第671話 十二月十三日『くるみ割り人形』第二幕(五)ディベルティスマンからグラン・パ・ド・ドゥへ

 今回の花村バレエの演出では、クララと王子がお菓子の国でお菓子の妖精たちから歓迎を受けるとき『スペインの踊り(チョコレートの精)』『アラビアの踊り(コーヒーの精)』から『花のワルツ』のダンサーまで、お菓子の国の出演者がほぼ全員舞台上で歓迎する形をとる。

 このディベルティスマンで『スペインの踊り』が始まる前に、一旦『花のワルツ』の数名を上手かみて下手しもて舞台袖ぶたいそでに残す形で、他のお菓子の妖精たちは、クララ、王子と一緒に舞台袖ぶたいそでに帰る。


 そして『スペインの踊り』『アラビアの踊り』『中国の踊り』と踊っていき、それぞれの踊りが終わると順番に舞台の奥に、そのダンサーたちが残る形をとる。

 つまり『スペインの踊り』は舞台の上手かみて下手しもてに数人の『花のワルツ』のダンサーが見守るなかで踊られる。そして『スペインの踊り』が終わったら『スペインの踊り』を踊った奈々、真美、一美かずみ、木島の四人は舞台奥の中央に座って、次の『アラビアの踊り』見守る。


 二番目に踊る『アラビアの踊り』のあやめととおるは、舞台奥に『スペインの踊り』の四人、舞台の上手かみて下手しもてに数人の『花のワルツ』のダンサーがいる中で踊る『アラビアの踊り』の二人は踊り終わったら、舞台奥の『スペインの踊り』のダンサーたちの下手隣しもてとなり(客席から見て左手隣)に並んで座る。


 その中で、次の『中国の踊り』のこころかつら寿恵としえが踊る。踊り終わったら『中国の踊り』の三人は舞台奥『スペインの踊り』のダンサーの上手隣かみてとなり(客席から見て右手隣)に並び座る。


 そのように踊ったダンサーたちが順番に後ろに並んでいく。

 そして『キャンディボンボン』の子どもたちの小学生組は下手しもて舞台袖ぶたいそでに並んで座り、ゆいたち一番小さな四人は上手かみて舞台袖ぶたいそでに並んで座る。


 ディベルティスマンのダンサーたちが並んだ中で『花のワルツ』が踊られる。この『花のワルツ』にはディベルティスマンのダンサーたちもそれぞれ出番があり、自分たちの踊るパートでは皆と一緒に踊る。

 そして『花のワルツ』の盛り上がりの部分ではお菓子の国の全員で踊り、踊り終えた後、全員が舞台上で周りを囲むように勢ぞろいして見守るなかで、金平糖の精と王子の園香そのか恵人けいとが主役のグラン・パ・ド・ドゥの踊りを踊ることになる。


 このグラン・パ・ド・ドゥを踊るシチュエーションを見た時、園香は思い出すことがある。

 いつだったか、この公演の練習が始まったばかりの頃に、指揮者の恵那えなが言った言葉だ。

「舞台は『みんなが主役』とか『頑張っているのはみんな同じ』とか……でも、この舞台に係わるすべての人が、この二人(園香と由奈ゆな)のために舞台を作ってくれていると感じることがある……その重圧に耐えるだけの練習が必要だ……」


 この踊りは、ここまで……今日まで舞台を作ってきた全員の思いの中で踊る。それが主役の踊り、グラン・パ・ド・ドゥだ。

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