のようになっている場所で、時計台は大きな木の形している。四方に向かう、それぞれの通りから見えるように四つの時計が飾られている。文字盤の時刻を表す数字は遠くからでもはっきりわかる大きな数字で表示され、時計の上にフクロウやニワトリ、ウサギ……いろいろな鳥や動物の彫刻がある。

「どこかフロアガイドっていうの? インフォメーションみたいなのないかな」

美弥があたりを見回しながら言う。

四人はあたりを見回し、見るともなく、もう一度時計台を見上げる。

枝にとまったフクロウ……

時計の上には美しい文字が並んでいる。

『エルモール』

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