第18章 九月のリハーサル二日目

第230話 九月のリハーサル二日目の朝『スペインの踊り』変更

 リハーサル二日目、午前十時から『くるみ割り人形』第一幕の通しリハーサル。午後から衣装付き全通し。

 今回は三日間のリハーサル。今日衣装付きリハーサルをして、明日、もう一日細かい部分を調整する。ゲストダンサーたちは明後日の昼の便で東京に帰る予定になっている。


 キッズクラスのゆいたちが元気よくやって来る。

「せんせい、おはようございます」

「はい、おはようございます」

 真理子とあやめが挨拶を返す。

 唯と真由が先頭に立ってゲストの先生たちにも元気に挨拶する。心得ているように真っ先に青葉あおばとおるのところへ挨拶に行く。

「せんせい、おはようございます」

「おはようございます」

 青葉あおばとおるが微笑みながら挨拶する。その後、今回来ているゲストの先生たちに挨拶する。

「せんせいおはようございます」

「おはよう」

 古都こと寿恵としえ恵人けいとげんたちが微笑みながら挨拶する。

 唯たちは、すみれや美織みおり、花村バレエの先生にも丁寧に挨拶する。稽古場に微笑みが広がる。

 早い時間から衣装の由香と一花いちかが衣装とティアラ、頭飾りを準備する。


 九時前には出演者、スタッフが全員そろう。見学のお母さんたちも見学席に着く。出演者たちは各自ストレッチに入る。

 真理子とあやめ、青葉が、すみれと美織に声を掛ける。あやめと北村が園香そのか恵人けいとを呼ぶ。真理子が稽古場を見回し、

「奈々ちゃん、真美ちゃん、ちょっといい」

 と奈々と真美に声を掛ける。奈々が何だろうという表情でやって来る。真美は自分が呼ばれたのは、きっと『スペイン』の事だろうという思いでやって来た。


 あやめが二人にいう。

「急遽、決まったことなんだけど第二幕の『スペインの踊り』奈々ちゃんとゲストの雪村希ゆきむらのぞみ先生の二人の予定だったけど、奈々ちゃん、雪村希先生、真美ちゃんともう一人青山青葉あおやまあおばバレエ団のゲストの先生の四人で踊ってもらおうと思うの、奈々ちゃん、真美ちゃん、いいかしら?」

 奈々は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔で真美の方に微笑み、

「はい、いいです。真美ちゃん頑張ろうね」

 と言った。

「う、うん、あ、よろしくお願いします。奈々ちゃん、ええの?」

「え、一緒に頑張ろうよ」

「あ、うん。そうだね」

 この奈々のリアクションに真美の方が面食らったようだった。舞台の配役にシビアな環境で育ってきた真美だった。

 このように途中で配役や構成が変わると「どうしてですか? なんで、真美ちゃんが急に踊ることになったんですか?」というようなリアクションがくると思っていた。

 予想外の奈々のウェルカムな返事に、真美の方が戸惑ってしまった。


『スペインの踊り』は踊りも立ち位置は大きく変わることはなく、今まで奈々とのぞみが二人でセンターで踊っていたところを、奈々と希ペア、真美ともう一人のゲストペアの二組がセンターを割って踊る構成、後はまったく同じ振りを二組が並んで最初から最後まで踊る構成だ。真美は既に『スペインの踊り』の振りを全部覚えている。

 もう一人の男性は、すみれが言っていた通り青山青葉あおやまあおばバレエ団の七月の公演で『白鳥の湖』の『スペインの踊り』を踊っていた木島剣きじまけんというダンサーに決まっているということだった。青山青葉あおやまあおばバレエ団のファーストソリストだそうだ。特に民族舞踊系のキャラクターダンスを得意としているダンサーだという。

 すみれが真美に耳打ちする様に言う。

「真美ちゃん、パートナーになる木島剣きじまけんちゃん、ロシアの有名な民族舞踊バレエ団に留学経験があるから、しっかり技術を学びなさい」

 そう言って微笑む。

「は、はい、すごいですね」

「園香ちゃんも滅多にできる経験じゃないから一緒に学びなさい。スペインだけじゃなくて、いろいろな民族舞踊を教えてもらうといいわ」

「はい」

 近くで聞いていたゆいが手をあげて、

「はーい」

 と言う。驚いた表情のすみれだったが、すぐ微笑んで、

「唯ちゃんもお勉強してね」

 と言うと、唯が大きく頷いて、もう一度大きく手をあげ、

「はーい」

 と言う。すみれと美織みおりが微笑む。

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