第363話 ホールリハーサル前日 リハーサル(一)
スタッフの中には今回初めてリハーサルに参加する者もいた。オーケストラのメンバーはほとんどの者がここのバレエ教室のリハーサルを見るのは初めてだ。
由香や
今日も美和子と
松野、佐由美、康子が青葉と徹の隣に立って見ている。
この光景を
と、その時、ポンと肩を叩かれた。振り返ると
「緊張してる?」
「うん」
「そう、それはいいことだよ」
「え?」
緊張をほぐすような事を言ってくれるかと思った園香は少し面食らった。
「この緊張感を楽しむんだ。これが舞台の醍醐味だよね」
「そう、そうね」
園香も微笑んで返した。そうだ。これは舞台に立つ者しか味わえない緊張感。この緊張感を楽しもう。そう思えた。そう思うと、今回のこの大舞台は本当に今まで経験したことがないほどの緊張感と、そこから何か大きなものが得られる、そんな期待が園香を包んだ。
クララ役の
キッズクラスの
◇◇◇◇◇◇
鏡の前に座って青葉と話していた真理子が立ち上がり全員に言う。
「それでは皆さんよろしくお願いします『くるみ割り人形』のリハーサル。エキシビションから通します」
「はい」
と全員の声が稽古場に響く。
エキシビションを踊る六人が舞台袖に当たる稽古場の袖につく。結局、時間のイメージをつかむためということもあり、六人全員、衣装を着てリハーサルをすることになった。
稽古場で手伝いをするキッズクラスのお母さんたちも皆カメラを構えて撮影の準備をする。
恵那がオーケストラのメンバーに目配せして指揮棒を構える。そして、真美の方に目を向ける。
真美が振り返り他のエキシビション出演者たちを
真美が恵那の方に目線を向ける。恵那も微笑みながら頷く。
最初の演目『エスメラルダ』のヴァリエーションは真美が舞台の中央に立って踊り始めるところから曲が始まる。
静かな稽古場の中、真美がゆっくり舞台の中央(稽古場の中央)に歩いてゆく。
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